実感! 原付1種がこれほど虐げられているとは…

新型のスーパーカブ50/110が発売になり、タンデムスタイル誌のインプレッション用として試乗会からそのまま1週間ほど、スーパーカブ50/110を借りて乗ることになった。久々に原付1種、つまり50ccクラスに乗ることになったんだけど…、これがまったくダメなのである。…あっ、ホンダのスーパーカブ50はものすごくいい。すごくよくできてる。発進からの出足もいいし、巡航性能もものすごくいい。これは間違いない。

 

 

スーパーカブ50。詳しいマシンインプレッションは11月24日発売のタンデムスタイル188号にて。シリーズ世界累計生産台数1億台を記念して、ぶち抜き17ページの大特集を組んでおります!

 

ではナニがダメかというと法規の問題である。久しぶりの原付1種インプレッションということもあり、横浜のみなとみらいで行なわれた試乗会から編集部のある東京都港区までスーパーカブ50を走らせ、さらに片道35kmほどある通勤にも何日か使ってみた。…のだけどもうね、いかにこの原付1種が現代の交通社会において迫害を受けているかがよ~くわかった。バカ正直に法定速度の30km/hで走っているとホントにいろんなことを考えさせられるのだ。バイクの免許をお持ちの方ならご存知だと思うけど、

 

原付1種は

①法定最高速度は30km/h。

②3車線以上の道路からの右折では原則的に二段階右折。

③アンダーパスやオーバーパスなど通行禁止区間がある

などなど、いろいろな制限がある。

 

50㏄独特の3車線道路で右折時にやらなきゃいけない2段階右折(笑)。都内の幹線道路を走ってみると、2段階右折箇所や通行できない場所など、けっこう50㏄ならではの面倒な場面が多いことに気づかされる。これでは誰も乗らないよ…。マシンはよくできているのに、法整備の状況が悪すぎるのだ

ヤタガイ ヒロアキさんの投稿 2017年11月11日土曜日

 

動画は原付1種ならではの二段階右折のようす。片側3車線以上の道路から右折する場合にはこれが義務付けられているのだが、交差点によっては「二段階右折禁止」なんて場所もあったりして、50ccで走っていると本当に気が抜けない。まぁ、なにを運転しようと気を抜いてはいけないんだろうけど、クルマの免許で気軽に乗ることができる…なんてことをフレコミにしている原付だからねぇ。そんな状況で軽車両である自転車が他のクルマと混じって右折していたりすると(本当は違法だ)なんだか複雑な気分にさせられるのだ…。原付1種の動力性能は、自転車以下ですか?

 

これら原付1種の足かせ、すべては原付1種が、“動力性能的に他の交通の流れに乗れない”ことを根拠として決められている制約だけど、現代の50ccのバイク/スクーターはそんなことがあてはまらないほどよくできている。他の車両と同じように60km/h走行できるだけのパワーを普通に持っているし、信号待ちからの発進加速にしたって、目立って他車の交通を妨げるようなことはない。車体の安定感や制動力に関しても、そんな走りをしたところで危険を感じるような車両は、4メーカーの現行モデルにはない(ちょっとモンキーだけは車体構成的に30km/hぐらいの走行が妥当だと思うけど、すでに生産終了だしね)。

 

つまり、車両の方は日進月歩のメーカーの努力で昔の50ccとは比べモノにならなくくらい性能はよくなっているのに、法律だけが追いついていない。とはいえ法律だからね。法定速度の30km/hで走ることになるのだが、それ自体がまず恐くて仕方ない。僕もプロのレーサーではないが、一応この仕事を15年以上やってきている。人並みぐらいにはバイクを扱えるようになったつもりだが、そんなスキルを持ってしても流れの速い幹線道路を時速30kmで走ることに恐怖を感じる。

 

まず第一に他の交通との速度差が恐いのだ。みなさんご存知のように、一般公道での制限速度は最高60km/hである。とはいえ片側2車線の幹線道路での実勢速度はメーター読みで70km/hぐらいで流れるものだ。そんな場所を30km/hで走れば、速度差が30km/h以上になってしまう。追い抜かされるときの速度差30km/hといったら相当なものである。体感的にはビュンビュン抜かされる。この速度差さえもうすこしだけ少なければそれほど恐くはないハズなのだが…。僕の経験を話せば、一般道でも高速道路でも追い抜いていく車両との速度差が25km/hを超えると不思議と恐怖感が増すんだよねぇ。追い抜く側としても、あまり速度差があるとちょっと不安になってくる。

 

そんな状態だから、交差点での左折巻き込みがものすごく恐い。30km/hでテロテロ走っていると、他のクルマが交差点の直前で追い抜きをかけて、そのまま左ウインカーを出しながら、目の前に割り込んでくる。でもって交差点直前で急減速したりするのだ。

 

左側端30キロ走行していると、50㏄にかせられている、いろいろな無理、矛盾が見えてくる

ヤタガイ ヒロアキさんの投稿 2017年11月11日土曜日

 

動画は、直進する僕と左折したい車両が交差点でニアミスするところ。お互い嫌がらせをするつもりはないんだろうけど、ここまで速度差があると、左折のタイミングをはかりにくくなるのは当たり前だよね。

 

そんな恐怖に怯えながらもスーパーカブ110と50で同じ道のりを通勤してみたのだが、50の方はもうストレスの塊みたいな通勤だった。原付1種では通れない区間があって遠回りさせられるし、バンバン抜かされるのが恐いわで、最終的にはもうバカ正直な時速30km走行をやめて、メーター読みで35~40km/hをキープして走ることにしたくらいだ。オートバイ雑誌の編集長がそんなことでどうする?と怒られるかもしれないが、免許の点数より自分の命の方が大事である。法律を守ったばっかりに交通の流れを乱して事故に巻き込まれたんじゃ、正直者はバカを見るの典型じゃないか…。交通社会ではまわりの流れに乗ることが一番の安全策なのだ。

 

それにちょっと疑問に思うのは最近増えている道路の端に作られている自転車専用のレーン(?)。ここは本来、車道外側線といい、“車両はなるべくこの内側を走りなさい”的な印で、原付1種や自転車などの明らかに遅い車両が走るためのエスケープゾーン的な場所だったはずだ。それが“自転車専用”と銘打たれてしまっては、原付はどこを走ればいいのだ? そんなルールを知っているにせよ知らないにせよ、“自転車専用”なんて書かれてしまったら、自転車と原付との間で「ここは自転車専用だろう!?」という、いらぬトラブルに発展しかねない。今回のインプレッションで車道外側線内を走っていて自転車乗りに文句を言われることはなかったが、実際そんなトラブルも聞こえてきてもいるしね。

 

うーん。なんとかならないもんかなぁ、原付1種に関する法改正。せめて幹線道路での制限速度だけでも40km/hに引き上げてくれると、より安全でスムーズな運行ができると思うんだけど…。ぜひとも法整備しているおエラいさんや警察関係者の方に、幹線道路での30km/h走行を体感してもらいたいなぁ。もちろん制服脱いで単独でさ。そうすればいかに原付1種をとりまく法律がバカバカしくて危険なことなのかを身をもって実感してもらえると思うんだけど。

 

やたぐわぁ

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やたぐわぁ

本名/谷田貝 洋暁。「なるようになるさ」と万事、右から左へと受け流し、悠々自適、お気楽な人生を願うも、世の中はそう甘くない。実際は来る者は拒めず、去る者は追えずの消極的野心家。何事にも楽しみを見いだせるのがウリ(長所なのか? コレ)だが、そのわりに慌てていることが多い。自分自身が怒ることに一番嫌悪感を感じ、人生の大半を笑って過ごすことに成功している、迷える本誌編集長の44歳。

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