2気筒、ツインのエンジンはいろいろあれど、現行車の中で多勢を占めているのが、並列2気筒、別名パラレルツインだ。しかも、最近はハイパワーな水冷式で270度のクランクレイアウトをもつパラレルツインが続々登場しているぞ!
写真:関野温、文:谷田貝洋暁
270度クランクの心地良い鼓動感に酔いしれる
SUZUKI GSX-8TT のスタイリング
現行モデルに最も多い 並列2気筒エンジン
V型、90度L、水平対向などなど、2気筒エンジンにもいろいろあるが、その中でも現行モデルに最も多く採用されているのが、並列2気筒、もしくはパラレルツインと呼ばれるエンジン形式だ。
その名の通り、隣り合うシリンダーが並列に並んだレイアウトを採用。このためV型、90度Lツインのように前後方向へのシリンダーの張り出しがなく、エンジンのサイズが前後方向にコンパクト。その代わり、V型、90度Lツインのようにシリンダーのオフセット幅が縮められず、エンジンの左右幅が大きくなる…というのがパラレルツインエンジンの外観的特徴だ。
中でも〝エンジン前後長を短くできる〟という特徴が、前輪分担荷重が強めな現代のスポーツバイク作りのセオリーにマッチ。例えば、ホンダのアフリカツインや、スズキのVストロームシリーズなど、〝以前のモデルは90度Vツインだったのに、新型にはパラレルツインを採用する〟何てことが起きるのは、このエンジン前後長の短さを求めてのことに他ならない。エンジンの前後長が短い。これだけで車体設計におけるフロントタイヤのレイアウトに大きな自由度が生まれる。
つまり、パラレルツインならいろいろなキャラクターのバイクが作りやすいのだ。
そんなエンジンレイアウトの特徴を存分に利用しているのが、スズキの775㏄エンジンを搭載したモデルたちだ。ネイキッド(8S)、フルカウル(8R)、ネオクラシック(8TT/8T)、アドベンチャーツアラー(Vストローム800シリーズ)といった多彩なモデルに搭載。フロント荷重が強めのフルカウルスポーツから、大きなフロント21インチホイールを履くVストローム800DEまで、さまざまなキャラクターのバイクがひとつのエンジンで作れるのは、このパラレルツインというエンジンレイアウトあってのこと。
しかも、スズキのすごいところはエンジンどころか、メインフレームまで共通化してしまっているところ。もちろん、シートフレームなどを取り付ける穴の位置などは違えど、強度やしなりといった車体のキャラクターの根幹を形作る部分の仕様は全車共通。モデルによってエンジンの搭載角度を変えることで、キャスター角などの設定を変更している。
ちなみに、今回の主役であるGSX‐8TTは、兄弟車である8Tと同じばかりか、ネイキッドモデルであるGSX‐8Sと仕様を共用。ディメンションが一緒なら、ハンドル幅やポジショントライアングル、サスペンションまで同じというから驚いてしまう。
1基のエンジンを作ったら、異なるジャンルのバイクへ応用搭載。現代におけるバイク作りにおいても、パラレルツインというエンジンはとても使い勝手がよく、これが大増殖の理由となっている。
多くの兄弟車が存在する775㏄パラレルツインエンジン
GSX-8TTが搭載するのは、スズキが社運をかけて開発したという270度クランクの775ccパラレルツインエンジン。現在、GSX-8TTをはじめ、4バリエーション6機種に搭載されている。すごいのは、エンジンだけでなくメインフレーム(シートフレームの取り付け部は異なる)まで共用していることで、ネオクラシックの8T/8TTから、ネイキッドの8S、フルカウルの8R。果てはアドベンチャーバイクのVストロームシリーズまで、エンジン&フレームを共用している。
あらゆるジャンルにフィットする 汎用性の高いエンジン
270度クランクは90度Vツインと音が同じ!?
またパラレルツインエンジンで忘れてはならないのが、〝ピストンをどういう位置関係で上下させるか?〟のクランクレイアウトだ。
左右のピストンが交互、互い違いに上下するのが180度クランクで、同時にピストンが上下するのが360度クランク。
前者は、〝パララララ…〟という、高回転域までフラットに吹け上がる軽やかなエンジンフィーリングが特徴。後者の360度クランクは、左右のピストンが同時に上下するため、強い鼓動感と低速トルクの強さがその持ち味。
また一方で、今回のGSX-8TTの270度クランクのように、あえてピストンの上下するタイミングを意図的にオフセットして、不等間隔燃焼としているエンジンもある。ちなみにGSX-8TTが採用する270度クランクは、90度Vツインと同じ燃焼間隔で、この不等間隔の燃焼タイミングのおかげでトラクションが掴みやすいとされている。
実際、走ってみて、270度クランクのパラレルツインはどうか? まず感じるのは、スポーティな速さだ。このエンジンには、「A(アクティブ)」、「B(ベーシック)」、「C(コンフォート)」の3種類の走行モードがある。一番元気な「A」モードにすると、スロットル操作に対するエンジンのレスポンスが非常に良くなり、集中してエンジンパワーをコントロールする感覚がこれでもかと味わえる。
そこから「B」モードにすると根本のエンジンキャラクターが変わるわけではないのだが、とても扱いやすく感じる。スロットルに対して、バイクが前に出過ぎるようなところがなくなり、通勤・通学といった日常使いで便利だ。
興味深かったのは「C」モードで、スロットルレスポンスがコンフォートになる分、つまらなくなるのでは? と思ったのだがそんなことはない。程よいエンジンレスポンスがGSX-8TT/8Tというマシンの車体キャラクターとマッチするのだろう、クルーザーに乗っているような、心地良い巡航感覚が味わえる。個人的な好みでは、3種類のモードでいろいろ走っていると、何だかんだと「C」モードにしている時間が一番長かったぐらいだ。
不思議なのは、同系エンジンを積んだ兄弟モデルもいろいろあるが、この「C」モードによるクルージング感覚が一番強く感じられるのはGSX-8TT/8Tだということ。他の兄弟車でもダラっと走ることは出来るし、クルージングが出来ないわけではないのだが、どういうわけかクルージングしていて一番楽しいと感じるのはGSX-8TT/8Tなのである。
このエンジンキャラクターと、16Lタンクによる400㎞に迫る航続距離や、座り心地の良いコンフォートなシートなどが相まって、ついつい走行距離が伸びる。GSX-8TT/8Tはそんなマシンに仕上がっている。
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※記事の内容はNo.-281(2026年10月27日)発売当時のものになります














