30年以上におよぶGSX-R750の歴史はこの1985年モデルを皮切りに始まる。750㏄の油冷エンジンに前後18インチホイールを採用した車体は、乾燥重量179㎏という当時の大型バイクとしては異例の軽さを誇るマシンだった。
この軽さを実現したのはアルミダブルクレードルフレームと油冷エンジンというパッケージングによるところが大きい。アルミダブルクレードルフレームは、市販車として世界で初めて1983年にスズキがRG250Γへ採用したフレーム形式だ。その技術をGSX-R750 にも応用することで、400㏄クラス並みのコンパクトな車体を実現した。
そこへ搭載されていた油冷エンジンは77PS/9,500rpmの最高出力を発揮。なお、油冷エンジンとは、冷却水などを必要としない軽量&シンプルな空冷エンジンの美点を残しつつ、エンジンオイルを利用することで冷却性能の低さを補おうというエンジン形式だ。具体的にはシリンダーヘッド部などにエンジンオイルを吹き付けるためのノズルが取り付けられており、そこからオイルが噴射されることでエンジンが冷却されるという仕組みとなる。
当然ながら、これほどまでのスペックを誇るマシンであればレースでも華々しい成績を残すこととなる。1985年から88年までは全日本ロードレース選手権のTT-F1クラス(4ストローク750cc以下、もしくは2ストローク500cc以下の市販車をベースにしたマシンで争われるクラス)で3年連続チャンピオンを獲得。さらに、1987年には世界耐久選手権・TTF1世界選手権・AMAスーパーバイクシリーズでもタイトルを獲得するなどしている。
また、1988年には前後ホイールの17インチ化やエンジン・フレームのアップデートにより、フルモデルチェンジをはたす。その後、1990年に倒立フロントフォークの採用などの大規模な変更を受けているが、油冷エンジンそのものは1991年モデルまで継続された。
そして、1992年にはレースシーンでライバルたちに対抗するべく、エンジンの水冷化が行なわれることとなる。
SPECIFICATIONS
| 車名(通称名) | GSX-R750(1988年) | |
|---|---|---|
| 全長×全幅×全高 | 2,055×730×1,100(mm) | |
| 軸間距離 | 1,400mm | |
| 最低地上高 | 120mm | |
| シート高 | 785mm | |
| 車両重量 | 195kg(乾燥重量) | |
| 燃料消費率 | WMTCモード値 -km/ℓ | |
| 定地燃費値 38km/ℓ | ||
| エンジン種類 | 油冷4ストローク DOHC 4バルブ 並列4気筒 | |
| 総排気量 | 748cm3 | |
| 内径×行程/圧縮比 | 73.0×44.7(mm)/10.9 | |
| 最高出力 | 56.6kW(77PS)/9,500rpm | |
| 最大トルク | 66.6N・m(6.8kgf・m)/7,000rpm | |
| 燃料タンク容量 | 21ℓ | |
| エンジンオイル容量 | 5.8ℓ | |
| 潤滑方式 | ウェットサンプ | |
| 燃料供給方式 | キャブレター | |
| 始動方式 | セルフ式 | |
| 点火方式 | フルトランジスタ | |
| クラッチ形式 | 湿式多板 | |
| トランスミッション形式 | 常時噛合式6段 | |
| ギヤ・レシオ | 1速 | 2.769 |
| 2速 | 2.062 | |
| 3速 | 1.647 | |
| 4速 | 1.400 | |
| 5速 | 1.227 | |
| 6速 | 1.095 | |
| 一次減速比 | 2.800 | |
| キャスター/トレール | 24°50’/99mm | |
| タイヤサイズ | 前 | 120/70-17 |
| 後 | 160/60-17 | |
| ブレーキ形式 | 前 | Φ310㎜ダブルディスク&ニッシン製対向4ポットキャリパー |
| 後 | Φ240㎜シングルディスク&片押しキャリパー | |
| 懸架方式 | 前 | インナーチューブ径Φ43㎜ ショーワ製正立フロントフォーク |
| 後 | スイングアーム,シングルショック | |
| フレーム形式 | ダブルクレードルフレーム | |
| 乗車定員(人) | 2 | |
| メーカー希望小売価格 | 84万9,000円 | |
※メーカー希望小売価格は当時価格




