「しゃべる」という仕事

「しゃべる」という仕事

ボクは、かなり目立たない少年時代を送ってきました。「前へ前へ」と出るようなタイプではなく、できるなら「裏方へ裏方へ」と回りたいタイプでしたし、自分が大勢の前に立って何かを話すなんてもってのほか。クラスで劇をやるときも、主役なんてとんでもない。セリフが1つ2つある程度の脇役ばかりです。そんな当時のボクから見れば、ステージに上がって3時間しゃべりっぱなしなんて、考えもしなかったでしょう。

何の話かというと、先日開催されたカワサキとのコラボイベントについて。ここでボクは、アンダー400編集長でもある“やたぐわぁ”、レディスバイクで活躍中の柴田奈緒美さんと一緒に、3時間ステージに立ちっぱなしでトークショーを続けたんですよ。ホント、昔のボクからすれば考えられない状態だと思います。

まぁ「しゃべりっぱなし」とはいえ、先日のイベントは基本的に試乗会がメイン。参加者のみなさんは、試乗を目的として来るのですから、とにかく乗らなきゃ損ですよね。ステージ前でトークを聞いている時間はないので、どうしたらいいのか…と考えました。そこで思いついたのは「開き直って、BGM代わりにトークしよう」ということ。参加者のみなさんは試乗する行列に並びながら、耳だけをなんとなくこっちに傾けてもらえればOK。「聞いてるか聞いてないか微妙な状態」になるのを承知のうえで、試乗車のラインナップの特徴や、関東近郊のオススメツーリングスポット、雑誌作りの舞台裏など、3人でとにかくしゃべりまくりました。

楽しんでいただけたかどうかはわかりませんが、いやぁ、いろいろと得るものが大きい体験でした…。まず感じるのは「やっぱり、しゃべるってのは特殊技能だな」ということ。微妙な間の取り方とか、言いたいことを言葉に変換する能力とか、スラスラとしゃべる滑舌とか。とくにボクの声というのはちょっと低めなので、聞こえづらいところがあるのです。意識して声色を一段高くして、話題を変えながら、聞いた人が誤解を受けないようにスラスラとしゃべる…。いやこれ、やっぱりなかなかに大変な作業です。文章だったら何度も書き直すことができますけど、しゃべるってのはその場かぎりですからね。つくづく、特殊技能だと思いました。そして人は、ニガテとすることでも否応なく繰り返していると、ヘタなりに多少は進歩していくんだなぁということも…。

繰り返しになりますが、ボクはもともと、人前に出るのが得意ではない人間だったのです。思考パターンとしてはつねに「裏方へ裏方へ」と考えるタチだったのですが、さすがに編集長という肩書きがつくと、嫌でも人前に出なければならない機会が増えていくのです。トークショーのゲストに招かれたりとか、かつて一度だけですがラジオ出演の話が来たこともありますし、バスツアーの司会も務めました。否応なく繰り返しそんな場に出ていると、少しずつではありますが順応してくるのですね。「前よりはうまくしゃべれたな」と思うこともときどきある。そういうのを感じると、やっぱりうれしいんですよ。

今でも、人前に出る前には心臓がバックバクして手が震えることもあるんですが、子供のころに比べれば激変。何事も経験してみるものだなぁと思います。これからも、たまには「しゃべる」という仕事が舞い込んでくるとは思いますが、一歩一歩、前進していきたいです(そんなお仕事のオファーもお待ちしております!)。

「しゃべる」という仕事

マンボサイトーのプロフィール

「マンボ」というニックネームはマンボウ似であることから名付けられ、当初はかなり嫌がっていたものの、最近ではそれほど気にならなくなってきた。ビッグバイクよりも中小排気量 の方が好き、人気車種よりもマイナー車の方が好き、というあまのじゃくな性格の持ち主でもある。

このコラムにあなたのコメントをどうぞ