日本の都市部にバイクパーキングを!

ハーレーダビッドソンさんの招待で、スペインはバルセロナ地方で行なわれた18モデルのソフテイルシリーズのプレス向け国際試乗会に行ってきた。エンジン&フレームのリニューアルを行ない、コーナリング特性を大幅にアップ。試乗したのはファットボブ、ストリートボブ、ヘリテイジ、ブレイクアウトの4台だけど、スペインの郊外にあるワインディングを2日間これでもかと連れ回された。もうね「ハーレーダビッドソンを“アメリカの直線道路をゆったり走るバイク”とは言わせんぞっ!」(笑)という意気込みをこれでもかと脳みそにすり込まれるような試乗コースだった。だってバイクに乗った2日間のうち80%の道がほぼワインディング。しかも日本の山奥のようなタイトなワインディングを延々と、しかもかなりのハイペースで走ることになったのだ…と、そのあたりは下の動画からも十分感じ取れるだろうけど、詳しいインプレッションは次号、10月24日発売のタンデムスタイルを読んで欲しい。ここで書きたいのはスペインはバルセロナ市街の駐輪事情だ。

というのも国際試乗会の最終日、ちょっと時間ができたこともあって試乗会に参加した他誌ライダーたちとタクシーを相乗りしてサグラダ・ファミリアを観に行ったのだ。もちろんサグラダ・ファミリアもすごかったんだけど、その周囲のバイクパーキングの整備ぐあいにいたく感動してしまったのだ。だってあのアントニオ・ガウディが設計したサグラダ・ファミリアだよ? もちろん世界遺産だし、日本でいえば法隆寺…とはいわないまでも、都市型の観光地を引き合いにだせば東京タワーかスカイツリーみたいな超有名観光地である。まわりはもちろん観光地化されており、世界中からやってくる観光客で終始ごった返しているんだけど、そんな場所にもキチンとバイクパーキングが整備されているのだ。

 

奥はいわずと知れたサグラダ・ファミリア。その手前には見切れてしまっているが、バイクのパーキングスペースがある。タクシー待ちのスペースはないのに、バイクのパーキングはキチンと整備されていることに驚く

 

見た感じ、サグラダ・ファミリアが建っている場所はそれほど古い街ではないようだが、もちろん土地があまっているワケではない。バスやタクシーの駐車場や待合所はないにも関わらず(ちょっと離れればあるんだろうけど…)、きちんとバイクとクルマの路上パーキングは整備されている。しかも本当にサグラダ・ファミリア目の前。それこそ真ん前にバイクパーキングが整備されていたのである。

 

土地がないのは日本もスペインも一緒であるのだが、交差点の四隅を有効利用し、バイク駐輪場にしている。驚くのはこれが世界遺産のサグラダ・ファミリアのどまん前ということだ。それだけごく自然にバイクが人々の生活に溶け込んでいるということだろう

 

さらに町を歩いてビックリしたのは、これが別にサグラダ・ファミリアだからというワケではないということ。どんな路にもキチンと駐輪場が整備されており、しばらく観察して利用者のようすを見ていると、もう利用者が、高速道路のPA駐輪場レベルで勝手に停めていいカンジ。特別な利用シールみたいなものはあるのかもしれないが、パーキングチケットをいちいち購入している雰囲気もない。だからだろう、バイクが市民の足としてキチンと機能しているし、利用者も多い。もちろんなかには、純然たる“バイク好き”もいるんだろうけど、それ以上にバイクやスクーターが日常の足として老若男女に浸透している印象を受けるのだ。

 

クルマのパーキングスペースに作られたバイク駐輪場。ミニクーパーが停められるクルマ1台分のスペースがあれば、バイクは4台も停められるのだ

 

ひと昔前、日本の原宿や表参道もこんな感じで極自然にバイクを利用する人たちの姿をみることができた。それこそ原宿や渋谷で、普通に道行くライダーたちに声をかけて「雑誌に出ませんか?」なんてキャッチ取材ができるほど、街にバイク乗りがあふれていた時代が日本にもあったのだ。それがである。日本ではバイクのパーキングスペースを整備せずに、違法駐車として取り締まる方向に国が動いてしまったばっかりに、便利なはずのバイクという乗り物が絶滅しかかっている。世界に名を轟かせる4メーカーが生まれた場所であり、バイク王国であるハズの日本なのに、なぜかバイクが虐げられる存在に成り果てている…。実際、あの取り締まりの開始以来、日本の都市部からバイクはすっかり消えてしまった。もっとあのころに駐輪場の整備を訴えていればとも思うが、まぁ、起こってしまったことを嘆いてもしょうがない。スペインの街に溶け込むバイクを見ていたら、そんな時代が懐かしくてしょうがなくなってしまった。

 

もちろん趣味で大きなバイクに乗っている人も多いのだが、それ以上に目についたのは日常の足としてバイクを使う人たちが多い

 

建設的な話をしよう。今からでも遅くない。日本の都市部にもスペインの10分の1でいいからバイクパーキングが欲しいと願うばかり。なにも専用の屋根付き駐輪場を増やしてくれと言っているのではない。路上のデッドスペースやクルマ用のスペースの横でいいから、バイク用のパーキングスペースが欲しいのだ。

 

交差点のデッドスペースを巧みに利用してバイクパーキングを作っている。しかもなんと縦2列のバイクパーキングである!

 

現代の日本でバイクで都内に出かけて、買い物したり食事をするのは、その駐輪場がないことから、もはや現実的ではない。日本からスペインへと出発する前、新宿にバイクで出かけて駐輪場を探すハメになったが、なんと面倒なことか…。専用アプリで周囲の駐輪場を探して訪ねるも、スペースが空いていなかったり、そもそも駐輪場がなくなっていたり、「短い時間ですか?」と露骨にイヤな顔をされたり…。

 

街中を見ているだけでバイクが多いな…と感じる。日本でバイク都市といえば、土地の少ない京都であるが、それよりもさらにライダーが多い印象を受けた

 

そんなバイクがたくさん走り回るバルセロナの街を見ていると、もううらやましくなるばかり。日本はバイク王国ではなかったのだろうか? 経産省はなんとかバイクの出荷台数を増やしたがっているそうだが、バイクが市民の足として使いやすい環境を取り戻すことも大事じゃないだろうか? 違法駐輪を取り締まるのはいい。だが、いちバイク好きとしてバイク乗りが増える環境を切望するしだい。

 

サグラダ・ファミリアの横の裏道。合法ではないのかもしれないが、歩道の植樹の脇をうまく駐輪スペースに利用しているが、とくに取り締まりは行なわれていないようだった
雑誌編集者としてもちろん本屋さんもしっかりチェック! おっとバイクパーキングに関係なかった?
レポートは、いつかバイクに乗ってこの街に来て、パーキングを存分に利用やろうと思ったやたぐわぁでした

やたぐわぁ

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やたぐわぁ

本名/谷田貝 洋暁。「なるようになるさ」と万事、右から左へと受け流し、悠々自適、お気楽な人生を願うも、世の中はそう甘くない。実際は来る者は拒めず、去る者は追えずの消極的野心家。何事にも楽しみを見いだせるのがウリ(長所なのか? コレ)だが、そのわりに慌てていることが多い。自分自身が怒ることに一番嫌悪感を感じ、人生の大半を笑って過ごすことに成功している、迷える本誌編集長の44歳。

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