笑ってはいけない話

最新号のスタッフコラム「最近笑ったこと」で、「笑ってはいけない状況こそ、むしろ笑ってしまう」的な話を書いたのだが、笑ってはいけない状況というのは、本誌に書いた意外にもけっこうあるので今回はその続きを書いてみようかと思う。

そもそも笑ってはいけない状況というのは、本誌に書いたようなお説教中(もちろんされる側)とか、神聖な場であるとか、「笑うとは不謹慎なり」と思われてしまうような場面が多い。

でも不謹慎でなくても笑ってはいけない状況というのも、日常生活には数多く潜んでいて、気を付けないと他人のヒンシュクや、あるいは怒りを買ってしまうこともあるので注意が必要である。

ボクが小学生のころ、理髪店のテレビでやっていたのが「笑点」だったときがあった。まだ髪を切っている間は、つまらない漫才だったのでよかったのだが、顔そりが始まったと同時に「大喜利」になり、子どもながらに「刃物を扱っているから笑ったら危ない」と考えたが最後、考えれば考えるほど顔がニヤけてしまい、必死に笑いをこらえた記憶がある。しかもそういう状況に限って、無駄に面白く感じたりするわけで、それ以来テレビを流す理髪店にはあまり近づかないようにしている次第である。

あと笑ってはいけない状況でつらかったのは、サッカー部の夏合宿だった。高校時代の話だが、合宿中は「笑う=まじめにやってない」とみなされてしまうので、とにかく笑いをこらえるのに必死だった記憶がある。当然まじめにやってないことが発覚すれば(いや、まじめにやってるんだけどね…)、連帯責任として全員の練習が増えるという恐ろしいスパイラルが待っているので、とにかくコレがつらいのだ。でも高校生ともなると抑圧されればされるほど反発したくなるお年ごろなので、練習中の下ネタなんて日常茶飯事。他人を落とし入れるために、お互いに笑わせようと必死で、結果恐ろしく練習が長くなって、顧問をあきれさせたことも多々あったりしたわけだ。

それと最近の話で言えば満員電車というのも、笑ってしまうとかなり厳しい状況である。まぁ実際は笑ってもいいと思うのだが、やっぱり他人の目があるし、正直一人でニヤニヤしているとかなり怪しい。だがそんなときに限って、例えばすぐ前のオジさんの首筋に毛の生えたホクロを見つけたり、あるいはオバさんの頭の上になぜか輪ゴムが乗っかっているのを発見してしまったりするなど、ついついニヤけてしまう場面に遭遇するのである。でも身動きが取れない状況では、視線をそらすのにも限度があるため、とにかく別のことを考えてニヤけを止めるわけであるが、そんな状況はある日突然、不意を突いてやってくるので対処のしようがない。実は意外と危険なのが満員電車なのである。

そんなわけで日常生活には笑いをこらえないといけない場面はこのほかにも多数存在するが、そんな状況になればなるほど笑えてきてしまう現象を、心理学用語で「心理的リアクタンス(心理的反発)」と言うらしい。本来「笑う」という行為は、自律神経を活性化させ若々しさを保つのに一定の効果があるなど、人間だけが行うことのできるそれはそれは崇高な行為である。他人の目なんて気にせずに大声で笑うことができるのは、実は幸せなことなのだと、このコラムを書きながらしみじみ思ったしだいである。まぁ人に対する気遣いも同じくらい大事だけどね。

C.ARAi

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C.ARAi

Web制作班所属。何事にもしっかりしていたい気持ちはあるものの、やってることはかなり中途半端。基本的に運命にはあまり逆らわず生きていくタイプで、いきあたりばったりが自分にはよく合っていると思っている。悪く言えば計画能力ゼロ。モットーは「来るもの拒まず、去るもの追わず」。

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