特集401〜850ccクラスの 魅力を徹底検証!
人気モデルインプレッション
215
※公開中の誌面内容はNo.215(2020年2月22日)発売当時のものになります
インプレッションの誌面を開くいつでも、 どこでも、 誰でも、イージーかつ楽しい乗り物
パラレルツインエンジンを搭載して2014年に登場し、2018年にマイナーチェンジしてからも人気が続くネイキッドスポーツ、ヤマハMT-07。魅力はスタイルやリーズナブルな価格以外にもある。それを詳しくレポートしよう。
写真:関野 温/文:濱矢文夫
MT-07 ABSのスタイリング
秘密はトータルバランスと見つけたり
低い回転数から車体はダダっと前に押し出される。それが右手の動きに間髪入れずついてくる。これが搭載するパラツインエンジンの魅力だ。歯切れよくグイグイ進むけれど、乗りにくさとか怖さはないのだ。蹴り出すようなトルクをハッキリと意識させる味付けで、加速するのが愉快だ。
2018年にマイナーチェンジして変わったこのモデルから、前後サスペンションに手が入った。速度を上げていくとやや落ち着きのなかった足から、ダンピングがほどよく効いて、より路面にタイヤを押し付ける追従性。初期型は場面によってフロント120、リア180という太さのタイヤを使えていないドタバタ感があったけれど、それが改善した。あまり運転経験を積んでいない人には発進付近からのトルクに最初はちょっと驚くかも。それでも手に余るような動きを見せず、神経質になることはほとんどない。気がついたらすごいスピードが出ている系ではなく、自分の意識とスピードが比例している系なので、乗ってすぐになじんで気持ちよく走れるだろう。
車両を傍らから眺めると、400㏄以下には見えない肉感的なボリュームがある。とくに燃料タンクカバー部分は高さがあって立派だ。またがると、遠くないハンドルで、細いボディが体にフィットし、足を着いて支えながら車体を左右にゆすっても軽々としている。見た目は大きな排気量に乗っているようで、じつは運転しているライダーにとってはコンパクトで乗りやすいというレトリック。80万円を切るリーズナブルと断言できる価格の中なかで、見せ方を工夫して堂々と見せながらスタイリッシュに仕上げ、多くの人が乗りやすい印象を持つインターフェイス。カッコいい大きなバイクを巧みに操っているように見られるわけだ。
コーナーリングに難しいところはない。顔を向けたほうに自然に曲がっていくイージーさで、自分の手足になったみたいなフィーリング。ちょっと前傾姿勢になるアップライトなポジションは、太モモで車体を支えやすいタンクカバーの形状もあり、腕に力が入りにくいのがいい。コーナーに入るときはスーッと車体が倒れはじめ、ステアリングが自然に入ってそこからすぐに曲がり始める。以前のモデルよりコーナー進入から旋回して立ち上がるまでが安定した滑らかさが増した。誰でも容易にコーナーリングができると思う。ブレーキの効きも必要十分だ。
サスペンションがレベルアップしたことで、ビギナーだけでなく、ある程度乗れるようになったスポーツライディング好きにもメリットが大きい。コーナーリングスピードを高めて曲がる時の腰砕け感が小さくなって、道路が荒れていたりギャップがあったりしてもいなして、耐えきれずに外に膨らんだりしにくい。エンジン特性のおかげもあって、立ち上がりに向けて早めに加速を始めても、薄氷を踏むようなことはなくスムーズに前に出ていく。タイトなコーナーが連続するところでもフットワークは軽く、ムリせずに思ったようなコーナリングをこなせる。
エンジンは中高回転域でもパワーの出方に角はなくギクシャクせず、回転数をキープして走るのもいとわない従来から持っている相変わらずのフレンドリーさ。個人的には、高めのギヤにして低中回転をキープしてパルス感と蹴り出すようなトルクを味わいながらヒラヒラと流すように走るのが気持ちいいかな。幅広い運転技量のライダーが走りを楽しめる懐の深さ。スポーツ性能のほどよさ。そしてお手ごろな価格。トータルバランスのよさが光る。
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※記事の内容はNo.215(2020年2月22日)発売当時のものになります