KAWASAKI Z125PRO (2020)

KAWASAKI Z125PRO 走行

アンダー400 No.83掲載車両(2020年7月6日発売)

10~12インチホイールを履くギヤ付き原付二種モデルは以前からある。足つき性が良好のため、日常の足として、遊びの相棒として選ぶライダーは少なくない。またサーキットに足を運ぶと、それらでスポーツランを楽しんでいるライダーもいる。その楽しさを体感するため、Z125プロでサーキットを走ってみた。

文:伊藤英里/写真:関野 温

小さな体躯に詰め込まれたスポーツ性能

KAWASAKI Z125PROのスタイリング

 

サーキットで見せる街乗りとは違う顔

KSR110の後継機として、2015年に登場したZ125プロ。125㏄クラスのコンパクトな車体に12インチタイヤを履かせた、小径ホイールモデルだ。こうした12インチ仕様のミニバイクは、長らく根強い人気を博してきた。その人気は、日常の足だけに止まらない。こうしたミニバイクを対象にしたレースや、ホンダのグロムやモンキー125などのレンタルバイクで参戦できるレースも行なわれている。小さなバイクだからこそ、サーキットやスポーツ走行に躊躇するライダーが、はじめの一歩を踏み出す後押しになるのかもしれない。

 

個人的にグロムで何度かレースに参加したことがある。125㏄のミニバイクで走ったことがなかった自分としては、これがなかなか衝撃的な体験だった。バイクに振り回される不安が少ないぶん、ライディングに集中できる。そしてその経験は、自分の技術向上にもつながった。小径ホイールモデルの人気が根強く続いている理由の一つは、体格やライディングスキルに関わらず、気軽に乗れて、走りの追求ができるという点にもあるように思う。

 

そうした現行ミニバイクの一角を担うZ125プロ。サーキットにコースインすると、低速での力強さを感じた。立ち上がりでの加速に不足はなく、かといって過激でもない。だからこそ安心感がある。そこから、伸びやかに加速。するするという間にスピードに乗る。今回走ったミニサーキットはストレートが短めだったので、私のスキルでは最高速で80㎞/h程度が限界だったが、まだ伸びしろを感じたし、高回転域でのポテンシャルの高さを実感した。ストレートで上体を伏せるときは、やや後ろ側にライディングポジションをとりたいけれど、シートがなだらかなので、乗車位置の移動がストレスにならないのもポイント。

 

KAWASAKI Z125PRO

 

ブレーキングでは、倒立フロントフォークがしっかりと動いて路面に追従し、安心感がある。また、少しきつめにブレーキングをしても、1ポットキャリパーの制動力に不安は感じなかった。その安定感は、コーナーに思い切って入っていく自信をくれる。こうした高い安定性、そして軽量な車体はコーナーでの切り返しの軽快さにもつながっていた。体重移動でぱたり、ぱたりと機敏に車体を倒しこめる。タイトなコーナーの連続も苦にならず、むしろテンポよくバンクするその動きに高揚感を覚えるほど。タンク形状はほどよく外側の足にフィットするのも○。

 

低速域の太いトルクも動きの軽さに貢献していて、ほしいだけのパワーがエンジンからすばやく提供される。ここでスロットル操作について触れておきたい。Z125プロは決してスロットルレスポンスがリニアな方ではないと思う。むしろ、少しラフに操作しても受け止めてくれるマージンがある。スポーツ走行慣れしたライダーでもなければ、バイクがこうした寛容さを持っている方が楽しく走れるし、一方で安全でもあると思う。総じてZ125プロをサーキットで走らせて感じたことは、スポーツとしての走りさえすっぽりと手のひらに収まるような心地よさと、随所に光るスポーツ性能の高さだった。

 

今回は、サーキットとともに街中も走ったので、そのインプレッションもあわせてお伝えしたい。ストップ&ゴーの多い街乗りでは、低速域の安定したトルクのおかげで快適。車体が軽いから車線変更やUターン、取りまわしも楽々だ。パニアケースなどを取り付ければ、積載の問題もクリアできる。移動手段としてだけではなく、走る楽しさをしっかりと味わえるバイクだ。

 

もしZ125プロに乗るのなら、ぜひともスポーツ走行にトライすることをオススメしたい。サーキットならずとも、ワインディングでスポーツライディングというものを堪能できること間違いなし、だから。きっと何度も走るうちに、もっとこのバイクの虜になる。手に収まるような扱いやすさを持つ一方で、さらにマシンと一体になる楽しさを深めたくなる魅力を持つ存在ではないだろうか。

 

KAWASAKI Z125PROのディテール

GOOD POINT
KAWASAKI Z125PRO 乗車姿勢 エンジン
高回転域での伸びやかな加速がなんといってもたまらない。走るほどに、よりおもしろさを感じる。高回転型エンジンだと感じる一方、全体のバランスもいい。低速域のパワーは、コーナーの切り返しや立ち上がりでもバイクを操り切れる安心感がある。スポーツ走行の興奮を味わえるエンジンではないだろうか

 

KAWASAKI Z125PROのソフト面をチェック

乗車姿勢
KAWASAKI Z125PRO 乗車姿勢
身長163㎝/体重57㎏
走り出せばこの高さがちょうどよく感じられるハンドル位置。コンパクトなハンドル幅は、サーキットでも軽快な走りを生んでいた。ペダル位置もしっくりくるのだが、スポーツ走行をメインに考えるなら、個人的にはバックステップがほしくなる
足つき性
KAWASAKI Z125PRO 足つき
両足がべったり地面につかないのは、シートの横幅に余裕があるから。とはいえ、両足の小指まで踏ん張れるくらいなのだから、小柄なライダーでも大満足の足つき性。またがったまま車両を移動させるこができるほど、しっかりと足裏に力を入れられる
取りまわし
KAWASAKI Z125PRO 乗車姿勢 取りまわし
さすがの車両重量102㎏。とても軽々と押し引きできる。車体の横に立ったときにぴたりとくるハンドルの高さも取りまわしのしやすさに貢献している。このバイクなら、筋力に自信のないライダーでも、トランポへの積み込みに挑戦してみたくなるかも
Uターン
KAWASAKI Z125PRO 乗車姿勢 Uターン
コンパクトなハンドル、短めのホイールベース、しっかりした低速のパワー、余白のあるスロットル反応がUターンへのハードルを下げていた。軽快な動きを実感できるからこそ、街乗りは楽に感じるし、スポーツ要素のある走りをしたくなる

スポーツラン大好き横田が斬る

小粒でも楽しさは無限大!

どこかで聞いたことがあるようなキャッチコピーになってしまったが、12インチホイールの125㏄バイクはコンパクトな車体ながら高い走行性能を持つので、通勤・通学の手段からカスタムのベースにも最適。さらにサーキット走行もできるとなればまさに“楽しみ方は無限大”だ。Z125プロは現行Zシリーズらしいシャープなデザインと、本格装備を持つ。パワーバンドが広く伸びがあるエンジン特性は4速ミッションを駆使することでペースよく走れる。コーナー進入時のブレーキングでは倒立フロントフォークの剛性の高さが安心感につながる。バンクさせるとマスの集中の効果もあってクルリと回り込む旋回性を見せ、姿勢も安定。とっつきやすいサイズ感のZ125プロはサーキットデビューにもピッタリのバイクだ。

ジャンルを問わず二輪好き淺倉が斬る

もう少しバンク角があれば…

今回、試乗した中では唯一の12インチホイール車。ミニバイクサーキットなら、ピッタリの車体構成なのだけれど、どちらかというとホビーバイク的性格の強いZ125プロだから“速いか?”というと疑問符がつく。一番気になったのがバンク角の少なさ。すぐステップが接地してしまうので、思うように寝かせられない。一方で、可能性を感じたのがエンジン。トルクがあって低回転域から力強く加速する。パワーバンドも広く、その気になれば3速オートマ走行すら可能だ。もちろん、速く走らせるためには2・3・4速もしっかりと使うべきなのだが。高回転域の伸びはいまひとつなのだけれど、つづら折れのようなタイトコーナーが多いシチュエーションでは意外なほど速い。これは使い方しだいで化けるかも?

KAWASAKI Z125PROのスペック

全長×全幅×全高
1,700×750×1,005(㎜)
軸間距離
1,175㎜
シート高
780㎜
車両重量
102㎏
エンジン型式・排気量
空冷4ストロークOHC2バルブ単気筒・124㎤
最高出力
7.1kW(9.7㎰)/8,000rpm
最大トルク
9.6N・m(0.98kgf・m)/6,000rpm
燃料タンク容量
7.4ℓ
タイヤサイズ
F=100/90-12・R=120/70-12
価格
35万2,000円(税込)

KAWASAKI Z125PRO 製品ページ

CONTACT

問い合わせ先
カワサキモータース ジャパンお客様相談室
電話番号
0120-400819
URL
https://www.kawasaki-motors.com/mc/

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