KTM RC390 (2020)

KTM RC390 走行

アンダー400 No.83掲載車両(2020年7月6日発売)

出力面だけを見れば、並列2&4気筒エンジンと比べれば数値の低い単気筒エンジン。それはスポーツ走行を楽しむうえで不利になるのか。RC390を駆って、単気筒エンジンを搭載することのメリットを探ってみた

文:吉田 朋/写真:関野 温

軽さを活かしたキレのある走りが身上

KTM RC390のディテール

 

バイクのスポーツ性能は出力だけでは語れない

現在43歳の筆者が若かりしころ、いわゆる中免ライダーだったころは、スポーツモデルといえば4ストロークなら並列4気筒かV型4気筒、2ストロークでいえばV型2気筒を搭載しているモデルだった。1990年後半の話である。当時は自主馬力規制があり、その上限の数値を叩き出していたモデルにしか興味を抱かなかった。

 

それから20年以上が経過した今、排出ガス規制の影響で、U4モデルの中でスポーツを楽しめるロードバイクに搭載されているエンジンは4ストロークのみで、単気筒・並列2気筒が中心。並列4気筒にいたっては絶滅危惧種になっている。昔はまったく単気筒に見向きもしなかった。多気筒エンジンと比較して、最高出力が低かったからだ。ところが本誌の編集をするうえで、いろいろな単気筒エンジン搭載車に乗り、食わず嫌いだったことに気づかされた。現在3台のバイクを所有するが、そのうちの2台は250㏄単気筒であるほど(ちなみにカワサキ・ゼファー750/カワサキ・ニンジャ250SL/ヤマハ・セロー250)。

 

その魅力はなんなのか。絶対的なパワーは多気筒エンジンに分があるが、それらと比べて車体が軽いのが魅力の一つ。これを活かしてヒラヒラとコーナーをクリアしていく。これがとにかく楽しいのだ。ワインディングだけでなく、サーキットに持ち込んでも楽しい。レースとなると話は別だが、エンジンをぶん回して走る快感を味わえるのも魅力。加えて多気筒エンジンと比べると、車両価格も割安だし、燃費も良好。エンジンオイルなどの消耗品も多気筒よりも少ないため、維持費も抑えやすい。そんな魅力が詰まっているからこそ、2台の単気筒エンジン車を所有しているのだ。

 

その単気筒エンジンを搭載するモデルの代表として、今回RC390を駆った。先にも触れた単気筒ならではの魅力はしっかりと持つ。そのうえで単気筒エンジンでとことんスポーツを楽しみたいという人には、ぜひ相棒にオススメしたい1台だと感じた。

 

KTM RC390

 

日本国内で流通している単気筒エンジンは250㏄が主流。このRC390にも弟分のRC250が存在するが、それと比べると、やはり排気量があるぶんRC390の方が全域でパンチがあるのだ。スポーツ走行はもちろんのこと、街乗りからロングツーリングでも“余裕”という面でも差が生まれる。250㏄は車検がないためランニングコスト的には有利と思われがちだが、このパンチのためなら多少のコストアップは許容範囲だ。ちなみに250㏄は車検がないといってもノーメンテナンスでいいわけではない。安全で楽しいバイクライフを送るうえで、同じように各部を点検し、場合によっては部品を交換するという面は共通項だ。

 

スポーツランの相棒にオススメするのは出力面だけではない。KTMは“オフロードバイク”というイメージを持つ人が多いかもしれないが、Moto3をはじめ、ロードレースにも積極的に参戦し、データや技術を蓄積。それを市販ロードモデルにもしっかりとフィードバックしているのだ。現在のRC390は2017年からの第二世代になるが、第一世代から倒立フロントフォークやスチールパイプを組み合わせたトレリスフレーム、トラスタイプの補強が入ったスイングアームなど、豪華な装備が与えられていた。それは単に見た目だけでなく、スポーツ走行を楽しむうえでの大きな武器になっている。サーキットに持ち込んでも、ハイペースで走り回れるほどだ。

 

この1台でいろいろな場面で楽しめるのだが、惜しい点がある。ネイキッドの390デュークも2017年に第二世代になったが、こちらは数々の変更を受けた。一方RC390は、第一世代でエンジン下部後方からチラリと見えていたサイレンサーが、一般的なバイクのような仕様になった程度。乗れば、スポーツを十分楽しめる素養を持つモデルだと感じられるのだが、第二世代として比較すると、変更点の多かった390デュークに注目が集まってしまう。それが惜しい。

 

KTM RC390のディテール

GOOD POINT
KTM RC390 エンジン
現在、日本で流通している水冷単気筒エンジン搭載車は250㏄が中心。そのなかで唯一、オーバー250㏄の水冷単気筒エンジンを手がけるのがKTMだ(傘下のハスクバーナもこのエンジンを使ったモデルをリリースしている)。やはり排気量が大きい方が、よりエキサイティングな走りを楽しめる

 

KTM RC390のソフト面をチェック

乗車姿勢
KTM RC390 乗車姿勢
身長171㎝/体重69㎏
シート高が高めのため、やや腰高な乗車姿勢になる。また海外のライダーを基準に設計しているせいか、国産単気筒よりもボリューム感があり、ハンドルバーの絞りが開き気味だと感じる。しばらく走るとなれるのだけれど…
足つき性
KTM RC390 足つき
シート高は820㎜とフルカウルスポーツの中では高めの数値。なので両足をつこうとすると、カカトが浮く。国産モデルよりもボリューム感はあるが、それでもスリム&軽量なので、この状態でもとくに不安はない
取りまわし
KTM RC390 取りまわし
単気筒エンジンは軽いモデルが多く、RC390もまったく問題なく取りまわせた。セパレートハンドルは取りまわしに不安を感じるという人もいるが、そのときは体を車体に密着させれば不安は減るはず。バランスをくずしても軽いので支えやすい
Uターン
KTM RC390 Uターン
排気量があるぶん、250㏄よりも低回転域のトルクがあるので、エンストの心配なくUターンすることができた。ただ倒立フロントフォークを採用しているため、ハンドル切れ角が少なく、ハンドルをフルロックしても、思ったほど小回りできなかった

ジャンルを問わず二輪好き淺倉が斬る

回すのがとても楽しい!

単気筒エンジンは、弾けるような鼓動感が魅力。振動すらも愛おしく感じる。ビッグシングルといっても高回転型エンジンなので、低速トルクがメチャクチャ太いわけではないが、やはり2気筒や4気筒に比べると力強く感じる。でも、やっぱりコイツはスポーツシングル。高回転まで回してこそおもしろい、上の伸びが実に気持ちいいのだ。車体サイズは弟分の125とほぼ共通。コンパクトで軽量なシャシーに、パワフルなエンジンを搭載しているのだから、振り回すのが楽しい。サスペンションは硬めで、割り切った高荷重設定。スパルタンさではクラス随一。気になるのはハンドル、絞りが浅く幅が広い。フロントに乗るにはいいポジションだが、どうも好きになれないなぁ…。

ベテランツーリングライダー栗栖が斬る

単気筒の可能性を実感する

基本的なエンジンシステムである単気筒は、シンプルであることに加えて軽量なので、バイク用エンジンとして古くから採用されている。一般的にシングルエンジンは低中回転型だが、RC390の水冷シングルエンジンは中高回転特性を重視した設定だ。しかも125や250と共用するシャーシを採用していることから、車重が150㎏未満ととにかく軽量。エンジン特性自体は排気量のわりには低回転でややトルク不足を感じるものの、瞬発力の高いピックアップを見せ、高いスポーツ性を発揮する。足まわりの性能もハイスペックで、ロードゴーイングレーサーと呼べるほどアグレッシブな走りを味あわせてくれる。そういう意味では、スポーツバイクとしての単気筒の可能性を広げたモデルだ。

KTM RC390のスペック

全長×全幅×全高
2,000×700×1,070(㎜)
軸間距離
1,300㎜
シート高
820㎜
乾燥重量
147㎏
エンジン型式・排気量
水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒・373.2㎤
最高出力
32kW(43㎰)/―rpm
最大トルク
35N・m(3.5kgf・m)/―rpm
燃料タンク容量
11ℓ
タイヤサイズ
F=110/70-17・R=150/60-17
価格
67万7,400円(税込)

KTM RC390 製品ページ

CONTACT

問い合わせ先
KTMジャパン
電話番号
03-3527-8885
URL
https://www.ktm.com/jp/

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