登ったつもりも悪くない

行こう、行こうとは思っていたが、ついぞ行ってなかったところに行ってきた。都内を走っていると大抵の場所から見える東京新名所・スカイツリーである。オープンしていたのはもちろん知っていたし、“そのうち行ってみないとなぁ”なんて思ってはいたのだが、ついつい「混んでるんだろうな?」なんていう先入観が邪魔をして行かずじまいだったのだ。遅ればせながらというか、今になってというか、ようやく重い腰を上げたというワケである。

離れたところから見ても、てっぺんがかすんでいたり、雲のなかだったりして、デカイデカイとは思っていたが、そのデカさはもう圧巻というか、あきれるほどにデカイ。先っぽは真下からは展望台に隠れてほぼ見えない。東京タワーの根元に初めて立ったときもずいぶん驚いたもんだが、見上げたときに感じるなんとも言えない圧迫感はケタ違いである。垂直で巨大なものを見上げるこの感覚には、覚えがある! しばらく口をアングリ開けたまま空をあおいでいたが、牛久大仏のソレに近いと思い至った。人間とは視界に入り切らないもののスケールは認識しない。全容が視界に入って初めてその大きさに気付くのだ。

いい加減首が疲れたころに、入場受付へと並んでみたのだが、そこで再び目を丸くした。オープンから数ヶ月が経ち、多少は空いているのでは? なんて思っていたのだが、甘かった。入場受付では「あなたは何時ごろに登れますよ」という整理券が配られているのだが、もらった整理券を見ればなんと5時間後の時刻が刻まれているではないか! いやいや、さすがにコレは待てないだろ(笑)。まだ午後1時にもなっていなかったが、どうやら完全に出遅れたようだ。ショッピングモールをぐるりと見学し、水族館や企画展のようすを見るもどこも混雑。かろうじて昼食はとれたが、それでもまだ2時間も経ってない(笑)。

残りの3時間をどうしようかと一瞬だけ悩んだが、「げっ、今から列ぶと7時かぁ…」と地方なまりでつぶやく2人組に、僕らが持っていた5時台の整理券をさっさと譲渡し現場を退散。“行ったつもりが一番もったいない”なんてキャッチコピーに誘われて来たのだが、“登ったつもり”には意外と満足している。まぁ、なくなるもんじゃなし、3年ぐらいは眺めて暮らしてリベンジするさ(笑)。

やたぐわぁ

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やたぐわぁ

本名/谷田貝 洋暁。「なるようになるさ」と万事、右から左へと受け流し、悠々自適、お気楽な人生を願うも、世の中はそう甘くない。実際は来る者は拒めず、去る者は追えずの消極的野心家。何事にも楽しみを見いだせるのがウリ(長所なのか? コレ)だが、そのわりに慌てていることが多い。自分自身が怒ることに一番嫌悪感を感じ、人生の大半を笑って過ごすことに成功している、迷える本誌編集長の44歳。

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