
大幅なマイナーチェンジを行ない、グレードアップした2019年モデルのYZF-R3。よりスポーティな走りを楽しめるようになったというが、その中身は順応性の高い万能バイクだった。
文:TOMO/写真:増井貴光
扱いやすいサイズに1クラス上の余裕
YZF-R3のスタイリング
乗り手もシーンも選ばない万能スポーツバイク
このYZF-R3の排気量は320㏄。姉妹モデルであるYZF-R25の排気量アップバージョンだ。車検制度の関係上、日本国内において320㏄という排気量は中途半端な気がしてしまう。しかしながら国外を見ればこちらがスタンダード。同じ車体サイズでも、70ほどの違いは加速や高速走行時の余裕を生む。そもそも250クラスといえば、ビギナーでも気負わず乗れて、ベテランライダーでも物足りなさを感じず十分に満足できる、手ごろなサイズ感が大きな魅力の一つ。そんな扱いやすさはそのままに、400㏄クラス並みのパワーを持たせたのがこのR3だ。いや、車格が軽量でコンパクトな分、キビキビ走るという面で運動性能は400㏄クラスよりも格上かもしれない。
最初にR3が登場したのは2015年で、今回は外装から中身まで多くの部分で新設計されている。前モデルはどちらかというとスポーティなモデルといえども、コミューター色の強いキャラクターだったのに対し、2019年モデルは“毎日乗れるスーパーバイク”を開発コンセプトに掲げ、スポーティさがより強調されたのだ。
おもな変更点としては、整流性を高めたカウリングや前傾になったライディングポジション、倒立フロントフォークの採用やラジアルタイヤ装着などなど。これらの変更で、スポーティな走りでのポテンシャルを大幅にアップしている。
とはいえ、実際に走ってみると、スーパースポーツバイクのような、神経質なほどの鋭さは感じない。反応がダイレクトで手応えも軽いけれど、ありすぎないパワーで扱いやすい。がんばらずにすっと身体になじむような、やさしい走りをしてくれる。ハンドリングも自然でなめらか。いたって普通のバイクだ。前傾がきつくなったというが、本気のスーパースポーツとは違う緩やかなもの。長時間高速道路を走行しても、たとえ街中で渋滞にはまったとしても、腕や腰に過度な負担がかかるような感じはない。今回サーキットでの走行テストこそしていないが、高速コーナーからタイトな峠道、街乗りや高速道路など、さまざまなシチュエーションにおいて、非常に順応性が高いバイクだと感じた。
どこか一つに特化しているわけではない。R25に比べたらほんの少しの排気量拡大である。だがしかし、それによるトルクの余裕からすべての動きを軽くし、力強くしているバイクだ。今回各部をグレードアップしたことで、スポーティな走りだけでなく、街中やツーリングといった実用面でも扱いやすさを増していた。そして峠道やサーキットでも楽しめる。これを扱うライダーの体格や熟練度など、幅広い層に高い満足度を与えてくれるバイクになると思う。
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※記事の内容はNo.208(2019年7月24日)発売当時のものになります