横浜市民熱狂のシウマイ?

 この前テレビをつけたら「横浜市民熱狂のシウマイ」という文字が目に飛び込んできた。なにか新しいシウマイが話題なんだ、と番組をそのまま見ることにした。横浜の名物といえばご存じのとおり崎陽軒のシウマイがある。横浜出身の僕は死ぬほどシウマイが好きというわけではないが、崎陽軒のシウマイ弁当は新幹線に乗るときによく食べるし、無性に食べたくなるときがあって近くの売店で買うこともある。小さい頃から慣れ親しんでいる味だ。横浜には崎陽軒のシウマイ以外に名物といえるものがほとんどないから、シュウマイが話題になっていると聞けば地元民としては「おっ?」となる。

 

 ところが番組をよく見ていくと、新種のシウマイが話題になっているのではなく、崎陽軒の経営戦略に迫った内容だった(弁当へのこだわりがわかっておもしろかった)。だから“熱狂”という言葉を使ったテレビ制作側の意図にヤラレたわけだ。横浜市民で熱狂してシウマイを食べている人はまずいないだろう。辞書を引けば「非常に興奮し熱中すること」とある。横浜の地で創業100周年を超える崎陽軒のシウマイは身近なもので、いわば安心できる食べ物であり、熱狂とは対極にあるものだと思うのだ。僕みたいな地元民を引き付けるためのねらいなのか、何をおおげさな…、とそのテレビ番組にあきれたものだった。

 

 もっとも、本当に熱狂している説も完全否定はできない。弁当を開ける瞬間はワクワクしたりうれしい気分になる。番組内ではシウマイ弁当に強いこだわりを持った一般人も出てきたし、「横浜市民はシウマイ弁当を食べるときにどのおかずから食べるか順番が決まっている」というような説も紹介されていた。それはシウマイに限らず食事の際の順番は人それぞれこだわりがあるのではという気もしたが、熱狂という言葉のニュアンスに問題があるだけで、多かれ少なかれみんなシュウマイに熱を上げているのかもしれない。

 

 困るのは、横浜市民ってシウマイに熱狂しているんでしょ?と他県民から言われることだ。たしかにシウマイは好きだけど熱狂って違うと思うんだよなぁ…。そんなことを考えながら、大学時代のレポートで「サッカーのワールドカップに日本中が熱狂」という表現を使って先生に注意されたことを思い出す。そうじゃない人もそりゃいるよ。自分も使ってんじゃん、という反省とともに、表現の誇張に気を付けたいなとあらためて思うのであった。

イトウくん

written by

イトウくん

「人生最後の晩餐は何がいい」と聞かれたら、味噌煮込みうどんと正気で答える、愛知県出身ではないのに名古屋メシに熱狂する28歳。ロングツーリングといえば味噌煮込みうどんを目指す名古屋までが鉄板(あぁ名古屋に住みたい)。編集部内では年齢的に若手といわれているが、外見的には35歳前後といわれることもあり、焼き魚や煮物の食卓に心和む男にフレッシュ感は皆無。若いのかおっさんなのか微妙な年ごろである。

このコラムにあなたのコメントをどうぞ

この記事が気に入ったら
いいね!とフォローしよう

タンデムスタイルの最新の情報をお届けします