ビッグスクーターブームを知る世代にこそ乗ってほしいXMAX250
90年代後半から2000年代にかけて250ccクラスのスクーターを中心とした“ビッグスクーターブーム”があり、街にビッグスクーターがあふれかえっていた。ギヤチェンジの必要がなくイージーに乗れて、荷物もシート下に投げ込めばいいだけ。さらに当時は路面駐車が取り締まりの対象になっていなかった。そんな気軽さが当時の若者に受け入れられたのだ。このブームの牽引役を務めたがヤマハのマジェスティ250だった。現在マジェスティというブランドはなくなってしまったけれど、その後継モデルにあたるのがXMAXだ。現在ヤマハはスクーターカテゴリーにおいてスポーティさを特徴とするMAXブランドを縦展開しており、TMAX560を頂点に、XMAX、NMAX155、NMAXの4台がラインナップされている。
そんなわけで、後ろ上方へ流れるようなラインを多用したXMAXのスタイリングからは、かなりスポーティな印象を受ける。実際に走らせてみれば、スムーズかつ力強く発進し、そのままスロットルを開けていけば、250ccビッグスクーターにしては軽快さのある加速で100㎞/hまでスムーズに速度は上がっていく。それでもってとても静かなのがいい。不確かな記憶になってしまうけれど、以前よりも振動、静寂性ともによくなった気がする。前モデルより800g軽くなったマフラーの影響なのだろうか?
ハンドリングは直進安定性がありつつ、コーナーではスムーズに車体を傾けられて、思い描いたとおりのラインを意識することなくトレースできる。ブレーキも効き具合がわかりやすくて扱いやすいし、ABSが作動する時もレバーにキックバックがあるので、状況が把握しやすい。サスペンションは道路工事などでできた凹凸も適度に吸収しつつ、ある程度スポティーな走りにも対応できる踏ん張りもあるから、ゆっくり走ってもペースを上げても楽しめるスクーターといえるだろう。
利便性においては、4.2インチTFTと3.2インチLCDが左右に並んだメーターの採用が大きい。スマートフォンとコネクトできるので、コネクトしてGarmin StreetCrossを利用すればメーターがナビゲーションになって、ハンドルまわりにスマートフォンを装着する必要がなくなるのだ。また、現行モデルから採用となった走行中でも無段階で高さ調整できる電動スクリーンも、かなり便利だ。シート下トランク、フロントボックスも十分な容量が確保されていて、トータルで見て、走行性能、利便性ともに高いレベルでまとめ上げられたビッグスクーターといえるだろう。
スクーターらしくない走りを存分に楽しめる1台!
今回試乗したXMAX250は、走りに重点を置いたスポーツスクーターであり、「MAX」シリーズの名にふさわしくスクーター離れしたスポーティな走りが魅力となっている。
私事ではあるが、以前よりスクーターはあまり得意ではない。NMAXのインプレ記事でも書いたように、スロットルレスポンスの鈍さや、MT車のような強いエンジンブレーキがないことで速度調整が難しいという印象があるからだ。
しかし実際にXMAXに乗ってみると、そのイメージは完全に覆された。5,000rpm付近から力強い加速を見せ、7,000rpm付近までスムーズに伸びていく。出だしは必要以上に急加速しないため、街中の低速走行でも扱いやすく、渋滞時の微妙な加減速も楽に行なえる。
また、ビッグスクーターでありがちなフロントまわりの柔さがなく、剛性感が高い。ブレーキも250ccスクーターとしては強力で、ABSが作動するような強い制動でも車体が不安定になることはなかった。
コーナリングでも滑らかに旋回し、右左折時の徐行でもフラつきが少ない。さらに片側1車線ほどの幅があればUターンも難しくなく、リヤブレーキとスロットルを併用すれば不意に駆動が抜けて不安定になることもない。
ライディングポジションは、前後に長いシートとフロアボードの広さにより自由度が高く、アップライトからスポーティな前傾姿勢まで好みに合わせて構えることができる。
ただしシートは幅広で、795mmというシート高も相まって、身長155cmの私ではシートの一番前まで腰をずらさないと両足は接地しない。停止時は片足のツマ先で支える形が基本となる。とはいえ前後方向の調整幅が大きいのは大きなメリットだ。
総じてXMAX250は、ビッグスクーターの快適性を残しつつ、スポーティな走行性能と高い剛性感を持つモデルである。足つき性は小柄な女性の中には厳しいと感じる人がいるかもしれないが、走り出してしまえば軽快なハンドリングと安定性で扱いやすさを感じるだろう。ローダウンシートや厚底ブーツを併用すれば、小柄な女性でもスポーツライディングを存分に楽しめる一台ではないだろうか。
左ハンドルスイッチボックスのスイッチで、走行中でもハンドルから手を離すことなく無段階で100㎜の高さ調整のできる電動スクリーン。位置によってライダーに当たる走行風はかなり変わる。
メーターを見ながら左ハンドルスイッチボックスのボタンで、すべてのことがセッティングできる。直感的に操作できるようになっているので、いちいち細かなことを覚える必要はない。
ライダー:腰当てでしっかりと2分できているうえ、タンデマー用の座面が十分確保されているため、ライダーはタンデマーからの干渉はなく、快適に運転ができる。
タンデマー:シートの座面は十分でお尻が落ちることもなし。グラブバーも備え付けられているため加減速で動いてしまうこともなく、長距離でも疲労感は少なそう。
POSITION & FOOTHOLD
腰当てまで深々と座っても両足の土踏まず前までが接地するので車体を支えるのに不安はない。乗車時の足の置き場は前方に投げ出すスタイルと真下に下ろす2パターンでいずれも窮屈な印象はない。ハンドルまでの距離も腰当てまで深く座ってちょうどいい。身長170cm/体重70kg
シートの幅が広いため、両足を地面に接地させるにはシートの最前部にお尻を乗せる必要がある。試しにシート後方にお尻を乗せた状態で撮影してみたが、両足は接地しない。ただ、車体の重さをあまり感じないため、片足立ちの状態で支えることも十分に可能。身長155㎝/体重46㎏
●全長×全幅×全高:2,180×795×1,410(㎜)●軸間距離:1,540㎜●シート高:795㎜●車両重量:183kg●エンジン種類・排気量:水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒・249㎤●最高出力:17kW(23ps)/7,000rpm●最大トルク:24N・m(2.4kgf・m)/5,500rpm●燃料タンク容量:13L●燃費(WMTCモード):33.5km/L●タイヤサイズ:F=120/70-15・R=140/70-14●価格:73万7,000円
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