くやし涙

先日、大分県にあるサーキット『オートポリス』に行ってきました。たまたま仕事で大分県におり、ONE&TWOクラブフェスティバルというカスタムした市販車で戦う草レースと、九州地方ロードレース選手権の最終戦が開催されていたから。とくに九州地方ロードレース選手権には、15年鈴鹿4時間耐久ロードレースで14歳という若さで優勝をとげた和田留佳選手で(現在は15歳)、ST600クラスの国内ライダーでポイントリーダー。過去に携わっていたカスタムピープルの連載で取材させてもらったこともあり、シリーズチャンピオンになる勇姿を見ようと思ったのです。

前日の予選ではコースレコードを叩き出してポールポジションを獲得。人馬ともに好調のようでしたが、レースに絶対はない。転倒リタイヤしてしまえば、シリーズチャンピオンを逸する可能性もあるわけです(ポイント的に2位に付けている松崎選手は予選総合2位)。緊張感が高まるなかレースはスタート! スタートが得意ではないと聞いていたものの、最初に1コーナーに飛び込んだのは和田選手。その後にピッタリと付く松崎選手。数周は和田選手がトップを走行していのですが、コースアウト…。ピットでモニターを見ていた関係者にどよめきが!? 転倒はまぬがれ、すぐにコースに復帰したものの、松崎選手とは差が。

『もう松崎選手に追い付くのは難しいだろう』と正直思ったのですが、諦めない和田選手。そこから猛チャージをかける! 予選で和田選手がマークしたコースレコードを決勝中に松崎選手が塗り替え、さらにそのタイムを上回る和田選手。徐々に差が縮まってきたものの、周回数的に厳しい状況。最終的に松崎選手から2秒489という差で2位でフィニッシュ。結果的にはシリーズチャンピオンを獲得して万々歳という状況でした。コースから戻ってきてヘルメットを脱いだら笑顔が見られるかと思いきや…。両手で顔を押さえて泣き出した和田選手。シリーズチャンピオンを獲得したうれし涙ではなく、走行中にミスした自分の不甲斐なさによるくやし涙…。

テレビを通じで甲子園球児がくやし涙を流すシーンは見ますが、生で見るのは初めて。僕も危うくもらい泣きしそうになるほど感動しました。こういったライダーが上にいくのだということも含めて。来シーズンの予定はまだ秘密のようですが、どんなステージでどのような活躍してくれるのかが今から楽しみです。

このシーンを見ていてふと思ったことがあります。『最近自分はくやし涙をいつ流したか?』ということ。振り返って見れば成人してからはくやしいことはあっても、涙を流すのではなく、そのくやしさをバネにして努力するという方向に。今のクレタに入る前も仕事でくやしい思いをしたからこそやってこれたという部分はあると思います。それ以前になると何回か流した記憶が…。

それは高校受験とき。高校受験のときは県内トップの公立高校をねらって、夜中の3時まで机に向かっていました。模試もだいたい合格圏内の点数を毎回取れていて『あとは当日体調をくずさなければ大丈夫』だと思っていたのです。それだけ努力もしてましたし…。ところがフタを開けてみれば、自己採点では合格に届くか届かないか微妙な点数。発表まで『受かる』『落ちる』という想いが交錯…。ケアレスミスもあり、それさえ押さえておければそんな心配もすることなかったのですが、最終的は不合格でした。

大人になると精神的に強くなるということもあると思いますが…、くやし涙を流すというのは若者が流すものなのだということに思い至りました。ただ、すべての若者が流すモノでもないでしょう。何か目標に向かってトコトン努力し、それに届かなかった若者が流すモノ。だからこそ今回の和田選手の姿に感動したのです。僕もいい大人になって人目をはばからずくやし涙を流すということはないと思いますが、何か失敗したときに心の中で泣けるように生きているか…。若者の涙からいい刺激を受けることができました。

よっすぃ~

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よっすぃ~

近代日本の文化は数あれど「バイク」・「マンガ」・「アニメ」に興味があり、そのどれかに関わる仕事したいと考え、バイク雑誌の編集を始めてはや15年(本人は「ガンダムをはじめとするロボットアニメが好き!」と主張するが、周りからは萌え系アニメ派と思われている…)。その半分以上の時間は家に帰らず、カメラを持って全国各地を放浪するか、原稿書きで編集部に引きこもってすごしてきた。「おかげでどこでも寝れるようになった」と豪語する40歳。

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