HONDA X-ADV

連載新車体感 ニューモデルインプレッション

No.
182
連載新車体感 ニューモデルインプレッション

企画を“まる読み”できます!

※公開中の誌面内容はNo.182(2017年5月24日)発売当時のものになります

インプレッションの誌面を開く
次のページ
前のページ

クルマの世界では、世界的にSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)というジャンルのマシンが流行っているらしい。直訳すれば“スポーツ用多目的車両”。さてさてバイク版SUVを標榜するX-ADVの実力とはいかに?

文:谷田貝洋暁/写真:関野 温

想定外のダート適性にいつもより多めに回しております!

リヤの滑りを楽しむATコイツは未体験の乗り物だ

 スクーターライクなスタイリングにデュアル・クラッチ・トランスミッション(以下:DCT)仕様の745㏄エンジンを搭載したX‐ADV(エックス・エーディーブイ)。もとをとどればプラットフォーム戦略のNC700シリーズの1モデルとして登場したインテグラがその起源になる。

 

アドベンチャースタイルのNC700Xは、現在に続く国内のアドベンチャーブームの火点け役となるほどの人気となったが、一方のスクーターライクなインテグラの方はイマイチ。

 

「でも、次世代を担うDCT車だからやめるワケにはいかないし…。だったらもうさぁ、ハヤリにのってクロスオーバーコンセプトになぞらえて、アドベンチャールックにしちゃえばいいじゃん? いっそキチンと走れるようにしてさ!」…なんてヤケクソ気味の発言から生まれたなんてことは絶対ないだろうが、技術説明を聞けばオフ性能へのこだわりは相当本気。だからこんな妄想がふくらんでしまう。

 

そもそも、400XやNC700X(現在のNC750X)に代表されるXシリーズ、つまりクロスオーバーコンセプトとは、“行こうと思えばダートにいけなくはない”ぐらいのコンセプトだったハズ。だが、このX‐ADVのプロモーションビデオは、バリバリにオフロードを意識。それもアフリカツインばりの、スライドコントロールまで出てくる…。こりゃぁ、僕らもちょっとばかし本気を出さなければいかんわなぁ…、と歓び勇んでフラットダートへ飛び込んだのだが、いやはや予想を超えるダート適性に笑いがこみ上げる。

 

ハンドル切れ角もかなり大きめに確保されており、こんなナリなのだが、アクセルターンもできちゃったりする。このバイク、普通に林道ツーリングできちゃうんです!

 

しかも、なんだか今までにない乗り味なのだ。アドベンチャーツアラーともオフロードバイクとも違う新しい価値観。なにしろX‐ADVは、DCTを採用したオートマチックモデル。スクーターライクなステップボードはお世辞にもオフロード適性が高いとはいえないハズだし、ニーグリップもしやすいワケじゃないのだが、それでもダート走行が楽しいから不思議なのである。

 

空転し続ける後輪。重く硬めの車体を抑え込むように体重移動しながらコントロール…、とにかく太めなリヤタイヤで、地面をかきむしりながらテールを滑らせる感覚が楽しくて仕方ない。ナゼだかわからないが、ドゥカティのスクランブラー・デザート・スレッドの走行フィーリングと思考がリンクする。

 

もう少し最低地上高があれば荒れ気味の林道も楽しそうだが、国内モデルは、足着き性の理由から海外仕様よりも前後のサスペンションが3㎝ほど短縮されている。オイルパンへの岩角ヒットが少々気になるので、フラットダートまでがコイツの住処だろう。

 

それに走り出すまでは、なんでタイヤ径が小さく、ダートで不利なスクータースタイルなのにトラクションコントロールが付いていないのか? これは開発陣にも質問してしまったのだが、返って来た答えは「電子制御でごまかして走るのではなく、素できちんとダートを走れるものにしたかったんです」。…試乗前はにわかに信じられなかったが、走り出せばむしろリヤを滑らせることが楽しいのだと納得。DCTのオートマチック制御は1速がわりとパワフルな設定で、発進スタート時が一番ズリズリと後輪が地面をかきむしる。そして2速、3速とギヤが上がり、車速が乗るにつれて後輪が路面をつかみ後輪の空転が収束していくようなキャラクターだ。

 

それにスタンディングも可能。ちょうどステップボードの後端にへの字型のくぼみがあり、ココに土踏まずを載せてクルブシでガッチリ、エンジンをホールドすることができる。だからスタンディングでの重心コントロールさえできてしまう。

 

編集部がつかんだ情報では、なんと純正オプションではないが、もう少し後ろに付けられるギザギザのオフロードステップも登場するらしい。

 

ATモデルとは思えないほどバンク角が深い深い。街乗りからツーリング、そしてダートセクション。これ1台でなんでもできるバイク版SUVというコンセプトに納得

 

さてスペースが少なくなってしまったが続いてロードセクション。高速道路や一般道ともに、走る、曲がる、止まるという基本性能は申し分ナシ(短っ)! …なことは当たり前だが、ワインディングでのスポーツバイクとしての性能を確かめたくて、富士山5合目へ続くクネクネワインディングにも足を伸ばしてみたのだが…。うーん、常用域では何の過不足も感じなかったのだが、タイトなコーナーを攻めようとするとワインディングでは少々アクセルが開けにくいと感じる場面があった。車体が横方向にあまりしならずタイヤを地面に押し付けている感覚がちょっと希薄なんだよね…。スクーターライクな車体構成上、フレームの剛性コントロールが難しいのかもしれない。僕的には、ダートよりもワインディングを走っているときにトラクションコントロールが欲しいと感じてしまった(笑)。

 

さぁ、スクーターという既存の価値観を見事にぶちこわしてくれそうな、新しい乗り物X‐ADV。国内ではどのように受け入れられるのだろうか?

 

HONDA X-ADVのディティール紹介!

※記事の内容はNo.182(2017年5月24日)発売当時のものになります