雨の日の一台の原付

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雨の日の一台の原付

その日は雨が降っていた。うす暗くなりかけた道路を車で走行中、歩道脇に停車した一台の原付が目にとまった。側面が塀の、細い歩道だったので、そこで停車するバイクなんてめずらしいな何かあったのかな、と気になった。近づくとレインコートを来た白いヘルメットの小柄な…警察官であった。手元でゴソゴソと新聞紙らしきものを広げていた。さらによく見ると足元に何か横たわっている。どうやら車にひかれた…おそらく猫。ずいぶん雨にあたっていたので、ひかれた直後というわけではなさそうで、残念ながら息絶えている様子。車だったので私が見たのはそこまでだが、あんな暗がりで雨の降る中、慣れた手つきで業務的にという感じでもなく、面倒くさそうというわけでもなく、おそらく寒さで手がかじかんでいたか、独りうつむきながらゆっくり新聞を広げる姿がなんだか印象的で、しばらく頭の中でリピートしていた。(警察官ってひかれた動物を処置するのも仕事なのかな…)たとえ任務を遂行したまでだったとしても、素通りして見過ごしたって誰も何も咎めやしないであろう悪天候の中、小さな存在に向き合っていたあの警察官に敬意を払いたいと感じた、ある日の出来事である。

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チャンカメのプロフィール

タンスタ創刊号の〆切間際に入社した古株女子。現在は雑誌広告を中心に、たまにイラストなどの仕事をする。最近ZZR1100を手放し、愛車はSDRとリード100。

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