ドリンクホルダーの可能性

とある日のできごと。

 その日はショップさんへ取材に行く日で、自宅から直行する予定。ボクは移動時間のみに余裕が持てる程度に、ギリギリまでベッドで寝息を立てていた。

 問題なく予定していた時間に目覚めて、そそくさと服装を整え、愛車のニンジャに載せるタンクバッグに荷物を詰め込む。そのときふと、

“あ…お腹空いたなぁ…”

と感じた。朝ご飯を食べないことは慣れているし、こうした気分になるのもめずらしいことではない。しかし、そのとき机の上に置いてあったじゃがりこ(じゃがバター味)に目が留まった。先日遊びに来た姉が置いてったものだ。

 

“さすがにこれ1つ食べるのは時間かかるよなぁ…いや……でも…食べたいよなぁ…コレ”

そのとき、あるアイデアが浮かんだ。ボクは同じく机の上に置いてあった、飲料水の入ったペットボトルを手に取り、容器底面の円の面積をじゃがりこ(じゃがバター味)と比べてみた。…だいたい同じだった。

“よし…いける”

 

 リュックとタンクバッグにヘルメットなどなど。そしてじゃがりこ(じゃがバター味)を手に取り、ボクは駐車場へ下りる。ボクのヘルメットはジェットタイプ。グローブは物がつかみやすい指ぬきタイプ。そしてボクのニンジャのハンドルには…ドリンクホルダーがあった。

 もうお察しの方もいるだろう。これらのアイテムから導き出される答えは一つ。ボクはニンジャのバイクカバーをはがすと、ドリンクホルダーにじゃがりこ(じゃがバター味)を突っ込んだ。

 

 入った。

 

 入ってしまった。まぁ計算通りなのだが。スタータースイッチを押し、軽快な並列2気筒の音を響かせる。そして、じゃがりこ(じゃがバター味)の蓋を開ける。

“これはまさか…ほんとにバイクまたがったまま食えるのか…?”

ボクは不気味なほど違和感のある場所にマウントされたじゃがりこ(じゃがバター味)を一本手に取り、口に運んだ。

 

 食べられた。

 

 食べられてしまった。「こりゃスゴい!!(?)」とボクは歓喜し、ニンジャを道路へと走らせた。速度を出すと、じゃがりこ(じゃがバター味)の一本一本が振動で揺れ出す。ふとメーターを見ようとすると、視界の端に踊り狂うじゃがりこ(じゃがバター味)が覗くという異様な光景に、ボクは見たことのない生き物を発見したときのような、異様な気持ちになった…。

 

↑コックピットにじゃがりこがあるんだぜ!? それだけでハッピーな気分にならない!?

 

 信号待ちのとき、連なる車両の先頭で一人じゃがりこ(じゃがバター味)を貪る。隣のクルマの運転手がチラ見してくる。

“どうだろう、うらやましかろう。この開放感の中でじゃがりこを食べられる幸福、クルマに乗っている貴方にはわかるまい!”

ボクはザクザクと音を鳴らしつつ、至福の時を過ごした。

 いやぁバイクに乗りながら、飲むだけでなく食うこともできるとはね…。ちなみにこのドリンクホルダー、納車して1番最初にバイクに取り付けたアイテム。モノを大事にしていると、いいことがあるんですよ皆さん。

 

 陸橋にさしかかったとき、振動でじゃがりこ(じゃがバター味)がホルダーから外れそうになった。あわてて、片手で押し込む。後方から続く車両に、”前からじゃがりこ(じゃがバター味)の雨が降りかかって来た!”なんて怒られたらとんでもない。一生懸命押し込むと、容器が少しへこんだところでピタッと安定した。なるほど。このぐらいハードに固定した方がいいということか…。みなさんもやってみるときは、容器がへこむぐらいを目安に固定してほしい。

 

 かくしてボクは、空腹を満たしつつ目的地まで移動するという偉業をやってのけた。途中何人かのライダーと並走したりしたが、心なしか視線を感じた。みんな羨ましいんだろうなぁ。

 後ほどイトウさんにこの話をしてみると、「へぇ…」って感じ。この素晴らしさがわからないとは…もったいない男だなぁ、イトウさん。今度イトウさんのトレーサーにドリンクホルダー付けといてあげようかな、5箇所ぐらい。

キムロウ

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キムロウ

バイク歴3年。愛車はトライアンフ・ロケットⅢ ロードスター。 トラスフレームを見たらとりあえず「バンディット!」とか言っとく、バイクの技術・知識ともにテキトーなテキトー人間。“修行”と聞くと不思議とやる気が出てくるジャンルに属しており、現在編集部にてバイク修行中。暇があると隣駅まで散歩したり、道着を着てバイクに乗ったりして、ほっとくとテキトーな場所で寝たりテキトーに刀を振り回し始める23歳。ネクタイと、JUJUと中島みゆき、あと“黒”が好き。べつに心は黒くない。

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