KAWASAKI Ninja250 (2021)

Kawasaki Ninja250(2021年モデル)走行

アンダー400 No.88掲載車両(2021年5月6日発売)

250㏄クラスの中で人気が高いカテゴリーが“フルカウルスポーツ”だ。各車両メーカーはこのカテゴリーにマシンを投入している。ここではフルカウルスポーツの基本的な特徴を紹介しつつ、このカテゴリーの火付け役となったカワサキ・ニンジャ250Rの後継機にあたる“ニンジャ250”をピックアップした。

文:伊藤英里/写真:関野 温

時代の変化が生んだ特徴はさらなる進化へ

KAWASAKI Ninja250のスタイリング

 

共通する要素はありつつ分かれ始めた方向性

250㏄クラスのカテゴリーの中で、ここしばらく高い人気を誇っているのがフルカウルスポーツである。1980年代のレーサーレプリカブームは排出ガス規制の強化とともに去り、下火になっていった。そんな状況に一石を投じ、再び注目カテゴリーへと押し上げた存在として触れておかなければならないのが、2008年に登場したカワサキ・ニンジャ250Rだ。並列2気筒エンジンを搭載したこのモデルの登場により、ライトスポーツバイクは人気を集めるようになっていく。

 

新たな時代を迎えたミドルクラスのフルカウルスポーツは、かつてのようにスポーツ性能に突出したモノというよりも、スポーティな外観を持ちながら乗りやすさにも配慮された、総合的にバランスのとれたバイクとなっていた。これは一つのカテゴリーに限ったことではないが、走りの性能だけではなく、排出ガス規制や周辺環境への配慮といった要因に加え、スタイルや全体のイメージを含めてバイクを楽しむ、そうした潮流への変化を反映しているのではないかと思う。

 

さて、ニンジャ250Rに続き、2011年にはホンダが単気筒エンジンを搭載したCBR250Rをリリースし、2014年にはヤマハが初代YZF-R25を投入した。こうした中で、2017年ごろからはしだいに、その傾向がそれぞれのメーカーの特色を帯びるようになっていく。2017年にスズキが発売したGSX250Rは、当時の国内4メーカーの250㏄フルカウルスポーツバイクの中でも少し異なる道を歩んでいた。加速感を楽しみつつひらひらとワインディングを駆けるというよりも、低中回転域で安定した走りを楽しめる、どちらかといえばツアラーのように、一定の速度で走らせるときに快適性を感じられるモデルだった。スズキはさらに2020年、油冷単気筒エンジンのジクサーSF250を発売。フルカウルモデルではあるものの、フレームなどはネイキッドのジクサー250と共有しており、その走り味もネイキッドに近いものである。ヤマハのYZF-R25は2018年にマイナーチェンジされ、1000㏄スーパースポーツバイクのYZF-R1に近いデザインや、少し前傾寄りになったポジション、倒立フォークなどが採用された。ただ、乗りやすさとスポーツバイクらしさを両立させるコンセプトは変わっていない。

 

一方、よりスポーツ性に比重を置いたモデルもある。2017年にホンダが放ったCBR250RRは“ダブルアール”を冠するだけあって、スポーティな性能に軸足を置いたバイクだった。スロットル・バイ・ワイヤや三つの走行モードを備えており、2020年のマイナーチェンジではアシスト&スリッパークラッチが導入された。オプションだがクイックシフターの装備も可能に。そして、同年にはカワサキが並列4気筒エンジンのニンジャZX-25Rを登場させている。長らく単気筒または2気筒エンジンのみであった250㏄フルカウルスポーツにあって、久々に登場した4気筒エンジンだった。さらにSEモデルにはオートシフターが付加されるなど、装備の面でも大きな注目を集めることになった。ちなみに、カワサキは2021年、このニンジャZX-R25だけで争われるワンメイクレースを開催している。

 

各メーカーの250㏄フルカウルスポーツに差が生じてきている。単一ではないキャラクターは選ぶ側からすれば、どう走らせるか、どう楽しむか、そうした自由度がさらに増えるということでもあるだろう。

 

疾走感を思わせるビジュアルに内包された操作性のよさ

Kawasaki Ninja250(2021年モデル)

見た目もよければ走りの質もまたよし!

バイクを購入するにあたって、ライダーが求める要素はいろいろある。見た目、性能、燃費などなどだが、それはライダーによって異なる。さまざまな要素で多くのライダーの心をつかんだモデルが、人気車種になるわけだ。ここで紹介するニンジャ250は、これまでに大勢のライダーに選ばれてきた。その魅力について探っていく。

 

まずスタイルがイイ。いかにもスポーツバイク然としたたたずまい。フロントカウルからは疾走感を感じるし、兄貴分であるニンジャ400と共有する車体は貫禄がある。シャープでソリッド…、なんてカッコよさにつられて横文字を乱用したくなるから困る。そして走らせてみれば、さらにこのバイクの虜になってしまうのだった。

 

またがってみるとニーグリップしたときしっくりと太モモになじむタンクの形状。スリムなシートと車体のおかげで、足つきも悪くない。また、スロットルの軽さと、操作感のいいグリップの太さも好印象だ。私のように手が小さく、握力が弱い場合、スロットルの重さやグリップの太さに敏感になってしまう。なにしろスロットル操作はバイクをコントロールするうえでその回数も重要度も高い。その点、ニンジャ250は右手の疲れを心配しなくてすむ。軽いと感じるスロットルを回すと、低回転域からトルクがするりと出て、中回転域から高回転域にかけての吹け上がりが心地いい。いわゆる高回転型エンジンではあるが、低回転域に不足は感じず、バランスのいいエンジンだと思えた。6000~8000rpmあたりで高速道路を走行中には、十分なスピードに乗ったところから追い越し車線に入るためにアクセルを開けると、そこからさらにパワーが出て、スムーズに加速してくれる。その出力が、持て余すほど大きいものではないのもうれしい。余裕はあるのに、ライダーがコントロールできる範囲だと感じられるからだ。

 

こうした出力特性は、少しスポーツ寄りの走りをしたときにもいいフィーリングをもたらしてくれる。さらに外足の太モモを押し付けたときにフィットするタンク形状によって、車体を倒し込んだときの姿勢も自然とうまく決まるし、そのぶん車体の動きも軽快になる。細かな部分ではあるけれど、ライダーがバイクの上でしっくりとくるポジションを維持できるのは、どんなシーンであっても重要ではないだろうか。アシスト&スリッパークラッチのおかげで、シフトダウン時のエンジンブレーキで挙動を乱すこともない。テクノロジーは人間のやることを削るけれど、そのぶん走りに集中できて安全を高めるならアリだと私は思っている。コーナーの立ち上がりではスポーツライディングの醍醐味を感じられる。それなのに、ライダーが無理をしていない感覚。この安心感は大きい。

 

ただ、少しだけ中回転域のトルクの出方がスロットル操作に対してリニアで、アクセルを戻したときのエンブレのかかりも大きい点は気になった。うっかり右手を乱暴に動かすと、挙動がギクシャクしてしまった。あと気になったところでもう一つ。シートの硬さである。1時間程度、高速道路を走っただけでお尻が痛くなり始めた。リヤショックの硬さもあるようで、衝撃がダイレクトにお尻と腰に伝わってきたのだ。リヤショックについては5段階のプリロード調整が可能なので、好みに応じて味付けを変えることはできるだろう。ただ、シートはいかんともしがたいので、場合によっては対策を講じる必要があるかもしれない。

 

ニンジャ250はフルカウルスポーツであり、高い性能を持ちながら、ちょっとそこまで一緒に出かけたいと思えるほどのフレンドリーさを持っている。肩の力を抜いて、楽しく走りたい。ニンジャ250となら、いろいろな楽しみ方ができるだろう。

 

KAWASAKI Ninja250のディテール

GOOD POINT
Kawasaki Ninja250(2021年モデル)ハンドルグリップ
試乗したうえでもっとも気に入ったのは、スロットルの軽さと絶妙なグリップの太さだ。スロットル操作に疲れないということは、もちろん安全性にもつながるし、操作感のよさは心地いい走りを生む。アシスト&スリッパークラッチによるクラッチレバーの軽さも、同じくお気に入りポイントだった

 

KAWASAKI Ninja250のソフト面をチェック

乗車姿勢
Kawasaki Ninja250(2021年モデル)乗車姿勢
身長153㎝/体重40㎏
またがってみると、ライディングポジションがとても楽なことに驚く。ハンドルの開きや、ヒザの曲がり角度にも無理はない。一方、少しスポーツ寄りの走りをしたいときには太ももにフィットするタンク形状で、倒しこみのフィーリングを車体に伝えやすい
足つき性
Kawasaki Ninja250(2021年モデル)足つき
両足ならば、ツマ先が地面につく。少し心もとない気もするが、シートの形状がとてもスリムなので、左右にお尻をズラしやすく、とっさのときにどちらか片足でも踏ん張れる程度には足をつくことができるのだ。見た目以上の足つき性のよさであると伝えたい
取りまわし
Kawasaki Ninja250(2021年モデル)取りまわし
小柄で非力なライダーである筆者だが、ニンジャ250はかなり取りまわししやすい。初動からするっと動き、その後も166㎏の重さを感じにくい。重量バランスがいいのか、車体自体が軽いからか。動かしている最中にぐらりとくることもなかった
Uターン
Kawasaki Ninja250(2021年モデル)Uターン
車体の動きが軽く、スロットルも軽くてコントロールしやすい。低回転域の出力が過敏すぎない…、ということで、スポーツタイプのバイクとして考えればUターンしやすかった。小回りが利くという点では、街乗りでも走らせやすいだろうな、という印象だ

 

KAWASAKI Ninja250のタンデムランチェック

Kawasaki Ninja250(2021年モデル)タンデム走行
ライダー:淺倉
タンデムでの安定性は良好。二人乗車でも足まわりがへこたれない。ライダー、タンデマーともに小柄だったので、サスペンションの設定荷重から大きく外れていなかったのかもしれない。サスがしなやかに動くように感じられた
タンデマー:伊藤
小さくて硬い座面。リヤのサイドカウルに申し訳程度に指をかけられるくらいで、あとはタンデムベルトをつかむかライダーにしがみつくしかない状況…。タンデマーにはなかなかキビシイ。ライダーの操作をよく見ながら、体幹を使ってのタンデムが必要かも

前U4編集長谷田貝が斬る

軽いってことはやっぱりうれしい!

最近は同じ250㏄のニンジャでも、4気筒エンジン搭載のニンジャZX-25Rばかり乗る機会が多い。久しぶりにパラレルツインのニンジャ250に乗ったのだが…。まず感じたのはその走りの軽快感。車両重量で166㎏。一方のニンジャZX-25Rが183㎏。17㎏違えば、またがった瞬間に思わず“軽っ!”と声に出してしまったくらいの違いが出る。当然ながら走ってみてもやはり軽さが際立つ。さすがに単気筒250㏄のニンジャ250SLほどの軽さはないのだが、重たいエンジンを積んでる感のある4気筒のニンジャZX-25Rの走りに比べれば、かなり俊敏。股下でバイクをねじ伏せて走るようなアクティブな感覚も楽しめる。軽ければ上半身の少ない動きでバイクが反応するし、レスポンスもよくなる。それに当然お値段だって安くなる。

ジャンルを問わず二輪好き淺倉が斬る

250㏄の基準的存在! バランスのよさが光る

国内4メーカーすべてに、250㏄ツイン・フルカウルスポーツがラインナップされ、同じカワサキには4気筒エンジンのニンジャZX-25Rまで存在する現在、“唯一無二”や“最強”といった形容詞が付かなくなってしまったニンジャ250だけれど、今なおベストバイの1台だと感じる。ポイントは、やっぱりバランスのよさだ。軽快でニュートラルなハンドリング、回して楽しいエンジン特性、扱いやすい車格と適度にスポーティなポジション、お手ごろ感のあるプライスなどなど…。好感度の高いポイントを挙げればキリがない。今回、あらためて走らせてみたのだが、やっぱりいいヨ! このバイク。さすがにクォーターブームの火付け役が、熟成を重ねてきただけのことはある。ニンジャファミリー共通の逆スラントデザインもカッコよくてスキだ。

KAWASAKI Ninja250のスペック

全長×全幅×全高
1,990×710×1,125(㎜)
軸間距離
1,370㎜
シート高
795㎜
車両重量
166㎏
エンジン型式・排気量
水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒・248㎤
最高出力
27kW(37㎰)/12,500rpm
最大トルク
23N・m(2.3kgf・m)/10,000rpm
燃料タンク容量
14ℓ
タイヤサイズ
F=110/70-17・R=140/70-17
価格
64万3,500~65万4,500円(税込)

KAWASAKI Ninja250 製品ページ

CONTACT

問い合わせ先
カワサキモータース ジャパンお客様相談室
電話番号
0120-400819
URL
https://www.kawasaki-motors.com/mc/

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