HONDA NT1100

HONDA NT1100(2022年モデル)走行

成熟した欧州市場でオールラウンドのツーリングモデルとして展開されていたNT-Vシリーズ。その後継的な位置付けで今回デビューしたのがNT1100だ。日本市場も気が付けば成熟期まっただ中で、オールラウンドのツアラーが受け入れられるに十分な土壌となっている。というワケで、まずはその実力をチェックしてみよう。

文:岩崎雅考/写真:関野 温

走りたいという欲求に直結する走りを楽しめるパッケージ

HONDA NT1100のスタイリング

乗る楽しさを演出するライダーを刺激する機能

四輪ではだいぶ前からプラットフォームの共有があたり前の印象だけど、バイクにおいてもプラットフォームとまではいかなくても、ベースエンジンを共有するモデルは最近増えてきている。ここで紹介するNT1100も、ベースエンジンがCRF1100Lアフリカツインとレブル1100と同じだ。ただ、アフリカツインとレブルでは味付けが違った。レブルの方が、ドコドコとした鼓動感が強かったのだ。初めてレブルに乗ったとき、ベースエンジンは同じでもここまで変わるんだと驚いたことを覚えている。

 

そんな記憶があるだけに、NTが発表され、ベースエンジンがアフリカツインと同じだとアナウンスされて以降、どんな味付けになっているのかが気になっていた。そして、そのロングツアラー然としたスタイルから、かなりジェントルな鼓動感の少ないフィーリングを予想していたのだ。ところが、実際に乗ってみるとものの見事にその予想は裏切られた。けっこう鼓動感のある味付けなのだ。残念ながら今回は2時間という短い時間での試乗だったため、その振動が長時間乗ったときにどれくらい疲労を蓄積するのかはわからないけれど、スポーティさにつながる鼓動感が“おっ、これ楽しいかも”と気分を高揚させてくれたのだ。そして、その走らせる楽しさを高めてくれるのが、右に左にヒラヒラと切り返せる軽快さだ。直進安定性があるだけでなく、ワインディングをリズミカルに駆け抜けるスポーティさもあわせ持つ。この走らせる楽しさがあるからこそ、多くのライダーはもっとバイクに乗りたいと思うのだ。

 

動力系に話を戻すと、このモデルはデュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)を採用するので、オートマチックモードを選べばライダーがシフトチェンジすることなくスロットル操作のみで走ることができる。オートマチックモードだけでも四つの設定があってシフトタイミングが変わるので、車両の性格はかなり変わる。走るフィールドや気分に応じて車両の性格を変えられることで、これまた乗りたいという気持ちを後押ししてくれるのだ。このDCT、2010年にVFR1200Fに搭載されてから進化を重ねて、すでに熟成の域に達しているシステムなので、アップダウンいずれのシフトタイミングにも違和感はない。もちろんマニュアルモードを選べば、ライダーの意思どおりにシフトチェンジすることも可能だ。さらにこのDCT制御モードとは別に、エンジン出力とエンジンブレーキのレベルが変わる五つのモードが用意されている。そのうちの二つは、乗り手が好みの設定にすることが可能となっている。まさに七変化といった感じで、数台の車両を所有しているようだ。

気楽さすら感じてしまうオーバーリッターツアラー

HONDA NT1100(2022年モデル)走行

 

車体にしても、極低速でのバランス性にすぐれているから、ツーリング先の不慣れな細い道に入ってもパニックにならずにすむ。多くのライダーが苦手意識を持っているUターンだって、その高い安定感とストールしないエンジン、さらに効き具合を微妙に調整しやすいコントローラブルなブレーキの組み合わせで、急にライディングスキルが上達したかのように回れるようになるはずだ。車重が250㎏弱あるので、押し歩く際には重さを感じてしまうけれど、一度走り出してしまえば、高い安定感によってその重さを感じることはまずないであろう。加えてトラクションコントロールやクルーズコントロールといった電子制御機能も充実しているし、グリップヒーターが標準装備されたうえに、アップルカープレイやアンドロイドオートといったスマートフォンとのコネクトもできる。これらライダーをさまざまな面からサポートする充実したパッケージを見れば、1000㏄オーバーだから…、と気負うことなく気軽に乗り出せるバイクなのだ。

次ページ:HONDA NT1100のディテールと足つきをチェック!

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Hondaお客様相談センター
電話番号
0120-086819
URL
https://www.honda.co.jp/motor/

※記事の内容はNo.239(2022年2月24日)発売当時のものになります

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