モーターショー雑感

終わっちゃいましたねぇ、2年に1度の東京モーターショー。今期の人出は812,500人で前回の2013年比で90%だったとか。もちろん僕も会期中何度か取材に足を運んだけど、確かに前回の酉の市か? 初詣か?といったふうの身動きがとれないものすごい人出には出会わなかった…。まぁ、動員数は天候などにも左右されるというので一概に10%減って残念、と言い切ってしまえるのかはわからないけどね。ただ、二輪業界に身を置く者としては、イタリアで行われるヨーロッパ最大にして100年以上の歴史を持つミラノ国際モーターサイクルショー(EICMA/ミラノショー)と会期が前後してしまったことが残念だった。大抵はこのミラノショーの方が日程的に前に行なわれることもあり、日本のモーターショーにはミラノショーで発表されたモデルがそのまま出てきたり、さらに日本で追加発表される隠し玉があったりして盛り上がる。それが逆になったことで、なんだか世界の二輪業界における日本の価値というか、なんというか「国内外のメーカーの視線は今や日本ではなく、アジアに向いているんだなぁ…」ということを改めて肌身で感じてしまったのである。

 

ミラノショーでは、予想どおりドゥカティが400cc版のスクランブラーを発表し、BMWもそのフィロソフィに基づいた313ccの後傾シングルエンジンを搭載したロードスポーツバイクを発表。今までビックバイクしか興味のなかったメーカーたちがミドルクラスに注目している。そういえばちょっと前にはトライアンフがオフィシャル発表で「250のマシンを作っている」なんて言ったりもしてたなぁ。もちろん、これらのバイクは日本市場にもやってくるだろうし、ユーザーが選べるオートバイが増えることはいちライダーとして大歓迎である。

 

でもね、この一連の動きがアジア市場ありきってところが悔しくてしょうがない。

 

もともと日本の人口から発生できる国内のオートバイ市場規模なんてたかが知れている。バイクブームがもう一度来たってそれは変わらず、世界市場を左右するような大きなマーケットになることはない。でもね、それでも日本は世界4強のホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキを擁するバイク王国なのである。そのバイク王国のバイク好きの住人からすると、このアジアのオマケみたいな扱いはなんだかちょっと…いや、かなり悲しい。少なくとも250や400のバイクといったらまず日本だろう? タンデムスタイルやアンダー400といった中小排気量がメインの雑誌を作っていると、なんだかそれをものすごく感じてしまうのだ。

 

かつて、日本はイギリスを中心としたヨーロッパから、その圧倒的な品質をもってバイク王国の座を奪って今の地位を築き上げた。その陰にはBSA、ノートンといったメイド・イン・ジャパンが蹴散らしたメーカーも数多い。これはヨーロッパのバイク乗りが「自国や隣国のバイクよりも、はるか極東の島国がつくるバイクの方がいい」と選んでくれた結果である。幸い現在は自動車産業は輸出入における関税がしっかりしているおかげで、バイク業界がいきなり他国のメーカーにとって代わられるなんてことはないだろうが、成熟産業と思われた液晶テレビ業界は、いきなり他国間での下剋上が起こりうることを知らしめた。時代は繰り返すというが、次に蹴散らされるのはどこの国で、蹴散らすのはどこのメーカーだろうか? もしかしたら両者が同じ国だったなんて喜劇も十分ありえると思うのだ。

やたぐわぁ

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やたぐわぁ

本名/谷田貝 洋暁。「なるようになるさ」と万事、右から左へと受け流し、悠々自適、お気楽な人生を願うも、世の中はそう甘くない。実際は来る者は拒めず、去る者は追えずの消極的野心家。何事にも楽しみを見いだせるのがウリ(長所なのか? コレ)だが、そのわりに慌てていることが多い。自分自身が怒ることに一番嫌悪感を感じ、人生の大半を笑って過ごすことに成功している、迷える本誌編集長の44歳。

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