2024年のEICMA(ミラノショー)で発表され、2025年世界スーパースポーツ選手権を走ったことで(WSS。シリーズチャンピオンを獲得)、いつ市販車が発売になるのか気になっていた人も多いであろうYZF-R9がついに発売となった。2022年に発売となったYZF-R7に続き、MTシリーズをベースにしたスーパースポーツとなる。エンジンはMT-09のクロスプレーン・コンセプトの3気筒エンジンをベースに、スーパースポーツらしい乗り味にすべく、燃調や点火時期などを変更している。また、最新機種らしく、スマートフォンとの連携によってメーターをナビゲーションとして使えたり、電話やSNSの着信もメーターに表示できるたりと利便性もかなり高い。
実車を目の当たりにした最初の印象は“デカっ!”だった。実際1000㏄クラスのYZF-R1に比べて全長、全幅、全高のすべてが15㎜大きい。ただ、そのちょっと大柄な車体がいい。ポジションがキツくないのだ。YZF-R1やR6の純血スーパースポーツは、コンパクトな車体にシート位置が高くハンドルが低めの前傾気味ポジションとなる。これ、しっかりと体を鍛えたライダーであれば乗りこなせるけれど、鍛えていないと長時間ガンガン走らせるのは厳しい。対してYZF-R9は、数時間乗り続けても体のどこからも悲鳴は上がらなかった。
4気筒の吹け上がりほど軽やかではない独特なスムーズさが3気筒を感じさせてくれるパワーユニットは、スポーツ、ストリート、レインの3モードに加えて独自にセッティングしたモードも選べる。出力の特性、トラクションコントロールの介入度、後輪の横滑りを抑える度合い、フロントが浮くのを抑える度合いを細かくセッティングできるので、自分好みにセットアップするのも楽しみの一つのといえる。そこまでしなくても既存3モードの差は十分に感じられ、路面状況やその日の気分に合わせてセレクトするだけでもいいだろう。そして、もっとも過激な設定のスポーツでも、扱いきれないという印象はなかった。速度をパワーユニットとともに調整するブレーキは、公道を走る限り絶対的な制動力は十分だし、効き具合もわかりやすい。
直進安定性もいいし、曲がる際は素直に車体は曲がりたい方向に入り込んでくれる。その際、思った以上に切れ込んだり、逆にはらんだりすることもない。また、スーパースポーツにしたらハンドルが切れるので、Uターンや取り回しも思った以上にラクだった。というわけで、トータルで見たら、ロングツーリングから街中の足、そしてサーキット走行とさまざまなシーンを存分に楽しませてくれるオールラウンダーといえる。きっと、こんなスーパースポーツを待っていた人は多いのではなかろうか?
低速安定性と扱いやすさ、初めてのスーパースポーツにオススメ!
スーパースポーツ特有の前傾姿勢に身構えていたが、実際は上体が前に倒れすぎずハンドルまでの距離も遠くない。YZF‑R6よりハンドルが高く近く、フットペグも低めに設定されているため 、攻めた姿勢ながら必要以上に窮屈ではなく、腕が伸び切る感じもなかった 。クラッチレバーには調整機能があり、初期設定では手の小さな自分には遠く感じたが、調整後はちょうどよい位置になり操作しやすくなった。シート高830mmは片足を下ろして母指球が接地する程度。R1やR6より足つきが良く、R7と同じくらいの足つきだ。車体重量も数値ほど重く感じず、初めて大型バイクに乗るとき特有の緊張感が薄れた。半クラッチでの低速走行も安定しているため、取り回しやUターンで心に余裕を持てた。
888ccの3気筒エンジンは、大排気量ゆえに軽くスロットルを開けるだけで猛然と加速するのかと思っていたが、実際はしっかりスロットルを回してパワーを引き出すタイプ。中型クラスのようにエンジンを回して楽しめるのが好印象で、ただし加速が物足りないわけではなく、開けた分だけイメージどおりに前へ押し出されるので扱いやすい。YZF‑R6に比べてエンジン特性が穏やかで幅広いトルクバンドを持ち、ギヤ選択を誤っても力強く立ち上がると他の媒体のインプレでも評価されている。電子制御のライドモードやトラクションコントロールも自然に介入し、ビギナーでも安心してスポーツ走行を楽しめる 。
コーナリングは予想以上に軽快。車体の切り返しはヒラヒラと素直に旋回し 、自分の視線を向けた方向へスッと入っていく。ワインディングを走りたくなる気持ちにさせてくれる。Uターンは片側1車線ほどの道幅でなんとかこなすことができ、ハンドル切れ角は大きいもののセパレートハンドルゆえに腕の操作スペースが限られるので、1.25車線ほどあればより余裕をもって回れると感じた。停車時は片足で支えるためフロントブレーキをかけすぎないよう注意が必要だが、車体が大きく傾きすぎることはなく、落ち着いて操作すれば問題ない。
総じてYZF‑R9は「リッター級の迫力と扱いやすさを両立したバイク」という印象で、初心者や女性ライダーでも安心して楽しめる。足つき性に不安がある場合はローダウンキットや厚底ブーツを併用するとさらに安心だろう。MT‑09譲りの力強さと最新電子制御のおかげで、サーキット走行はもちろん、ツーリングや街乗りでも気持ちよく走れる。一目惚れしたらためらわず検討すべき魅力的なスーパースポーツだ。
POSITION & FOOTHOLD
両足を下ろすとカカトまでベタ着きとなる。そしてポジションが意外とラク。またぐ際はタンデムシート位置が高いので気をつかうけれど、またがってしまえばスーパースポーツにしては前傾しないポジションに拍子抜けする人は多いかも。乗車中に体を動かしやすいのもいい。身長170cm/体重70kg
両足のつま先が接地する程度だが、車両がそこまで重く感じないためか、またがった状態からの引き起こしは比較的ラク。シートの太ももが当たる箇所は細く絞られているので、足は真下に下ろせている。停車時は腰を少しずらせば、片足の母指球化土踏まず辺りまでは接地させることができるので、低身長でもコツをつかめば不安感なく乗れる。身長155㎝/体重46㎏
●全長×全幅×全高:2,070×705×1,180(㎜)●軸間距離:1,420㎜●シート高:830㎜●車両重量:195kg●エンジン種類・排気量:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列3気筒・888㎤●最高出力:88kW(120ps)/10,000rpm●最大トルク:93N・m(9.5kgf・m)/7,000rpm●燃料タンク容量:14L●燃費(WMTCモード):20.9km/L●タイヤサイズ:F=120/70ZR17・R=180/55ZR17●価格:149万6,000円
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