DUCATI SCRAMBLER CAFÉ RACER

連載新車体感 ニューモデルインプレッション

No.
185
連載新車体感 ニューモデルインプレッション

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※公開中の誌面内容はNo.185(2017年8月24日)発売当時のものになります

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803㎤空冷4ストロークのL型2気筒エンジンを搭載したスクランブラーシリーズに、セパレートハンドル&17インチタイヤを採用したカフェレーサーが登場。乗りこなす楽しみにあふれたドゥカティらしい一台に仕上がっていた。

文:谷田貝洋暁/写真:南 孝幸

対話しながら乗り方を探る、そこにオートバイの本質がある

乗りやすいとは言い難いだがそこに痺れる

“誰にでも乗りやすい”という言葉が一般化した現在のオートバイ事情。雑誌の誌面を見ればどこもかしこも“乗りやすい”、“扱いやすい”そんな言葉であふれかえっている。

 

エンジンの信頼性が上がり、フューエルインジェクションの劇的な進化によって、低回転から高回転までよく回るエンジンが作りやすくなった。車体に関しても、“ハンドリングのヤマハ”なんて言葉が昔はよく使われたが、最近はあまり聞かなくなった。ヤマハのハンドリングが悪くなったのではない。他のメーカーも努力したことで、非常に素直でよく曲がるハンドリングのいいマシンが増えたのだ。

 

そんな“ニューモデルは乗りやすいのが当たり前”という時代に一石を投じるのが、このドゥカティのスクランブラー・カフェレーサーだ。

 

スクランブラー・アイコンをベースに、17インチホイール(アイコンは18インチ)を装備し、低く構えたセパレートハンドルをセット。スクランブラーシリーズには、基本となるアイコンから、

 

オフ特性を強めたデザートスレッドまで、ひととおり乗ってはいるのだが、その印象を持ってしても、この“カフェレーサー”の乗り味が想像できない。

 

そんなとまどいを覚えながら、まずはエンジン始動。アクセルを軽く何度か空吹かししてみると、90度Vツインらしい歯切れのいいサウンドが心地いい。発熱による膨張幅が大きく、排気ガスのクリーン化に不利な空冷エンジンにもかかわらず、ユーロ4に適合しているというのだから驚きに値する。主要諸元を見てみれば、エンジンはスクランブラーシリーズ共通。各ギヤの減速比から、前後のスプロケットの丁数までまったく一緒だ。

 

ヤタガイ ヒロアキさんの投稿 2017年8月9日(水)

 

攻略の糸口は後ろ乗りとフローティンググリップ

走り出せば、他のスクランブラー同様、エンジンは非常に素直で扱いやすい。あふれるようなパワーを発揮するエンジンではないが、中低速では太いトルクフィールが味わえ、高回転側の伸びもまずまず。なにより、「ドドッ」という歯切れのいいパルスの加速特性がドゥカティらしくて心地いい。

 

一方、車体はというと、スクランブラーシリーズとはどれとも似ていない不思議な車体挙動にとまどう。…というのが第一印象だった。交差点通過やワインディングを軽く流すレベルならなんら問題はないのだが、ちょっとアクセルを開け気味にして、サスペンションをしっかりストロークさせてコーナリングしようとすると、途端にクセが出てきて曲がりにくさを感じる。ミもフタもなく言えば、乗りにくい(笑)。曲がりたい方向を見るだけで曲がっていくような現代のバイクで甘やかされた頭には「?」が浮かぶ。…が、ここで“乗りにくい!なんだこりゃ?”と吐き捨ててバイクを降りてはいけない。

 

この手のマシンには乗り方というものがあるのだ。ライダーポジションによる前後の荷重のかけ具合。コーナー進入時のリヤブレーキ入力の有無。気難しいモデルのなかには、コーナリング中のアクセルワークひとつでよく曲がるようなモデルもあったりする。傾向としてクラシカルなスタイリングを追求したバイクにはこんな特性のマシンが多い。ヤマハのSRしかり、トライアンフのスラクストンしかり。

 

ということで、まずはオシリを大きく後ろにズラして後ろ乗りをしてみる。コーナリング中にフロント荷重がかかりすぎると途端に曲がりにくくなることがクラシック系のマシンに多い。そこでオシリを後ろにズラすことでフロント荷重を抜いてやるのだ。

 

正解。これでずいぶんと曲がりやすくなった。それも僕の場合、シートストッパーにオシリが当たるぐらいの極端な後ろ乗りのポジションをとるのが最適解だった。

 

この手のクラシカルなマシンは腰を大きく引いた“後ろ乗り”のスタイルがよく似合う。コーナリングでも後ろ乗りすると素直に曲がりはじめてくれた

 

次にハンドリングのクセをみていく。決して曲がらないバイクではないことが分かったところで、セルフステアの効き具合をチェックしながら最適解を模索すると、極力ハンドルをにぎる手に力を入れないようにした方が、自然に曲がってくれることがわかった。

 

いわゆるフローティンググリップである。フローティンググリップとは、なるべくバイクのハンドル、グリップ部分をにぎらず、抑えず、突っ張らないで走ること。通常はフローティングとはいっても“添える”ぐらいなのだが、コイツの場合はアクセルを指先でつまんで回すぐらいのつもりで走ると、素直なハンドリングが引き出せる。

 

でもそんな走り方をして恐くないのかって? それが実は恐くない。履いているタイヤはピレリのディアブロ・ロッソⅡ。アクセルを開けるなり、ブレーキをかけるなりで、きちっとサスペンションを縮ませてやればかなり踏ん張ってくれる。だからこそコーナー出口でアクセルを開けて、ググッとトラクションをかけても恐くない。

 

ピレリのディアブロ・ロッソⅡのおかげでコーナリング時の接地感を強く感じられ、気持ちよく体を預けられるのだ

 

そんなこんなで色々と試行錯誤を繰り返しながら走っていると、いつも以上にバイクの操作に集中していることに気付く。少々扱いにくいから、ライダーはマシンの挙動により耳を傾けるし、路面からのインフォメーションにも敏感になる。だからこそ、このマシンでねらったラインにキチッとバイクを乗せて、アクセルを開けられたときの快感はひとしおである。あばたもエクボというではないか。いくら乗っても飽きないバイクとは、存外こんなちょっとひとクセあるマシンだったりするのも、また事実。このカフェレーサーには、相棒を深く理解して乗りこなす楽しみがある。

 

ヤタガイ ヒロアキさんの投稿 2017年8月9日(水)

 

SCRAMBLER CAFÉ RACERのスタイリング&ディティール紹介

※記事の内容はNo.185(2017年8月24日)発売当時のものになります

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