ぶら下がりの憂鬱

ちょっと古い話で恐縮だが、年末の話。休みを使って1年間溜めていた日曜大工仕事片付けた。一番多い作業は壁の穴明け(笑)。なんせ我が家はコンクリート造りの長屋みたいなもんでお隣と壁を共有しているから、壁にドリルを突き立てるとご近所迷惑著しい。だから「いつかやろう…」なんて思っているうちに、“壁に穴開け案件”が家の中に少しずつ溜っていくのだ。

今回、片付けた穴開け案件は、壁かけテレビの設置、コートかけ取り付け、収納スペース増設などなど。だが一番の目玉はクライミングホールドの取り付けだ。これはロッククライミング練習用の疑似岩みたいなもんだけど、それを壁に固定して、ぶら下がったり懸垂したりして遊ぶ(?)という、興味のない人にとってはまったく理解不能な物体である。ただ我が家での、こいつの呼び名はぶら下がり健康器。最近ひどくなってる肩こり解消のための、ぶらさがり健康器を導入したい!と考えたってワケ。

さて壁がつながっているお隣さんに「ちょっといくつか壁に穴開けますんでバタバタしますが、スイマセン」と、仁義を切って作業を開始。大小あわせて20本ほどの穴を開ける。どこが“いくつか”だよって感じだが、穴の場所とサイズをあらかじめ決めておいて、穴だけ一気に開けていく。ただやっぱりコンクリートへの穴を開けって、どうも腰が重いんだよね。なんせ家の壁は換えがきかないので失敗できないし、そもそもやかましい。作業を始めてみると、ドリル代をケチったために、刃の持ちが異様に悪く作業は難航。結局、ドリルの刃を買いなおしたりして、足かけ2日かかってしまった。

そんなこんなで完成したぶら下がり健康器だが、効果は抜群。締め切り前にデスクワークが増えると肩甲骨まわりがバリバリに凝るクセがついてしまい、整体に通うこともあったのだがそれがずいぶんとラクになった。ずっと銭湯にあるぶら下がり健康器を「ぶら下がるだけの健康法って…?」なんて小ばかにしていたことをあやまりたいぐらいだ。

ただ導入から1ヶ月、この我が家のぶら下がり健康器にこまった問題が露呈しだした。さすがクライミング練習用の疑似岩だけのことがある、適度な負担がいいトレーニングにもなるのだろう。ぶら下がったり、懸垂したりしてたら、肩まわりが大きくなってなんだか服がキツく感じるようになってしまった。前腕も握りこぶしを作るとピンと張る…。これ以上は、いよいよ着れなくなる服が出てきそうなのだ。でも、ぶら下がり健康法はやめたくないんだよなぁ…。というわけで、昼下がりならぬ風呂上がり、あれこれと悩みながら壁にぶら下がる僕がいる。

やたぐわぁ

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やたぐわぁ

本名/谷田貝 洋暁。「なるようになるさ」と万事、右から左へと受け流し、悠々自適、お気楽な人生を願うも、世の中はそう甘くない。実際は来る者は拒めず、去る者は追えずの消極的野心家。何事にも楽しみを見いだせるのがウリ(長所なのか? コレ)だが、そのわりに慌てていることが多い。自分自身が怒ることに一番嫌悪感を感じ、人生の大半を笑って過ごすことに成功している、迷える本誌編集長の44歳。

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