ガンコちゃん

初めてカナヘビを飼うことになった。まだ小さい赤ちゃんである。手に乗せるとじっとして、そのうち目をつぶってしまうので弱っているのかと心配するほどおとなしい。まずは住みかと腹ごしらえかな、と図鑑を開いてみると、食べ物は昆虫・クモ類などとある。とりあえずは飼育ケースに庭の一角をゴッソリ土ごとすくって入れてみる。一緒に小さな虫もたくさん入ってきた。なかなかいい具合だと、そこにカナヘビを入れて一晩そっとしておく。

翌朝、飼育ケースをのぞいてみると…、なんだか昨日見たままの姿でじっとしている。その周りを虫が元気にはい回る。カナヘビの背中をうろついても食べる気配なし。まだ慣れていないからかなと1日待ち、2日待ち…、と数日ようすをうかがうが、そのうち虫の方がスクスクと育っていき、カナヘビは相変わらずじっとしている。これはちょっとまずいんじゃないかと実際に飼っている人の情報を調べると、カナヘビは日光浴をするらしい。生息場所が石垣のすき間とか草むらのしげみとか、薄暗いところに隠れているイメージが強かったので盲点であった。なるほど、は虫類というのは日光浴が必要なんだと飼っているカメの水槽のそばに置き、カメと同じようにライトを当てた。確かに上の方に登ってきて、光に当たっているようだ。少しホッとした。

さあこれで虫も捕まえるようになるだろうと安心していたが、やっぱり何も口にしている気配がない。掘る場所を変えて土も虫もいろいろ試してみたが、じっとするだけで、何も食べない。ときおり霧吹きの水滴をなめる程度である。見ていないときにこっそり食べているのかとも思いたいが、どうも日に日に体が痩せてきている感が否めない。エサが硬いのか?強いのか?大きいのか? 困った挙げ句、試しにペットショップでイトミミズを買ってきて水入れのなかに漂わせてみた。しかしこれもやっぱり口にしない。これはいよいよまずいと、口の端にイトミミズをはわせてみるが、食べるどころか目を閉じてしまう。そこでちょっと口を開いてなかにイトミミズをくわえさせてみた。最初は迷惑そうに、渋々といった感じでイトミミズをゴクリとノドの奥に押しやっているようだったが、その瞬間「ん?」という顔をしていたからまんざらではないらしい。さらに一口二口、口の中に入れてやると、迷惑そうながらも空腹が満たされたか、ちょっと動きが元気になってきた。翌日、まだ相変わらず与えたエサを食べようとはしないので、また口のなかに入れてやる。また少し元気になる。これでイトミミズが食べられることはわかったが、自分で食べないのはなぜだろう。

どんなに目の前においしそうなごちそうをぶらさげられてもじっとガマンし続けるなんて、相当ストイックな性格なのかと思ったが、飼育されているもののなかには生き餌以外のものにも味をしめて食べている例もあって、ますます謎深い。とりあえずしばらくはイトミミズでこの場をしのぐことはできそうだが、今後いろいろ試してみないとよくわからないなーと思った。しかしこの頑固ちゃん、お腹いっぱいで気持ちよさそうに光に当たる姿はなんともかわいい。そうだ、名前はガンコちゃんがいいね。オスかメスかまだよくわからないけど。

チャンカメ

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チャンカメ

タンスタ創刊号の〆切間際に入社した古株女子だが貫禄はまるでナシ。かわいい=へんなものについつい手が伸び、デスク周りは癒やし(?)小物だらけ、少々アク抜きの必要な40代。イラスト担当。愛車は現在Z250。乗るたびに ”最近のバイクはすごいな〜” と可愛さ倍増中☆

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