エアバッグは身につける時代!?

創立55周年を迎えるイタリアのモーターサイクル用ウエアメーカー、アルパインスターズの2019モデルの新作発表会に行ってきた。会場では、新デザイン・機能のレザーアパレルとテキスタイルアパレル、長時間のツーリングに適した全天候型ジャケット・パンツなどなど、ロード系67点とオフロード系64点の新作を発表。モトクロスウエアに関しては今年7月、ロード系ウエアは9月に発売開始とのことだ。

 

2月27・28日に都内で行われたALPINESTARS 2019 A-TECH TOKYO MEDIA SESSIONのようす

 

僕的にアルパインスターズのアイテムで注目しているのは、この春から(2018春モデルってことね)いよいよ市場投入されるモーターサイクル用エアバッグのテックエアだ。アルパインスターズは、レース分野のウエアやアイテムに力を入れているメーカーなのは周知のとおりだけど、エアバッグの開発にもいち早く取り組んでおり、MotoGPなどのレースシーンではすでに実用化。MotoGPではエアバックの着用が義務付けられることもあり、各つなぎメーカーへの供給も始めるという。そしてこのレース用エアバッグと同じ技術を採用したストリート用のエアバッグも市販も開始するというのだ。これが僕は気になってしょうがない。

 

2018春モデルの『VIPER JACKET TECH-AIR COMPATIBLE(6万7,800円/税別予価)』。エアバックのシステムは別売り

 

 

これがTECH-AIRのエアバッグの中枢『TECH-AIR STREET AIRBAG SYSTEM(18万円/税別予価)』。各ジャケットのインナーとして取り付け、システムとエアボンベは背面のプロテクターに内蔵されている

 

このモーターサイクル用エアバッグのテックエアのすごいところは、エアバッグ発動のために、車体をライダーでワイヤーでつなぐことも、トンネルなどの遮蔽部に弱く、誤差の大きいGPSも必要としないところだ。ヤマハのYZF-R1やCBR1000RRなどのハイエンドスポーツバイクにも搭載される、ライダーの動きを感知する慣性計測センサーを内蔵しており、ライダーの転倒や、事故を独自に検知してエアバッグを展開、ライダーを衝撃から守るのだ。

 

ただレース用のエアバッグと違い、ストリート用のエアバッグの開発はかなり難しかったという。というのもストリートでは、スリップダウンやハイサイドといった挙動のわかりやすいレースシーンにありがちな転倒状況検知だけでは足りないからだ。ストリートでは、単独転倒だけでなく、事故などでの対象物への激突や停止時の後ろからの車両の衝突。また立ちゴケとも区別して検知しなければならないため、さまざまな状況を想定したアルゴリズムを組む必要があるからだ。

 

またエアバックとして展開するバールンそのものもレース用とストリート用では形状が異なるという。レース用が単独転倒をメインに想定し肩や鎖骨、背中が中心のエアバックが展開されるのに対し、ストリート用は対障害物保護のため胸部前面を重視。また正面衝突などではレースとシーンの転倒とは比べられないほどの衝撃を生むため、気室の容量もほぼ2倍になっているという。

 

こうなると気になるのはモトクロスなどのオフロード分野への転用だが、こちらは現在も開発中とのこと。というのも飛んだり跳ねたり、スライドしたりするオフロード走行では、転倒及びクラッシュ状態なのか、走行状態なのかの検出が難しいのだとか。ただ、ダカール・ラリーなどに出場するサポートライダーにはセンサーを取り付けてデータを集積し解析しているという。何年後という具体的な指標は今回の取材では得られなかったが、センシングの進歩やアルゴリズムの解析によって、いずれはモトクロス用のエアバッグも登場するものと思われる。

 

2019年モデルの発表会では、このテックエア・ストリートに対応する数種類のジャケットもお披露目され、二輪ジャーナリストたちから注目を集めていた。

 

やたぐわぁ

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やたぐわぁ

本名/谷田貝 洋暁。「なるようになるさ」と万事、右から左へと受け流し、悠々自適、お気楽な人生を願うも、世の中はそう甘くない。実際は来る者は拒めず、去る者は追えずの消極的野心家。何事にも楽しみを見いだせるのがウリ(長所なのか? コレ)だが、そのわりに慌てていることが多い。自分自身が怒ることに一番嫌悪感を感じ、人生の大半を笑って過ごすことに成功している、迷える本誌編集長の44歳。

コメント 1件

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    by 谷田貝2020/7/24 22:08

    メガネの位置が低すぎて腹立つw

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