HONDA HAWK11

HONDA HAWK11(2022年モデル)走行

レブル1100・NT1100に続く、CRF1100Lアフリカツインをベースにしたモデルに試乗してきた。9月29日に発売したロードスポーツ・ホーク11(イレブン)は、いったいどんなバイクなのか? 乗った感想を交え詳しく解説していこう。

文:濱矢文夫/写真:関野 温

際立つカフェレーサースタイル

HONDA HAWK11のスタイリング

車体とエンジンを流用し別のバイクに仕上げた

ロケットカウルを装着したカフェレーサースタイルの新型機種。カフェレーサーは、60年代イギリスで生まれたバイク文化であり、改造スタイル。70年代にそれを取り入れた市販モデルが日本メーカーからも登場していた。ホンダならCB400FOURや、CB750FOURⅡなどもそのエッセンスを活用したモデルだった。ロケットカウルだったら80年代半ばのGB400TTMkⅡの方が先だったりする。

 

ホーク11を知るのにそういう昔話の知識は、まぁ必要ない。じゃあ何で話題にしたかというと、そういう歴史ある走り屋風スタイルをあえて採用したことに注目するため。最近、古きを温めたカラーやディテールのネオレトロがはやっているよね。各社から発売され、一つのカテゴリーと呼べるくらいになった。そのネオレトロの波が広がり、カフェレーサーにやってきた。MVアグスタのスーパーヴェローチェがあり、このホーク11の少し前にはトライアンフからスピードトリプル1200RRも出た。価格は違えど共通するのは、ロケットカウルに前傾姿勢のカフェレーサースタイル。先に登場してヒットしているのに影響されたのではなく、同じタイミングで同じところに注目した機種が並ぶのがおもしろい。これが次のトレンドかもしれない。

 

ホンダで開発者たちは、CRF1100LアフリカツインやNT1100のフレームとエンジンをそのまま使ってオンロードスポーツモデルを作る最初の段階から、ロケットカウルが中心にあったと説明。これを実現するために他の部分を決めていった。フレームはアフリカツイン&NTからスイングアームピボットを軸にして前へ2.5度回転させ、前後17インチタイヤを履くオンロードスポーツとして成立する、25度のキャスターアングルと98㎜のトレールにした。スタイルを優先し燃料タンク上面を低くしたことで、行き場を失なったエアクリーナーボックスの容量確保にとても苦労したそうだ。

 

シートに腰をおろしてアッパーブラケット下にクランプされたハンドルをつかむと、ロケットカウルの裏面のザラザラとして均一ではない面がしっかり見える。わざわざ手間がかかるFRPにしたのは、一般的なABS樹脂だと複数のパーツに分かれるところを、ワンピースで作れること=スムーズな面にできるから。ミラーをハンドル脇からニョキッと出したのも、カウルの美しさを大切にしてカウルマウントにしたくなかったから。カーボンに使われるバキューム製法も交えながらも人の手で作る部分が残る手間のかかったカウルは、このバイクのアイコンである。そのザラザラとした裏面の肌をわざと見せたくてコックピットのデザインをシンプルにし、なるべくコード類も隠した。こういう演出はキライじゃない。ミラーはちゃんと後方が見えるが、一般的な位置より視線を動かす量が多いのと、低い位置だから後ろにSUVなど背の高い四輪がくると、ヘッドライトがちとまぶしい。

 

アフリカツインが1000から1100になったときに、気持ちのいいトルクフィールが高回転まで続く1100エンジンのできのよさをとても気に入ったけれど、ホンダの技術者も同じ気持ちだったよう。そのフィールをそのままに、ECUをセッティングして、オンロードスポーツとしてのスロットルレスポンスなどを作りこんだ。270度クランクの並列2気筒エンジンは、低回転から高回転のどこからでも右手をひねるだけで車体を押し出す加速が得られるフレキシブルさが魅力。5000rpmを少し超えてから速度の伸びに拍車がかかるけれど、ライディングモードをもっともレスポンシブルな“スポーツ”にして大きくスロットルを開けていっても怖さがない。

 

HONDA HAWK11(2022年モデル)走行

 

運転に慣れていない人にありがちな、パーシャルからややラフなスロットル操作をすると、ガツッとしたトルクが出て、いわゆるドンツキが若干出てギクシャクしたようになる場面があるけど、そこは丁寧にすればいたって問題ない。最高出力は102㎰。やっぱりストリートで遊ぶなら100㎰くらいがちょうどいいと実感。積極的に使えて、かつもどかしさがない。レイアウトに苦労したエアクリーナーボックスから伸びた吸気口がカウルの脇にあり、端切れのいい排気音と、ときおり聞こえる吸気音が生き物の息吹のよう。不満ではないけれど“スポーツ”“スタンダード”“レイン”とあるプリセットのライディングモードの“スポーツ”と“スタンダード”の違いが小さいから、もっとはっきり変化を出した方がモード選択する理由ができる気もする。

 

流用フレームを前に傾けた車体姿勢と、フロント51%・リヤ49%の前後輪分担荷重にした車体のハンドリングは素直。クセらしいものがまったくない。150㎜あるサスペンションストロークもあって、フロントブレーキを効かせて前荷重を強めていきながらのターンインが小気味いい。高い旋回スピードで深くリーンしている途中で路面変化があっても、前後のサスペンションは余裕でいなして不安定になりにくい。懐が深いという表現がとても似合う。ソフトなあたりでも沈んだ先でちゃんと減衰が効く仕事をしている足だ。1510㎜と長めのホイールベースで、倒すとすぐ向きが変わるようなクイックさはない。けれど、そのしなやかさで、寝かせながら曲げていく動きが楽しい。シャカリキに速く走らなくても“スポーツしているぞ!”って感じがある。優等生的な機種が多いホンダにしてはキャラが立っていながら、乗り手を選ばず楽しめる仕上がり。いろいろなレベルのライダーがスポーツライディングするおもしろさを味わえ、ゴキゲンになれると思う。

インプレッション by スタッフ・カトー

リッターオーバーだからと身構える必要なし!

HONDA HAWK11(2022年モデル)走行

車格は1,000㏄以上あるバイクとは思えないほどスマートで、214㎏という数値ほどの重量を感じない。乗車姿勢はほどよく前傾になり、ぱっと見はタンクが長くハンドルまでの距離が遠く見えるが、実際は操作性にほぼ問題なし。走り出しはクラッチ操作を少し雑に行なってもエンストすることなく力強く発進。峠道のコーナーでは2速か3速か少々迷う場面も。意外とピーキーな面もあるためアクセルを一定にたもつとコーナリングが楽しめた。気になる点は身長155㎝で座高が低いぶんミラーにハンドルやレバーが映りこむこと。ミラーの位置を数㎝高くなれば、もっと後方確認がしやすくなると思われる。

次ページ:HONDA HAWK11のディテールをチェック!

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問い合わせ先
Hondaお客様相談センター
電話番号
0120-086819
URL
https://www.honda.co.jp/motor/

※記事の内容はNo.243(2022年6月24日)発売当時のものになります

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