フロント2輪ながらコーナーなどで車体を傾けることができる3輪スクーターとしてデビューし、すでに10年が経つトリシティ。これまで2度のモデルチェンジがなされているけれど、フロントマスクがほぼ同じだったためその印象は薄い。そんなわけで、2025年の今回のモデルチェンジは、外装の一新やカラー液晶メーターの採用などかなりインパクト大だ。スタイリング以外にも、メーターがY-Connect対応になったことで、スマートフォンと連動させてターン・バイ・ターン式ナビゲーションが利用できたり、SNSなどの着信がメーター上で確認できるのもポイント。とはいえ、トリシティの一番の魅力は、なんといっても安定感があって、転倒への不安が2輪バイクに比べて圧倒的に少ないことだ。
トリシティに乗るのは久しぶりで、撮影現場まで乗ってきた2輪バイクから乗り換えた瞬間は、操舵に違和感があったけれども、ちょっと走ると人間の自動補正機能のおかげであろう、ほぼ感じなくなった。
この違和感は、2輪バイクに比べてフロントの安定感が増しているフィーリングによるもので、決して悪い印象ではない。そのため、通常のバイクでフロントがふらつきやすい人や、バイク初心者にとっては安心感が得られるはずだ。基本的な操作は2輪バイクと同じで、コーナーでは車体を倒し込んで曲がる。そのコーナーで車体を倒し込んでいく際も接地感がしっかりと伝わってきて安定感があり、それが安心感へとつながる。今回未舗装路も走ったけれど、二輪バイクだったら滑らないかちょっと緊張感が生まれるコーナーも、とくに気にすることなく通過できた。とにかく安心感があるのだ。
フロントが2輪になり、それを支えるためのパーツが装着されているので二輪バイクに比べて圧倒的にフロントまわりが重い。重量にすると2輪の原付二種スクーターに比べて50㎏弱重い。ただし、実際に走らせてみると、それが原因で交通の流れに乗れないなんてことはなく、比較的流れの早い幹線道路でも問題はなし。さらに、多少起伏のある場所をタンデムで走ってみたけれど、こちらも不満はなかった。ブレーキもあらゆるシーンで、必要にして十分な効き具合だった。
さまざまな路面状況で不安なく走れる安心感と実際に転倒のリスクが激減するトリシティ、これまでその存在を意識していなかったのであれば、ぜひ転倒リスクの低いバイクとして覚えておいてほしい。おもしろそうだけれど原付二種じゃ行動範囲が…、という人には155と300もラインナップされているので、そちらをチェックしてみるといいだろう。
LMWがもたらす安心感と走る楽しさの絶妙なバランス
先輩編集者のインプレッションに続いて、女性目線での感想をお伝えしよう。まず驚かされたのは、フロント二輪の安定感だ。低速走行でフラつきにくく、舗装路の凹凸をLMW機構が吸収してくれるので路面のボコボコ感をほとんど感じない。さらにフラットダートや砂利道を走っても、普通の二輪のように石を踏んで滑る感覚がなく、前輪がしっかりとグリップしていることがわかる。SUVを思わせるクロスオーバースタイルはデザイン面だけでなく、LMW機構の恩恵もあって未舗装路でも安心して走ることができた。
発進直後の加速は穏やかでマイルドな印象だが、スピードに乗ってくると想像以上に力強さを感じる。クルマの後ろを走る程度の初速なら遅れを取ることはないし、流れの早い幹線道路でも一度ペースに乗ってしまえば速度を維持し続けることができた。二輪の125㏄スクーターよりも車体がしっかりしているため、60 km/h前後の巡航でも不安感が少ない。ブレーキはリヤ用レバーをにぎるとフロント側も効くコンビブレーキで、ブレーキ操作に慣れていない人でも制動バランスを取りやすい。
ハンドリングについては「フロント二輪だからもっさりしているのでは?」という先入観があったが、実際には右左折やコーナリングで十分な安定感と軽快感が両立している。ひらひらと身軽にラインを変えられるため、ワインディングでは思わず笑みがこぼれるほど楽しかった。タンデム用のグラブバーはボディと一体化したデザインだが、にぎりやすくタンデム時の安心感も高い。
取りまわしではフロント二輪の重量を実感する場面もあった。車重は160 kg台とこれまで乗ってきた二輪と大きく変わらないが、フルロックで車体を押し引きするとフロントの重さで傾けすぎてしまいそうになる。ただ、切り返しを繰り返して小刻みに方向転換すれば問題なく扱えるし、ライダーが乗った状態でのUターンは片側一車線レベルの幅でも難なくこなせた。
デザイン面では、エクステリア各部のこだわりも注目ポイントだ。リヤサイドカバーのボリュームを増すと同時に、四輪のルーフレールを思わせるグラブバーを取り入れているため、後ろ姿にリッチな存在感がある。また、プロテクターとボディカラーのコントラストや裏側まで追加された黒いカバーなど、クロスオーバーモデルならではの機能性と遊び心を感じさせる仕上がりとなっている。これは開発陣が「街中での取り回しやすさと存在感の両立」に苦労したと語っていたポイントでもある。
総合すると、三輪スクーターは二輪よりも少し重いぶん取りまわしにコツが必要だが、それを補って余りある安定感と快適さ、そして未舗装路も楽しめる懐の深さを持っている。女性ライダーでも安心して扱える低いシート高とゆとりある走行性能は、街乗りはもちろんキャンプツーリングの頼れる相棒になるはずだ。
POSITION & FOOTHOLD
両足を降ろすとカカトまで接地するけれど、ヒザに余裕はない。車重があるのと重心位置、3輪ということで停車時の安定感は高い。乗車時はヒザを直角に曲げる姿勢で、足の置き場に自由度はほぼなし。シートが前後に長くポジションの自由度は高い。身長170cm/体重70kg
足着きは両足の母指球が接地し、シート幅はやや広いものの足を外側に開く感覚はそれほど気にならない。アクセルを開けずに足の力だけで動かそうとすると力が必要だが、エンジンを使えば取りまわしに不安はない。身長155cm/体重46㎏
SPECIFICATIONS
●全長×全幅×全高:1,995×750×1,215(㎜)●軸間距離:1,410㎜●シート高:770㎜●車両重量:173kg●エンジン種類・排気量:水冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒・124㎤●最高出力:9.0kW(12ps)/8,000rpm●最大トルク:11N・m(1.1kgf・m)/6,000rpm●燃料タンク容量:7.2L●燃費(WMTCモード):45.4km/L●タイヤサイズ:F=90/80-14・R=130/70-13●価格:57万2,000円
CONTACT
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