INDIAN MOTORCYCLE SPORT CHIEF

INDIAN MOTORCYCLE SPORT CHIEF(2023年モデル)走行

“スポーツチーフ”は2021年に生まれ変わったチーフ・シリーズをベースに、トレンドのスタイルと高性能な足まわりを追加した新型車。米国テキサスで行なわれた試乗会で、その話題のモデルをテストした。

文:河野正士/写真:Garth Milan

大排気量の空冷ビッグツインでスポーツするのは格別の楽しさ

INDIAN MOTORCYCLE SPORT CHIEFのスタイリング

足の強化&アレンジでパフォーマンスをアップ

INDIAN MOTORCYCLE SPORT CHIEF(2023年モデル)

 

アメリカを中心としたクルーザー・カテゴリーは、今、巨大なマーケットに成長している。それは排気量1000〜1200㏄の“ミドルサイズクルーザー”。排気量2000㏄に迫るビッグエンジンと最新の電子制御技術を駆使して性能を高めた“ヘビーウェイトクルーザー”。そのヘビーウェイトをベースに大型フロントカウルや大型リヤケースを採用し、より積極的に新技術も取り入れ、性能も快適性もアップした“ヘビーウェイト・バガー”。さらにそのバガーをベースにより豪華な装備を追加し、さらなる快適性を追求した“ヘビーウェイト・ツアラー”と、四つのカテゴリーが存在する。

 

その中にあって、大排気量クルーザーのスタンダードと言えるヘビーウェイトクルーザー市場においてインディアン・モーターサイクル(以下=インディアン)がシェア拡大をねらって投入したのが、2021年にインディアン・ブランド100周年という節目にフルモデルチェンジして登場した“チーフ”シリーズだ。インディアンが、現在のポラリス・インダストリー傘下で再スタートを切った2011年に発表した空冷V型2気筒OHVエンジンであるサンダーストロークは、排気量を拡大しており、すでに排出ガス規制ユーロ5にも適応したサンダーストローク116へと進化していたのだ。そのエンジンを、あえて鉄パイプを組み合わせたシンプルかつクラシカルな手法で製作した新型フレームに搭載。インディアンのヘビーウェイトクルーザーにおけるスタンダードモデルとした。

 

チーフ・シリーズは“チーフ・ダークホース” “チーフ・ボバー” “スーパー・チーフ”と三つのモデルファミリーで形成されていた。それぞれ70〜80年代に流行したスポーツクルーザースタイル、60年代に流行ったボバースタイル、40年代に多くのバイカーたちによってカスタムされていたクラシカルなスタイルが踏襲されている。要するに、アメリカンモーターサイクルカルチャーが華開いた、各時代の流行のスタイルを体現しているのがチーフ・シリーズというわけだ。

 

そこに新たに加わったのが“スポーツ・チーフ”だ。チーフ・シリーズ共通のエンジン&フレームをベースに、高性能な前後サスペンションにフロントブレーキを採用。さらにはクォーターフェアリングと呼ぶフロントフォークマウントのカウルに、6インチライザーに幅の狭いモトスタイルハンドルバーを合わせ、さらにミッドペグを採用したことによってアグレッシブなライディングスタイルを作り上げている。これは“クラブスタイル”と呼ばれる、今、アメリカでもっとも人気のあるクルーザーのカスタムスタイルだ。

 

“スポーツ・チーフ”が採用した新しい前後サスペンションと、強化したフロントブレーキの効果は絶大だった。フロントのφ43㎜KYB製倒立フォークと、ブレンボ製4ポットキャリパー&φ320㎜のディスクローターは、インディアンのバガーモデル“チャレンジャー”に搭載されているアイテムと同型。それをスポーツ・チーフの車格やキャラクターに合わせてフロントフォークの長さや減衰力、ブレーキパッドやマスターシリンダーをアレンジしている。またリヤショックは、FOX製ツインショックを採用。他のチーフ・モデルに比べ約25㎜ストローク量が多く、高い減衰力を発揮。これらにより乗り心地は大幅に向上した。

 

しかし何よりの変化は、ストローク量を増やしたリヤショックの自由長が長くなったことにより、リヤの車高が上がったことだ。それによって車体姿勢が変化し、合わせてフロントフォークのオフセット量を変更。同時に変化するキャスター角やトレール量も吟味しながらフロントのアライメントを作り込んだ。その結果、スポーツ・チーフのハンドリングは、よりスポーティに変化していたのだ。

 

INDIAN MOTORCYCLE SPORT CHIEF(2023年モデル)走行

 

そのメリットを感じられるのはやはりワインディングだ。ほんの少しだけ、他のチーフ・モデルからバンク角が増えたとは言え、すぐに両サイドのステップを擦ってしまう。それでも剛性も減衰力も高い倒立フロントフォークとリヤショックのコンビネーションで、コーナーへのアプローチや車体の切り返しでの安定感が増し、車体の向き変えも自然。だからどんどんペースを上げていける。

 

意外だったのは、街中での使い勝手も向上していたことだ。スポーツ・チーフの前後サスペンションは、荒れた市街地の路面を軽くいなし、また暴力的なパワーも受け止める。ラフなアクセル操作でも、それに車体が反応してギクシャクしすぎることもない。6リッターV8なんて化け物のようなエンジンを積んだピックアップトラックがあふれる高速道路の短い加速区間からサッと合流したり、アップダウンが連続するワインディングではアクセル操作だけで他車との車間を詰めたりリードしたり。そんなアメリカンなシチュエーションにスポーツ・チーフはクールに対応する。

 

アメリカンスポーツは、個性的な進化を遂げている。日本のスポーツとは、カタチも味も違うが、実におもしろい。スポーツ・チーフに乗ってそれを感じることができた。

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CONTACT

問い合わせ先
ポラリス ジャパン
URL
https://www.indianmotorcycle.co.jp

※記事の内容はNo.252(2023年3月24日)発売当時のものになります

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