音楽の力

東日本巨大地震に遭った人たちが身を寄せている避難所で『アンパンマンのマーチ』がBGMとして流されているという記事を新聞で読んだ。こんなときにアニメソングなど不謹慎だという懸念もあったようだが、「少しでも子供たちに楽しみを」という考えから流されることになったらしい。しかも、これで大人も癒されたりしているようだ、なんてことが書いてあった。

こんな非常時だからこそ音楽の力ってすごく発揮されると思う。応援ソングに童謡。聞いているだけで落ち着いたり「よし、がんばろう!」と元気が出たり…。それがたとえカラ元気だとしても、意気消沈しているよりは100倍マシだと僕は思うのだ。

程度の差こそあれ、これは被災地でなくても日本全国、同じハズだ。とくに中部以東では、いつどこで起きるかわからない大地震や津波に放射能汚染物質の飛散。それにともなう経済、国政の混乱…、今の日本には問題が山積み。正直、この明日をも知れない状況で不安を抱えていない人などいないだろう。でも、こんなときだからこそ、音楽のような“何か”でみんなが明日への活力を作り出せれば、きっと日本はいい方向へ進んでいくと思うのだ。

音楽同様、純然たる娯楽であるバイク雑誌を作っている僕ら。日本中が大変なことになっているこの時期に、雑誌という生活に余裕があるときに楽しむためのもの作っていていいのか?なんてことも震災後、よく考えた。でも、今回の、被災地の『アンパンマンマーチ』の話を聞いて僕自身かなり救われたのも確かである。被災地でもどこでも、いずれ娯楽が必要になる日は必ずやってくる。そしてもし、僕らが作る雑誌によってみんなが一瞬でも不安を忘れたり、楽しい気分になれるのなら、それだけでうれしいことじゃないか? 「今は雑誌なんて作っている場合じゃないよ」なんて雑誌作りを放り出してしまったら、やがて少しばかりの余裕ができ始めたときに、元気づける何かがなくなってしまう。だからこそ僕は、誰がなんといおうと楽しい誌面を作り続けたいと思うのだ。

ときに、今回、作者のやなせたかしさんは、被災地で「アンパンマンのマーチ」をかけることを快諾したそうだけど、アンパンマン僕が物心ついたころからあるキャラクター。あのころは絵本しかなかったと記憶しているが、あれから30数年。やなせたかしさんは、いったいおいくつなのだろう?

やたぐわぁ

written by

やたぐわぁ

本名/谷田貝 洋暁。「なるようになるさ」と万事、右から左へと受け流し、悠々自適、お気楽な人生を願うも、世の中はそう甘くない。実際は来る者は拒めず、去る者は追えずの消極的野心家。何事にも楽しみを見いだせるのがウリ(長所なのか? コレ)だが、そのわりに慌てていることが多い。自分自身が怒ることに一番嫌悪感を感じ、人生の大半を笑って過ごすことに成功している、迷える本誌編集長の44歳。

コメント 1件

  • アバター

    by 森の人80842011/3/26 07:49

    音楽や雑誌をこんなときに…というご意見もあって当然です。私は東北地方の博物館に勤務している者です。非常時だから来館者も少ないし,閉館して電気代を節約したらいいのにと思っていました。しかし意外なことに,いつものように開館すると仙台や石巻から避難してきた親子連れが何組が来て,そのときだけは被災したことを忘れて楽しそうにしていました。開けていてよかったと思いました。雑誌も同じようなものではないでしょうか。今はどん底にあるバイカーもまた乗れるように仕事を立て直すぞ,と思ってくれるかもしれません。

このコラムにあなたのコメントをどうぞ

この記事が気に入ったら
いいね!とフォローしよう

タンデムスタイルの最新の情報をお届けします