夏ツーリングの恐怖体験

 今になって振り返ると、あれは幻だったんじゃないだろうか? 店主はゾンビと化していて誰かの血肉を漁っている…。あの一瞬だけ現実世界を飛び越え、バイオハザードのような世界へと入り込んでしまったんじゃないか、本気でそう思う。

 

 先日行ったキャンプツーリング。街中から離れたところにいた僕は、買い出しのためにスーパーを探していた。自然豊かなこの辺りでは大型スーパーがなく、個人商店のスーパーを見付けるのがやっと。もう日が暮れそうになっていたから見付かったことだけでも十分にありがたかった。それに大型のスーパーよりも地元の人と触れ合うチャンスがあるかもしれないし、地場の野菜やお肉がおいしいかもしれない。

 

 お店の前にバイクを停めて安心した。地方だと早く閉めてしまうお店もある。そもそもグーグルマップで検索したところ、スーパーマーケットとして表示はされるのだが、その下に表示される実際の風景では、空き地しか写っていない。これはもしや潰れてしまったってこと? そう心配していたから、お店が開いていたことにホッとしたのだ。

 

 しかし、入口に一歩足を踏み入れて固まった。そこはまだ食材が並ぶ店内ではなく、野菜などを入れた段ボールなどがそこかしこに積み上げられたスペースになっていたのだが、上の方に目線をやると…、蜘蛛の巣だらけだったのだ。天井がもう蜘蛛の巣で覆われている。僕は言葉を失った。生鮮食品を取り扱うお店で、こんなことあり得るのだろうか?

 

 通路を進んでいくと、野菜があってちゃんと値札のポップも出ている。やっぱりちゃんと営業しているんだ…と思った矢先、店内の野菜に小さいハエがたかりまくっていた…。尋常じゃないくらいに。もう怖くてすぐに店から飛び出した。お店の人も誰もいる気配がない。

 

 なんだここは…!と気が狂いそうで退散したのだが、後になって考えてみたとき、あれは幻だったんじゃないかと思わずには説明ができない。だってそんな店おかしくない? 気になってグーグルマップで見てみると、空き地だったのは隣のスペースで、確かにあのお店は写真に写っている。でも…、僕には夏の怪談に思えて仕方がないのだ。

イトウくん

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イトウくん

「人生最後の晩餐は何がいい」と聞かれたら、味噌煮込みうどんと正気で答える、愛知県出身ではないのに名古屋メシに熱狂する28歳。ロングツーリングといえば味噌煮込みうどんを目指す名古屋までが鉄板(あぁ名古屋に住みたい)。編集部内では年齢的に若手といわれているが、外見的には35歳前後といわれることもあり、焼き魚や煮物の食卓に心和む男にフレッシュ感は皆無。若いのかおっさんなのか微妙な年ごろである。

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