ほんの少し時をさかのぼれば、驚くほどのラインナップで盛り上がりをみせていた50㏄クラス。自転車から原付にステップアップするのは大人への階段を数段飛びで一気に駆け上がるようなワクワク感があった。高校生キッズあこがれの乗り物であり、仕事の移動手段であり、主婦の買い物の足でもある。そう、老いも若きもみんな大好き50㏄! そんな懐かしのカテゴリーに存在したモデルたちを、いま一度振り返ってみよう。Love Fifty!!
テールカウルを装備したエッジィなフィフティ
スズキのフィフティというと、現在はアドレスやレッツシリーズなどのいわゆるスクータータイプのみをラインナップしているが、過去にはビジネスバイクからレジャーバイク、スポーツタイプまでバラエティに富んだモデルが存在していた。そんななかで、現状最後発の市販車マニュアルフィフティとして2005年に登場したのがGS50だ。
その特徴は、小さいながらも本格的な“ネイキッド”スタイルであること。ガソリンタンクやテールカウルなどに大型バイクのデザイン要素が取り入れられており、ミッション方式には4速リターンを採用。タンクは両足で挟み込むような位置にあり、ニーグリップが可能だ。ホンダのモンキーやエイプなども似たような車体構成だが、GS50はよりエッジの効いた攻撃的なスタイルが特徴的だった。また95㎞/ℓという好燃費に8ℓのタンク容量も相まって航続距離がかなり長いことも注目のポイントだ。
新開発の高出力エンジンを搭載し、スポーティで軽快な走りは積極的にバイクを楽しめる。そんなGS50をスズキは“大型バイクへステップアップするための入門車”として位置づけていた。00年代当時の国産50㏄ラインナップの中では異彩を放つ、個性的なコンセプトを持ったフィフティといえるだろう。
メーターは一般的なミドルクラスのバイクなどと同様、ヘッドライトとは別体式になっている。これ以上ないくらいシンプルなつくりで、見やすさにおいても問題ない
ビジネスバイクモデル・バーディ50由来の新開発エンジンを採用し、最高出力は5.0psと、4サイクル50㏄としてはなかなかハイパワー。スタート方式はキックのみだ
太く、グッとカチ上げられたスタイルが迫力のサイレンサー。つや消しブラックペイントのマットな質感もシブい。これもまた大型バイクをイメージした装備なのだとか
フロントブレーキがディスクブレーキではなくドラム式なのはやや見劣りする部分だが、制動力において不足はないため、使用上の問題点にはならないだろう
50㏄ながらミッションには4速リターンを採用。積極的にエンジンブレーキを使ったり、またギヤチェンジの楽しさも存分に味わえる
ネイキッドイメージのバイクということは、やはりリヤショックは2本でありたいのだ。細かく巻かれたスプリングがルックス上のアクセントにもなっている
SUZUKI GS50の主要スペック
- 全長×全幅×全高
- 1,730×685×930(㎜)
- 軸間距離
- 1,185㎜
- シート高
- 690㎜
- 乾燥重量
- 69㎏
- エンジン型式・排気量
- 空冷4ストロークOHC2バルブ単気筒・49㎤
- 最高出力
- 3.7kW(5ps)/8,500rpm
- 最大トルク
- 4.3N・m(0.44kgf・m)/7,000rpm
- タンク容量
- 8ℓ
- 燃費(30km/h低地走行テスト値)
- 95㎞/ℓ
- タイヤサイズ
- F=70/90-14・R=80/90-14
- 発売当時価格
- 20万8,950円
スズキの個性派フィフティ一挙振り返り!
GS50を見て“スズキってこんなバイク出してたんだ!”と思った人も多いはず。ここでは80年代後半以降にリリースされたスズキの個性派フィフティをまとめて振り返ってみよう。
’86 GAG(ギャグ)
GPレーサーのスタイルを50㏄サイズでモデル化してしまった、その名もギャグ。空冷4ストロークエンジン搭載のファンバイクだったが、フロントはディスクブレーキ採用と真面目な一面も。サイドのロゴ“SACS”は、油冷エンジン用冷却システムの略ではなく、“SUZUKI ADVANCED COMICAL SYSTEM”
’89 WOLF50
当時ラインナップしていた250㏄モデル・WOLF(ウルフ)の姉妹モデルとして1989年に登場。中身は82年リリースのハーフカウルモデル・RG50Γのネイキッドバージョンで、ツインチューブフレームのように見えるのは角型パイプフレームにカバーパーツをかぶせている
’93 PV50
1979年に発売したレジャーバイク・エポの復刻版としてリリースされたPV50。ミニマムな車体に8インチの小径ホイール、厚手のシートやアップマフラーなど、ホンダ・モンキーと共通点は多いが、空冷2ストロークエンジンにマニュアル5段ミッションを搭載。操る楽しさを味わえた
’96 コレダスポーツ50
ビジネスバイク・K50をベースとしたレトロネイキッドモデル。コレダのネーミングは、スズキ初の本格的完成車(自転車用補助エンジンではなく、4ストロークOHV単気筒エンジンを搭載)“コレダCO”から続く伝統的な名前を復活させた。スクランブラータイプも同時リリースされていた
’97 ストリートマジック
若者をターゲットに、コンセプトは“速い、カンタン、カッコいい”。オートマチックのスクーターユニットをロードスポーツ並みの高剛性ツインチューブフレームにドッキング。見た目はネイキッドだけど中身はスクーター。オフロード仕様のストリートマジックⅡも同時ラインナップ。“オレ、マジ スト、マジ”のキャッチコピーでTOKIO(当時)の長瀬智也を起用したCMを覚えている人も多いハズ
’03 チョイノリ
ちょっとそこまでの近距離移動を目的とし、機能と構造を極力簡略化したことで5万9,800円という脅威的な販売価格を実現したスクーター。リヤサスペンションはなくキックスタートのみ、燃料計もなし。のちに外観に変更を加えたチョイノリSSが登場、またセル付きが追加され、さらにウインカーの位置をハンドル部に変更したチョイノリⅡも登場。ちなみにホンダは02年に9万4,800円でトゥデイをリリース。00年当時海外製の安価なスクーターが輸入され始めたことに対抗したという時代背景がある
※本記事はNo.38(2005年5月24日発売)に掲載された当時の内容を再編しています