理屈じゃないのよレンズは…

久しぶりに一眼レフカメラのレンズを買った。…のだが、ナゼいまさらそんなものが欲しくなって探したのか? 自分でよくわからない買い物だったのだ(笑)。…とはいってもものすごい高い買い物をしたワケではない。買ったのは中古で安くなったレンズ。今はもう販売していないコンタックスというメーカーの単焦点レンズだ。

 

コンタックスのT※テッサー45㎜。数ヶ月前に買ったんだけど、なんで今さらこのレンズが欲しくなったのか? その理由がわからなかったんだよね〜

 

20年前写真業界誌の仕事をしていたころ、会社にころがっていたツァイス・レンズのボケ味の美しさにハマって、京セラのコンタックスを買ったのがそもそもカメラをやりだした理由だった。だけど時代はそこから一気にデジタルへ。今の仕事でフィルムカメラを使ったのはもう10数年以上も前のこと。確か姉妹誌カスタムピープルのカスタムマシンの車両撮影が最後だったかな…。当時、編集部員の最初の仕事といえば、“ポジの切り出し”と相場が決まっていたけど、いまの編集スタッフはポジフィルムの存在なんて知らないだろう。そういやヤス子が、どこかからフィルムカメラを手に入れたのはいいけど、フィルムの装填の仕方がわからず泣きついてきたことがあったっけ…。

 

それはさておきフィルムカメラ。それでも数年前に、現在仕事で使っているキャノンのデジタルカメラのボディに、この骨董レンズが取り付けられるアダプターがあると知って使ってみたのだが、扱いがけっこう難しい。確かにコンタックスならではのボケ味も絞り効果もある程度は出るんだけど、どうもピントが微妙にずれる。まぁ、もともとこのメーカーのレンズは手動のマニュアルフォーカスなので、ファインダーをのぞいた見た目で合わせるしかないのだが、視度調整しても、なにしても、なんだかちょっとだけピンがずれる。レンズによって出る、出ない。前ピン、後ろピンが変わるから、変換アダプターそのものの精度がそんなモノなのだろうけど、最近はそんなピント補正の面倒さから、やっぱり仕事では使わなくなってしまった。

 

…にもかかわらず買っちゃったんだよね今度の新しいレンズ。自分でも今更なんでこのレンズをいまさら買ったのかがイマイチわからない。参考までに書いておくと、コンタックスのTスターレンズ群のなかではものすごくレンズ構成が単純なテッサーという種類の45㎜単焦点。このレンジの焦点距離のレンズはすでに持ってはいるのだが、光量を稼ぐために大きく分厚いレンズを使うプラナーシリ-ズよりも、半分以下の大きさ、軽さというのがとにかく持ち歩きやすいレンズがこのテッサー45㎜なのだ。たしかに、20年前にも一時期欲しくなったことがあったにはあったのだが…。

 

面倒くさがらず、ちっとは一眼レフ持ち歩け、ちゃんと写真を撮れっていう、自分への警鐘なんだろう…、きっと(笑)

 

最近、ウエアブルカメラのゴープロも始めてしまって、とにかく機材が重いことが許せなくなっている。そもそもプライベートでは一眼レフ持ち歩く必要もないんじゃない? なんて思ったりもしているのだが、うーむ、なぜ買ったんだこのレンズ。こいつなら仕事の機材とは別に「趣味のレンズも一本持って歩くか!」という気分にもなるということか?  確かに、携帯電話やゴープロのパンフォーカスな絵は、悪くはないけど最近、食傷気味。絞りでボケの効いた写真を僕の体が欲しているのだろうか? なぜ買ったのかを疑問に思いながらも、仕事の機材に忍ばせて持ち歩くことにしたこの数ヶ月。なんだか最近になって買った理由がわかってきた(自分のことなんだけどさ…)。うまく説明できないのだが、やっぱり携帯電話のカメラやウエラブルカメラを常用するうちに、「やっぱり写真を撮るなら絞りをいじりたくね? 絞りでボケをつくりたくね?」と僕の深層心理は、写真に対して襟を正してみることにしたようなのだ。久々に西洋美術館で油絵をみたり、沢田教一写真展に行ったりしたら、なんだかレンズを買い足した理由がわかった気がした。

 

自分自身の行動すべてに理由をつけて生きているワケではないが、ここまで“なんでだろ?”な行動はちょっとなかっただけに、その理由がわかってちょっとスッキリである。

やたぐわぁ

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やたぐわぁ

本名/谷田貝 洋暁。「なるようになるさ」と万事、右から左へと受け流し、悠々自適、お気楽な人生を願うも、世の中はそう甘くない。実際は来る者は拒めず、去る者は追えずの消極的野心家。何事にも楽しみを見いだせるのがウリ(長所なのか? コレ)だが、そのわりに慌てていることが多い。自分自身が怒ることに一番嫌悪感を感じ、人生の大半を笑って過ごすことに成功している、迷える本誌編集長の44歳。

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