Ⅴ-ストローム1000のトラコンがスゴい!

先日、Ⅴ-ストローム1000ABSの試乗会に参加してきたのだが(詳しくは、タンスタの姉妹誌『風まかせ(7月5日発売)』にて)、ぶったまげてしまった。驚いたのはスズキの二輪車として初搭載されたトラクションコントロールシステムの完成度の高さ。

 

寝かせながらアクセルはフループンできる。バンクセンサーをスリながら、アクセルをガバアケ…、これは新感覚だ!

そもそもこのトラクションコントロールシステム(以下:トラコン)とは、ライダーがアクセルワークを間違えて開けすぎてしまったり、路面にまかれた砂などを踏んだときに、リヤタイヤが空転してスリップダウンしないようにする技術。前後タイヤの回転スピードの違いなどからスリップを検知すると、コンピュータがエンジンの点火時期の変更や燃調変更や燃料カットしたりしてリヤタイヤにかかる駆動力(トラクション)をコントロールする。ブレーキのABSとともに安全技術として、ハイスペックマシンに徐々に搭載が進んでいる。

ところがである。スズキから登場したⅤ-ストロームには、アドバンスト・トラクションコントロールシステムとでも言うべきまったく発想が異なった味付けがなされている。基本は安全技術なので、不意のスリップダウンや落ち葉を踏んだときなどに発動してスリップダウンを防いでくれるのはもちろんなのだが、ライダーによってはトラクションコントロールまかせでアクセルをガバ開けし続けられる(笑)。峠をとにかく楽しく走るための思想がV-ストローム1000 ABSのトラコンには導入されているのだ。もちろんレースの世界では既に“速く走るための技術”として取り入れられてはいるが、そんなハイレベルの次元で体感するようなものではなく、僕らのような一般ライダーが積極的に使えるようなレベルで仕上げられているというところがスゴイのだ。

 

見た目はビックオフテイストだが、車体の走りはどちらかというとロードバイク。だからこそコーナーが攻められる!

コーナリング中にアクセルを開けていくと「え? こんな段階から効くの?」という段階から介入がはじまり、粗雑なトラクションコントロールにありがちな「ガクガク」という失火感も摩擦抵抗が一定な舗装路の上を走っているぶんにはまず起こらない。変な車体のピッチングモーションが起こらないから僕のような普通のライダーでも安心してアクセルを開け続けられるのだ。しかも、トラコンのお陰でウイリーしないこともわかっているから、クリッピングポイント直前からコーナの出口までずっとアクセルをワイドオープンしていられるというワケである(笑)。

いやぁ、これが楽しい楽しい。V-ストローム1000 ABSはアドベンチュアーツアラーとはいえ、ハイパワーな90°Vツインを搭載するリッターマシンである。そんなマシンのアクセルをコーナーでガバガバ開けられるのだから楽しくないワケがない。タイトコーナーの続くサーキットなどでとにかく速く走れといわれたら、今現在、僕はこのV-ストローム1000 ABSを選ぶだろう。まぁ、バンク角はちょっと少なくてあまり寝かせられないが、それにしたっておっかなびっくりスーパースポーツを走らせるようりは随分と速く走れそうなのだ。

 

トラクションコントロールがあるから、悪路も水たまりもどんとこい!

ただ、問題もある。ついつい楽しくて気が付くとコーナリングスピードがとんでもないことになっている。ABSとトラコンが付いていれば、コーナーでスリップダウンすることもブレーキロックで握りゴケする確率は格段に減るだろう。しかし、コーナリングスピードが上がれば、追突にしろ正面衝突にしろ激突スピードが上がるのは自明の理。コーナーで握りゴケもスリップダウンもしなかったが、センターラインを割ってきたクルマに激突する速度がものすごかった…。なんて安全技術の無駄遣いはしないようにしたい。安全技術とファン技術、これらのバランス取りは我々乗り手のアクセル操作にゆだねられているのだ。

 

車体がロード寄りの高剛性なものなので、オフロード性能はそこまで高くない。ただ、トラクションコントロールがあるから、フラットダートぐらいならどこでも入っていけるぞ!
やたぐわぁ

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やたぐわぁ

本名/谷田貝 洋暁。「なるようになるさ」と万事、右から左へと受け流し、悠々自適、お気楽な人生を願うも、世の中はそう甘くない。実際は来る者は拒めず、去る者は追えずの消極的野心家。何事にも楽しみを見いだせるのがウリ(長所なのか? コレ)だが、そのわりに慌てていることが多い。自分自身が怒ることに一番嫌悪感を感じ、人生の大半を笑って過ごすことに成功している、迷える本誌編集長の44歳。

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