あらゆる道を使って遠出するためにデザインされたBMWのGSシリーズ。その歴史は40年以上におよび、その間、より快適な冒険ツーリングを楽しめるよう進化を続けている。その歴史を振り返りつつ、その魅力を探っていく
BMWのGSシリーズは、同社を代表するアドベンチャーツアラーで、あらゆる道を自在に走れる万能ツーリングバイクとして知られている。現在は、大排気量のR1300GSシリーズ(水冷水平対向2気筒)とR12 G/S(空冷水平対向2気筒)、中排気量のF900/800GSシリーズ(水冷並列2気筒)、そして小排気量のG310GSシリーズ(水冷単気筒)という4ラインで構成されている。
GS誕生の背景
1980年に登場した初代R80 G/Sが、GSシリーズの原点。『GS』はドイツ語の『Gelände Sport(ゲレンデ・シュポルト=オフロード・スポーツ)』の略で、後に『オンロードも走る』という意味を加えた『Gelände Straße(ゲレンデ・シュトラッセ)』として製品化された。オンもオフも快適にこなす「どんな道でも楽しめる」ツーリングバイクというコンセプトが確立した。
798㏄空冷水平対向2気筒エンジン搭載し、軽量な186㎏の車体と低重心によるすぐれた扱いやすさを持ち、フロントのディスクブレーキも相まってオン/オフの両面で走りを楽しめた。また高輝度H4ヘッドライトや考えられたセンタースタンドなども、旅をするのに有利だった。走行性能だけでなく、信頼性の高さや実用面もGS人気の礎を築いた。
パリ〜ダカールラリーでの活躍
R80 G/Sは1980年代初頭のパリ〜ダカールラリーで圧倒的な強さを発揮し、1981年・1983年・1984年・1985年に優勝。この成功を記念して『Paris-Dakar』仕様などの特別モデルが登場し、後の『Adventure』シリーズの源流となった。BMWは「長距離を速く、快適に、そして壊れずに走る」性能を実証し、アドベンチャーバイクというジャンルを確立した。
現代への継承
以降もGSシリーズは改良と進化を重ね、現在のR1300GSまでその思想を継承。「どんな道でも走れる旅の相棒」というコンセプトは、今なおBMW・GSシリーズの根幹として生き続けている。今回、現行モデルの特徴を、数多くのGSシリーズに乗ってきた松井 勉さんに解説したもらった。
R1300GS SPORT
R1300GS SPORT=300万2,000〜329万9,000円
R1300GS=285万円
水冷水平対向エンジンを搭載したプレミアムクラスアドベンチャーツアラーの中で、さらにオフロード走行を楽しもうというユーザーに向けたのがこのR1300GSSPORTです。標準モデルから20㎜伸ばし前210㎜・後220㎜のストロークを持つサスペンションを装備、オフロード用に設計された鍛造アルミホイール、ブロックタイヤが標準装備。ステップ、ペダル類、ハンドルバーライザーなどスタンディングポジションで走行するのに相応しい装備も持ちます。「1,300㏄・250㎏越えの車体でオフロードなんて走れるの?」と思うかもしれません。それがオフ好きもうなるほど楽しませてくれるのです。どこへでも走れる快適さ、峠道もダートも楽しめる行動力。ツーリングから日常、スポーツ走行までこなすバイクです。
R1300GS TOURING ASA
R1300GS TOURING ASA=336万2,000〜358万7,000円
R1300GS TOURING=325万2,000〜347万7,000円
R1300GS TOURINGモデルは前後にミリ波レーダーを装備し追従型クルーズコントロール・前方衝突軽減ブレーキ・ブラインドスポットモニター・ヒルスタートアシストほか、車高自動調整も装備し、足つき性の心配も低減。今の市販二輪車では最上級の運転支援装備を持つGSです。さらにASA(オートメイテッド・シフト・アシスタント)と銘打ったクラッチ操作やシフト操作をお任せできるシステムを搭載した6速トランスミッションとの組合せで、イージーなライディングも可能に。市街地・坂道発進・タンデムでもアクセルをあければスムーズに動き出すのは感動的。今回のオフロード試乗では滑りやすい路面コンディションで、緊張感なく走りだせます。クラッチ操作がないことで他のコトに集中が可能に。最新大好きな人に超オススメです。
R1300GS ADVENTURE
ツーリング=333万5,000〜358万7,000円
ツーリングASA=343万2,000〜368万4,000円
スポーツ=350万円
SUV的ゴツさが大好物という人ならこれかも。GSアドベンチャーは容量30Lの燃料タンク、大型のウインドシールド、快適性をあげたシート、専用ラゲッジシステムをオプションで用意するなど長距離・長期間・大容量の荷物を運ぶ冒険ツーリングまでカバーする究極のGS。実際、ガソリンスタンドの少ない場所を走り続けても心配が要らない航続距離は19LタンクのGSでは太刀打ちできない安心感。270㎏ある重量もさることながら、水平対向エンジンがもたらす重心の低さやテレレバーサスペンションの効果もあり運動性が高いのが特徴。オフロードも想像以上にガンガン行けるタイプなので、取りまわしの体力に自信があれば絶対体験すべき一台。ASAモデルもラインナップされています。
F900GS
204万3,000〜210万2,000円
Rシリーズが水平対向エンジン+シャフトドライブという1923年にBMWが初めて販売した市販バイク『R32』から連綿と受け継がれるドライブトレーンを採用するのに対し、F900GSはより普遍的な並列2気筒、チェーンドライブを採用するGS。フロントに21インチ・リヤに18インチと走破性を重視したタイヤサイズを選び、前後に伸び側・圧側・スプリング初期荷重を調整できるフルアジャスタブルのサスペンションを装備。オフロード走破性を意識したパッケージが魅力。ゲレンデ/シュトラッセ、オフロードと舗装路を意味するドイツ語からGSと名付けたモデルだけに舗装路の快適性や走りも納得。今回のようなコースでも楽しくなるほどパワフル。足つき性さえクリアすればビッグオフ好きにはたまらないモデルだ。
F800GS
138万5,000〜161万1,000円
F900GSとF800GSは、スズキでいえばVストロム800DEと800の違いと同じ。方やF900GSはオフロード走破性を強く意識したパッケージなのに対しF800GSは、フロント19インチ+リヤ17インチのタイヤを履き、前後のサスペンションストロークは170㎜とロワリング。今回試乗したモデルはさらに足つき性を意識したツーリングローシート仕様。足つき性では文句なし1位のGS。スタンダードモデルに加え、キーレス・ナビホルダー・クルーズコントロール・セミアクティブサスを装備する上級版で、その価格は152万7000円。荷物やパッセンジャーを乗せてもスイッチひとつで最適なサスペンションへと変化するのが特徴。900と同排気量のエンジンながらマイルドな日常域ベストにチューニングされた出力特性を持ち、乗れば誰でも最良のGSと思うフレンドリーさがウリ。
G310GS
74万〜75万3,000円
312㏄水冷DOHC単気筒エンジンを搭載したGSシリーズ最小排気量のモデル。74万円からという価格もうれしいところ。燃料はレギュラーガス対応。エンジンはスムーズで250㏄クラスでは望めないパワーとトルクが魅力。835㎜のシート高はCRF250ラリーと同等。全体にマッシブなサイズ感と175㎏という重量ながらエンジンのシリンダーを後傾させ重心位置に近づける無二のレイアウトで、重量物が車体中央に集中し乗りやすいのも魅力です。ツーリングはもちろん市街地やオフロード、どこでも才能を楽しめる一台。過去の体験ではツーリング燃費が45㎞/L越えたこともあります。オフロードもスイスイで走れ、GSシリーズのオールマイティさを手軽に味わえるモデルでした。
R12 G/S SPORT
R12 G/S SPORT=254万5,000〜269万2,000円
R12 G/S=245万1,000〜267万4,000円
G/Sの名は1980年に登場したGSの初号機、R80G/Sに採用された「スラッシュ」が入るネーミング。2025年にリリースされた新機種で、空冷水平対向2気筒エンジンを搭載。最新水冷水平対向2気筒エンジンとは異なり後方吸気、前方排気を採用。シンプルで上質なデザインや鋼管フレームが特徴。以前ラインナップされたスクランブラーモデルはロードバイクベースだったが、R12 G/Sはスタンダードがフロント21インチ+リヤ17インチホイールを採用。今回試乗したモデルはオフロード走破性を高めたGS SPORT仕様。フロント21インチ+リヤ18インチホイールで、エンジン下部と地面の間に25㎝もの空間を確保。不整地でも亀の子になりにくいレイアウトが特徴。この足長スタイルを好むライダー、GSよりも近距離のツーリングが好き、というライダーに向けた一台で、ストリートやオーセンティックなファッションにもマッチングのいい一台だ。






























