ピンと来るかこないか

C.ARAiも書いてますが、「スマホ」「スマフォ」のナゾについて。これは、考えれば考えるほど興味深い現象だなぁと思いますね。

だって、もしも「スマホ」を略さずに表記しようとするのなら「スマートホン」ということじゃないですか! 「ホン」ですよ「ホン」! 「PHONE」を「ホン」と書く! それってどこの昭和30年代だよ、という感じです。でもこれが、若い子たちまで浸透しているワケですからねぇ〜。「キミは、テレフォンじゃなくテレホンと書くのか?」と問いつめたくなりますが、まぁたぶん「スマフォ」では語感が悪いということなのでしょう。「フォ」って、なんだか空気が抜けていく感じの音だし、それで単語が終わるというのはあんまり気持ちよくありません。実は日本人というのは、けっこう高度な「語呂・語感」の判断基準を持っていて、しかもその判断感覚というのは、日本人の間でほぼ統一されてるんだよなぁ〜なんて思います。

たとえば、「ビタミン」の種類なんかがそうですね。「ビタミンB1・B2」は「ビーワン・ビーツー」と読むわけですが、「B6・B12」なんかは「ビーろく・ビーじゅうに」と読みます。「ビーシックス・ビートゥエルブ」でもいいハズなのに…。これは誰が決めたわけでもなく、単なる語呂・語感で判断しているだけ(だと思う)。ゴルフのスコアなどもそうで、「−4打・−5打」のことは「フォーアンダー・ファイブアンダー」なんて言ったりします。しかし「−13打・−14打」とかになってくると「じゅうさんアンダー・じゅうよんアンダー」なんて言ったりする。「英語で読み始めたんなら、最後まで統一しろよ!」とツッコミたくなりますが、ともかくこれも、単なる語呂・語感だけの話(だと思う)。やはり日本人には、共通の判断基準というのがあって、自然と読み分けているわけですね。

略し方についても、やっぱり語呂・語感が重視されます。スマートフォンを略そうと思ったとき、たとえば「スマフォン」じゃああまりにも…ねぇ。「ート」くらい言えよ!ってな感じですから。じゃあ「スーフォン」? 「マーフォン」? …う〜ん、どれもなんだかピンと来ませんねぇ。「スマホ」と言い切ったときのハマリ感? コレだ感? そういうのがありませんよねぇ。悠久の歴史の中で熟成された「日本人の略しセンス」が、「スマホ」という表記を作り出したのだと思います(大げさ)。

そういえば、マンガ家でエッセイストの東海林さだおさんも書いていました。「インスタントラーメンの歴史は、縮めようとしてついに縮められなかった歴史でもある」と…。「インスタントラーメン」というのは非常に長い単語であるにもかかわらず、確かにこれを略した言葉はないわけですよ。パッと思いつくのは「インラー」とか「インメン」あたりですが、どちらもピンと来ない。「インラン」に至っては意味が変わってしまいます(笑)。悠久の歴史の中で熟成された「日本人の略しセンス」で考えてみると、及第点はひとつもナシ。センスのない略し方をするくらいなら、縮めたくはない。そしてついに日本人は、「インスタントラーメンについては略さず」と決めたワケですね(大げさ)。

ともかく、こういう非常にあいまいな感覚が、けっこう多くの人の共通認識になっているというのはオモシロいなと思います。日本語というヤツは世界でもかなりやっかいな種類の言語らしいですが、その一方で日本語にしかない楽しみもある。こういう内輪ネタで盛り上がれるのも、日本人に生まれたシアワセなのかもしれない…なんて思うのです。

マンボサイトー

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マンボサイトー

「マンボ」というニックネームはマンボウ似であることから名付けられ、当初はかなり嫌がっていたものの、最近ではそれほど気にならなくなってきた。ビッグバイクよりも中小排気量 の方が好き、人気車種よりもマイナー車の方が好き、というあまのじゃくな性格の持ち主でもある。

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