乾電池でセルは回る?…らしい!

最新号(No.102号)を読んでくれた、読者の上田さんから、P45の「乾電池でセルは回る?」という実験記事についてこんなメールが届きました。電気がニガテな私、やたぐわぁが行なった検証は見事惨敗という結果に終わりましたが、なんと乾電池でセルを回すための計算をしてくれた方がいたのです! ちょっと長いけどおもしろいので全文掲載!

実験では、乾電池8本を直列したパックを5セット用意。しかし、ニュートラルランプは点くもののセルスターターはカチリと音がするだけで回らなかった

以下投稿文

「タンデムスタイル、隔月の時から読ませていただいてます。「乾電池でセルは回るか」。毎度のおバカ企画が楽しみで購読しているようなものですが、今回もなかなか面白かったです。あまり面白いので、ちょっと考えてみました。まず基本的なことはご存知でしょうが、電気に弱い人へ少し説明させてください。面倒なら後半が本題です。

 

電圧と電流が別のものであることの理解が必要です。例えは良くないのですが、川を例にしてみます。川は曲がることなく真っ直ぐ、流れてくる距離は同じだと思ってください。この時の、流れる高低差が電圧に相当します。高い電圧は高い場所から流れる川を、低い電圧は高低差が小さい低い場所から流れる川をあらわします。実際は高低差ではなく川の流れの傾きである勾配なので、流れてくる距離を同じとします。距離が違うと高低差と関係なく勾配が変ってしまいますから。12Vの電圧は1.5Vの電圧より8倍高い場所から流れてくるわけです。

石臼で粉を挽く水車が川で回っているとしましょう。この時に、流れてくる高さが同じでも非常に小さい川なら水車は回りません。川が道路横の排水路の側溝のような小さなものでは、流れる水の勢いは同じはずですが多分水車は回せません。これは、川の高低差、流れの勢いの問題ではなく、流れてくる水の量が足らないからです。流しそうめんの水では石臼は挽けないということです。この水量に相当するのが電流ということになります。つまり、水車を回すのに流れる水の勢い、つまり電圧が十分でも、流れる水の量、電流が足らなければ仕事は出来ないということになります。もちろん、どんなに水量があっても、流れているかどうかわからないくらい緩やかな川では、やはり石臼の水車は回りません。ある程度の流れの勢いが必要です。水の勢い、水量、両者が適度にあって始めて水車は回ります。

電池の場合、同じ電圧のものでもそれぞれに安定して流せる電流に違いがあります。高低差は同じでも川を流れる水量が違うわけです。そして単三の乾電池は、その電流が小さいのです。超短時間でも流せる電流には限界があります。 そこで、いよいよ単三乾電池でセルを回すことを考えて見ます。もっとも、電気屋でも整備工でもないのため、正確な資料がないため、結構適当な推測です。セルは大量の電流を必要とします。車種にもよるのでしょうが、車では大体100アンペア程度流れるらしいです。もちろんアンペアというのが電流の数値ですが。要するにセルを回すのには12Vの電圧で100アンペアが必要なのです。電圧の確保、これは簡単です。単三乾電池は1.5Vなので8個直列につなげば12Vになります。川の例では、12mになるように1.5mを8倍の高さに上げてやって流れの勢いを増すことに相当します。

しかし、バッテリーが石臼の水車の回せる大きな流れの川だとすると、乾電池の流れは流しそうめんでしょうか。いくら、川の高低差をそろえて流れる勢いを同じにしても、流れる水量が圧倒的に足らないのです。水量を増やすためには、同じような流しそうめんの樋を川の流れになるくらい沢山つくる必要があります。これが並列につなぐということですね。単三乾電池はアルカリ電池なら短時間なら1アンペアていどの比較的安定した電流を流せるらしいです。流しそうめんの樋を100本用意する必要があります。

以上から考えて、単三乾電池を8本直列につないで12Vとしたパックを100個用意して並列につなげば、理論的にはセルは回せるはずです。単三乾電池800本です。考え始める前に想像していたより相当に多いです。ちょっと驚きました。実際には、これに数々の無視できない要因が加わります。有利な要因としては、小さなバイクではセルを回すのに必要な電流は車より相当少なくて済むはずだということです。具体的な数字は調べてませんが。また、使う乾電池はやはりメーカー品の方が、安定供給できる最大電流が大きいようです。必要本数は何割も減らせる可能性があります。また、マンガン電池よりアルカリ電池が当然電流は多いです。アルカリ電池では最大電流が3アンペア程度も出せるものもあるようです。また、電池は基本的に大きなものほど大きな電流を流せるので、単三でなく単一電池が使えればもっと良いでしょう。しかし、大きな電池を使っても良いのなら乾電池でなくてもよいことになって、何だか目的が変わってしまいますが。更に、バッテリーがあがりかけて弱くなっていてもセルはなんとか回るので、フルの状態の電圧と電流を供給しなくてもよいと思われます。これらのことを考えると、30アンペア程度の電流を供給できれば、弱ったバッテリーくらいは働きそうです。

特に根拠はないですが。逆に、不利になる要因としては、電圧の確保でしょうか。大量の電流を供給する場合、電池は電圧を保てません。1アンペアを何十秒か流すには多分1V近くまで電圧が低下すると思われます。また、必要以上に大きな電流が流れた瞬間にも電圧は急速に低下してしまいます。このあたりが川の流れと違うところです。川というより、貯水槽を全開で流してしまうイメージでしょうか。また、電流は電池内部も流れます。8個直列につないでいるので、高電流ほど内部抵抗で減衰してしまいますので、最大に流せる電流も乾電池一個の時より低下してしまいます。電圧低下を防ぐために、10本継いで15Vのパックにすると良いかも知れません。15V程度であれば、電圧がオーバーしてもセルが壊れることはないはずです。多分、セルを回すときにはオーバーはしませんが。結論として、250CCくらいのバイクなら、最低で、単三乾電池8個、12Vパックを30パック、乾電池で240個で何とかなるのではないかと思います。出来れば、乾電池10個を1パックとした15Vパックで30パックだともっと期待が持てる気がします。この場合は乾電池300個必要です。次回のチャレンジには是非参考にして下さい。ただ、300個の乾電池をどうするか。いっそのこと、読者プレゼントでどうでしょう。300人に当たるという。最後に、もしセルが回らなくても責任は取れません」

上田さんの計算によると、弱ったバッテリーのアシストに使う場合には、240本から300本。乾電池だけでセルスターターを回そうとすると800本もの乾電池が必要だとか

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なるほど、電流を水の流れに例えると、いくら勢い(電圧)があっても乾電池のチョロチョロ流しそうめん水では、石臼を回す水車(セルスターター)は回せない。もっと大きな流れ(電流)が必要だという訳ですね。しかも、その電流を作るには乾電池だけでセルを回すなら800本。弱ったバッテリーのアシストに使うなら240〜300個ぐらい必要だと…。うーん。これじゃ「バッテリーが出先で弱ったときに、ちょっと乾電池を調達してリカバリー」という当初の目的で使用するのは難しそうだなぁ。

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