2015年から販売が続くYZF-R3が、発売から10年目となる2025年モデルで2度目のモデルチェンジをし、ほかのYZF-Rシリーズのフロントまわりと統一されたデザインとなった。タンデムシートの両サイドがウイング形状となったこともYZF-Rシリーズらしさが増した感じだ。
外観に関して、今回色味が変わるマジョーラカラーが採用されたこともトピックスといえる。走っている時にふとタンクに目を下ろすと、とくに夜の街灯など光源の下を通り抜ける際に色味が一瞬でガラリと変わるのは、思わずニヤリとしちゃうだろう。また、旅先で愛車の写真を撮る時も“この角度の方が色味がいいな”とついつい時間がかかってしまうに違いない。
またがればスーパースポーツ然としたスタイリングながら、意外と上体が起きたライディングポジションを取ることもできる従来モデルからのライダーフレンドリーさがしっかりと引き継がれている。エンジンは、低回転から十分なトルクがあって、そのままスロットルを開けていけば、それに合わせてスムーズにパワーが増していくのでとても扱いやすい。まさに気兼ねなく乗れるモデルといえる。そして、極低回転から6,000rpmくらいまでの十分なトルクによって、ワイディングなどコーナーの立ち上がりやストップ&ゴーの多い街中でも回転数を意識することなく自在にバイクを扱っている感があるので、走らせること自体が楽しいのだ。
エンジンだけでなく、車体をコーナーなどで倒し込む際、安定感がありつつ軽快さがあること、さらに効き具合がわかりやすく、かつ必要十分な制動力を有する前後ブレーキが楽しさを助長してくれる。まさにビギナーからベテランまで幅広い層のライダーが、バイクを操る楽しさを得られる懐の深いバイクと言えるだろう。
ここからは、小柄な女性ライダー目線でのインプレッションをお届けしよう。
快適性・利便性がさらに高まったR3
スーパースポーツのルックスにあこがれていたけれど、またががった瞬間に不安を感じたことがある人も多いだろう。とくに身長が150cm台の小柄なライダーにとって、スポーツバイクは“遠い存在”と思われがちだ。しかし2025年モデルのYZF-R3は、そのイメージを覆す存在だった。
試乗したのは、ワインディングメインの山道。ヘアピンカーブや高低差のある道が連続し、頻繁にギヤチェンジを要するシチュエーション。6速に入れる場面はなく、2〜4速をメインに走行した。
とくに印象的だったのは、登りのヘアピンでの粘り強さだ。3速ではエンストしかけるかと思うような場面でも、しっかりと踏んばってくれる。とはいえあまり気持ちのいい加速とはいえないので、2速でグッと登る方が気持ちいい。下りではしっかり減速してから曲がり、コーナーの先を見てスロットルを開けていくと、じわじわと速度が乗っていく感覚が得られた。
コーナリングでは車体のバンクがスムーズに決まり、狙ったラインをトレースしやすい。急旋回でも怖さはなく、むしろ楽しさを感じさせてくれる操縦性だった。
前傾姿勢は見た目よりもキツくなく、小柄な体格でも無理なくハンドルに手が届くポジション。シートの前後幅も確保されており、ポジションの自由度が高い点もありがたい。姿勢に無理がなく、ロングツーリングにも対応できそうな快適性もあった。
走行性能の高さだけでなく、2025年モデルではアシスト&スリッパークラッチの採用によりクラッチレバー操作が格段に軽くなり、低速時や渋滞中でも操作がしやすい。また、足着き性も向上しており、信号待ちなどの場面でも安心感があった。
YZF-R3は見た目こそ本格派だが、実際に走ってみると“操れる”楽しさがある。小柄な体格やライディングに不安がある初心者でも、自分のペースでしっかり楽しめる。スポーツバイクにチャレンジしたいと考えているなら、このYZF-R3は確実に“選択肢に入れていい1台”だと感じた。
POSITION & FOOTHOLD
両足を下ろしてカカトまでベタ着きかつヒザが軽く曲がる不安をまったく感じさせない足つき。ライディング時にきゅう屈な感じもなく、タンクに伏せた状態からコーナーでオシリを左右にずらすポジションまで自在に移行できるのも◎。身長170cm/体重70kg
以前試乗したことあるR3は2021年モデルで、シート高780㎜と同じ数値だった。はずなのだが…。今回のモデルは両足の土踏まず手前まで接地していた。ちなみに写真を確認するまでは、“カカトが少し浮いている程度だろう”と思うほど足つき性が格段によくなっていたと感じる。前述したとおり数値は同じなので、シートとサイドカバー形状をスリム化だけでここまで足つきがよくなったのは低身長ライダ-にとっては大きな変化だ。車重も軽く足つきのよさも相まって傾斜があるような場所で止まったとしても、不安感はあまりない。身長155cm/体重46kg
SPECIFICATIONS
●全長×全幅×全高:2,090×735×1,140(㎜)●軸間距離:1,380㎜●シート高:780㎜●車両重量:169kg●エンジン種類・排気量:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒・320㎤●最高出力:31kW(42ps)/10,750rpm●最大トルク:30N・m(3.1kgf・m)/9,000rpm●燃料タンク容量:14L ●燃費(WMTC):26.4㎞/L●タイヤサイズ:F=110/70-17・R=140/70-17●価格:72万6,000円
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