YAMAHA TRICITY125

YAMAHA TRICITY125 走行

アンダー400 No.81掲載車両(2020年3月6日発売)

フロント二輪と圧倒的に目立つスタイルに仕立て上げられたトリシティ125。このマシンの乗り味が気になっている人もいるだろう。メリットとデメリットを含めて、その実力を紹介しよう。

文:淺倉恵介/写真:南 孝幸

フロント二輪といえど乗り味はバイクである

転ばないバイクを求めて到達した前二輪・後ろ一輪

最近のヤマハは何かとおもしろい。もともと挑戦的なメーカーではあるけれど、近ごろの試みには驚き、ワクワクさせられるばかりだ。その一つが“転ばないバイク”の開発だ。以前に公開された自律型ロボットライダーのモトボットや、自立が可能な倒れない電動バイクのモトロイドに見られるように、ヤマハは本気で転ばないバイクを作り出そうとしているのだろう。

 

その成果の一つがトリシティ125だ。トリシティ最大の特徴が、フロントが二輪であること。同じタイヤであれば、単純に設置面積が倍になるわけで、フロントのスリップが原因となる転倒の可能性が大きく減る。

 

YAMAHA TRICITY125

 

三輪化は、転倒防止の一つの回答。ヤマハでは、こうしたマシンをLMW(リーニング・マルチ・ホイール)車体が傾斜(リーン)して旋回する三輪以上のモビリティと定義している。トリシティは“絶対に転ばない”わけではないが、転倒しにくいという意味では、これまでのバイクと比べると、著しい進歩を遂げている。そして、トリシティがすばらしいのは“ちゃんとバイクになっている”ところだ。

 

走り出すと、これがもう普通のスクーターだ。直進状態で車体を左右に振ると、若干切り返しに重さを感じるのだけれど、違いを感じるのはその程度。いい意味でフツー、前輪が二つあることを感じさせないのだ。この点で、スリーホイーラーの先駆者であるピアッジオのMP3と異なる。その違いはコーナリングで顕著。MP3はフロントからグリグリ曲がり、たとえるならゴーカート的。対して、トリシティはどこまでもバイク。他のスクーターから乗り替えても、意識しなければ違和感を感じることはないだろう。

 

トリシティとMP3は、フロントの二輪を連動させるのに、同じパラレログラムリンクという構造を採用している。これは、左右のサスペンションを、ステアリングセンターを支点にした平行する二本のリンクでつないだもの。このリンクが働き左右が連動してリーンする。違うのは衝撃吸収のメカニズムで、トリシティは“テレスコピック式”で、MP3は“ボトムリンク式”だ。ボトムリンク式は低コストだけれど、ストローク長が確保しにくくハンドリングが重くなりがちなどのデメリットがある。ヤマハは、トリシティを

 

“普通に乗れるバイク”に仕上げるため、コストがかかっても性能を出しやすいテレスコピック式を選んだのではないだろうか? そんなことを考えた。実際に同じLMWで(厳密にいうと違いはある)、大排気量スポーツバイクのナイケンも、外観からは想像できないほどナチュラルなハンドリングが好評だ。

 

単に転ばない乗り物が欲しいのなら、四輪に乗ればいい。でも、ボクらはバイクに乗りたいわけで、乗り味がバイクでなければ意味がない。ヤマハは、そんなバイク乗りの気持ちを理解しているのだろう。トリシティからは、その想いが感じられる。

 

YAMAHA TRICITY125のディテール

GOOD POINT
YAMAHA TRICITY125 フロント足まわり
ヤマハのLMWは、日本のバイクメーカーでは現在唯一のフロント二輪のスリーホイーラー。トリシティ125のフロントまわりをのぞき込むと、そのメカメカしさに心が躍る。左右が連動してリーンしつつ、左右が独立して伸縮して路面をつかむための構造は、我々が考える以上に複雑に作られているのだ

 

YAMAHA TRICITY125のソフト面をチェック

乗車姿勢
YAMAHA TRICITY125 乗車姿勢
身長164㎝/体重56㎏
ステップスルーのスクーターは、ステップボード位置が高くなりがちで、ヒザの曲がりが窮屈な場合が多いが、トリシティのステップボードはかなり低め。着座位置は前後の自由度が高いので、極端に大柄でなければ、自然なライディングポジションをとれるだろう
足つき性
YAMAHA TRICITY125 足つき
765㎜というシート高は、このクラスでは平均的なもの。スクーターの場合、シートの高さと同じくらい足つき性に影響するのが、車体の幅。フロント二輪と聞くと、車幅が大きくなりそうにも思えるが、トリシティ125はスリム。小柄なテスターでも足つき性に問題なし
取りまわし
YAMAHA TRICITY125 取りまわし
タイヤが二つあるぶん、フロントサスペンションが重いのと、基本骨格を排気量が大きなトリシティ155と共有しているため、そもそもの車重が125㏄クラスとしては重い。これまた、タイヤが二つあるせいで、押し歩き時のステアリング操作も重い。取りまわし性は、全体的に重めなのは事実
Uターン
YAMAHA TRICITY125 Uターン
小回りはやや苦手。スペック上でも、2.5mの最小回転半径は大きめだ。だが、安定感が強いので、Uターン自体に怖さはない。気になったのはブレーキ。左のブレーキレバーをかけると、前後ブレーキが効いてしまうので、リヤブレーキだけの速度調整がやりにくかった

YAMAHA TRICITY125でタンデムランチェック

YAMAHA TRICITY125 タンデム走行
ライダー:淺倉
車重は重めとはいえ、車格は125㏄サイズ。タンデマーを乗せると、やはり安定性は損なわれる。だが、LMWならではのスタビリティの高さと、トルクのあるエンジンのおかげで、タンデムのしやすさは同カテゴリーで上位に入る
タンデマー:伊藤
タンデマーとしてはステップの広さ、グラブバーの太さが好印象。ステップは平らで、不安定さを感じない。グラブバーはつかみやすい場所にあって、手に馴染む。ちなみに前方二輪の恩恵は、後ろだとそこまで感じられず…

 

前U4編集長谷田貝が斬る!

タンデム時にさらに感じる高い安定性

相変わらずのフロントタイヤの接地感の高さにホレボレしてしまう。前輪タイヤが二つある、それだけでライダーの苦手とする場面がいくつも減るのだ。たとえば濡れたマンホール。橋脚の金属の継ぎ目。交差点の中程にたまったジャリなどなど…。まぁ、これらのウイークポイントがトリシティ125のLMW機構のおかげで万事解決。それと付け加えておきたいのが、タンデム性能の高さだ。スクーター全般を見回してみても、トリシティほどタンデムがしやすいバイクもめずしい。ちょっとやそっとタンデマーが動いたところでまったくライディグに影響はなし。タンデムが苦手だけど、ひんぱんにする必要があるならトリシティ125がオススメだ!

YAMAHA TRICITY125のスペック

全長×全幅×全高
1,980×750×1,210(㎜)
軸間距離
1,350㎜
シート高
765㎜
車両重量
159㎏〔164㎏〕
エンジン型式・排気量
水冷4ストロークOHC4バルブ単気筒・124㎤
最高出力
9kW(12㎰)/7,500rpm
最大トルク
12N・m(1.2kgf・m)/7,250rpm
燃料タンク容量
7.2ℓ
タイヤサイズ
F=90/80-14・R=130/70-13
価格
42万3,500円〔46万2,000円〕(税込)

YAMAHA TRICITY125 製品ページ

CONTACT

問い合わせ先
ヤマハ発動機カスタマーコミュニケーションセンター
電話番号
0120-090-819
URL
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/

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