久々のスクール受講はハードエンデューロ!?

バイク雑誌の編集の仕事をしていると、いろいろなレーサーやジャーナリストさんのライディングスクールを受ける機会がある…のはちょっと昔の話。さすがに最近は、そんな楽しいスクール受講の取材は他の編集スタッフにまかせている。…ハズだったのだけど、久々僕自身がライディングスクールに参加することになった。

↑相棒は、KTMの1050ADVENTUREで200kg超え!

その名も、クリス・バーチ氏のエンデューロクリニック。なんだ? このタンデムスタイルに相応しくないタイトルのスクールは? と思った方、大正解。エンデューロとは、道だか獣道だかわからないようなガレ場や斜面をなんとか走って帰ってくるという競技。乱暴な言い方をすれば、飛んだり跳ねたりのモトクロスの野山版がエンデューロだとすると、ハードエンデューロはさらにトライアル競技的なセクションの難しさの要素をプラス。越えた越えられないで四苦八苦しながら人もマシンもひどく消耗するレースと思ってもらえれば間違いない。興味のある人は、このままGoogle先生で「エルズベルグロデオ」と打ち込んで、画像なり動画なりを観てもらうと、ハードエンデューロがどんな競技かが、一発でご理解いただけると思う。クリス・バーチ氏はそのハードエンデューロのKTMライダーで、現役は引退しているものの、この宇宙一ハードなエンデューロレースと言われるエルズベルグロデオの栄えある完走者でもある。

 

↓クリス・バーチ氏の1190アドベンチャーRを使ったデモライド映像
https://www.youtube.com/watch?v=NpCubYprqFQ

で、なんでそんなスクールをタンデムスタイルとして受けてきたかというと、ちょっと話が複雑で、僕がちょと前まで編集長をしてきたUnder400という雑誌の話を持ち出すことになる。このUnder400という雑誌はその名のとおり400㏄以下の排気量のオートバイに特化した雑誌なんだけど、まぁ、400㏄以下限定ということでオフロードという分野もかなりのウエイトを割いた作りをしている。そんなこともあって、毎年鈴鹿8時間耐久ロードレースをパロった、8時間の耐久エンデューロレースへの参戦記を記事にしてきたのだ(だってロードレースの8耐はビッグバイクだから取り上げられないしね!)。ただ、僕が担当する雑誌もタンデムスタイルに変わってしまったし、今年はどうしようかなぁ? なんて考えていたところに、我々と昨年まで4年間にわたり泥沼の戦いをしているMr.バイク・BGチームから、「今年はホンダのCRF1000Lアフリカツインで出ようかなんて話になっているんですよ」なんて話が舞い込んだのだ。

 

うーん。これまで泥沼の水かけ試合を続けてきたライバルの路線変更宣言に意気消沈。ここ数年はホンダさんとKTMさんまでこの泥試合に引きずり込んでじゃれ合ってきたのいうのに…、そっちが1000㏄クラスのアフリカツインで出場するんじゃ、もうUnder400誌としてはからみようがないじゃん!? なんて悩んでいたときに「ならちょっと試してみますか? アドベンチャー?」と、KTMさんから提案いただいたのがクリス・バーチ氏のクリニックだったってワケ。試しにKTMのアドベンチャーのなかでも一番軽い1050アドベンチャーをこのクリニックに持ち込んで、イケそうならタンスタへと掲載誌面をスイッチしたらどうですか?ということなのだが、エンデューロのクリニックに車両重量250kg近いのアドベンチャーを持ち込んでいったいどうなるのか? 

 

まずは丸太越えでこてしらべ(笑)
続いてエンデューロコースへ。ガンバレ俺!(笑)。
超重量級車は下りが恐いのなんのって!
クリス・バーチ師匠も1190ADVENTURE Rで参戦。しかもすんげぇとこに突っ込んでいく(笑)

 

いやぁ、無事五体満足で帰ってきましたが、シリーズで一番軽く、しかも21インチ化されオフロード仕様になっているタイヤを履いた1050アドベンチャーとはいえ、やはり一筋縄ではいかないのはあたりまえ。しかも、クリニックの内容はハードエンデューロ向けのなのだから、それなりの難所もどうやったって通ることになる。エンデューロマシンでスイスイと難所をクリアする他の受講者を尻目にもう必死! なんせバイクはKTMさんからの借り物だから、できれば…というか絶対に倒したくはない(笑)。そりゃぁ、必死のパッチで頑張りましたよ。その証拠にアレから3日。僕の体は筋肉痛で悲鳴を上げっぱなし!

 

右側のバイクにまたがっているのがクリス・バーチ師匠

 

ただね。クリニック自体はものすごくためになるものだった。クリス・バーチ師匠(と呼ばせてください!)の教え方は、非常にわかりやすく理にかなっている。いわゆる天才型ではなくて、努力型の実力者なのだろう。ポジションのセッティングにはじまり、スタンディング理論、荷重コントロールといった一つひとつの動作の理由や意味を論理的に説明してくれ、それがイチイチわかりやすく、聞いているだけで、自分もできそうな気がしてくるから不思議なのだ。事実、指摘を受けた所をなおしてみると、「あらやだ、コーナリングが怖くないじゃない!?」となるってワケ。いやぁ、まだまだ世の中知らないことばかりだね。ワンデイの講習でしたが、目からウロコがポロポロ落ちたよ。

 

で、結論はというと、クリス・バーチ師匠に習ったことを、さらに走り込んでモノにできたとすれば…、ドライコンディションなら…、なんとかなるような、ならないような…、そんな感じ。師匠からも「コイツでレースに出るのは大変だぜ、面白いけどね。タイヤのチョイスはコレで、マシンはアレしてコレしてウンタラ…」と個別に真剣なアドバイスまでいただいてしまった。ちょっと試しに…なんて思っていたがすでに引くに引けない状況である。だが、ともかく巨体のアドベンチャーを倒せばいろんな意味で地獄が待っているので、石橋を叩きながら進む不思議なレースになるだろう。さぁ、Mr.バイク・BGとの対決は正立するのだろうか? あとはライバルチームの出方にかかっているワケだが、それが実現するのが楽しみなような怖いような…。とにもかくにも、バカバカしい誌面が作れることだけは受け合いなのだが、はたしてどうなることやら…。

やたぐわぁ

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やたぐわぁ

本名/谷田貝 洋暁。「なるようになるさ」と万事、右から左へと受け流し、悠々自適、お気楽な人生を願うも、世の中はそう甘くない。実際は来る者は拒めず、去る者は追えずの消極的野心家。何事にも楽しみを見いだせるのがウリ(長所なのか? コレ)だが、そのわりに慌てていることが多い。自分自身が怒ることに一番嫌悪感を感じ、人生の大半を笑って過ごすことに成功している、迷える本誌編集長の44歳。

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