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現役最高齢のプロ野球選手であった工藤公康投手が、先日引退を表明した。全身を使ったしなやかなフォームから繰り出される伸びのあるストレートや大きく落ちるカーブを武器に、プロ通算224勝を上げた偉大なピッチャー、そしてボクのヒーローである。その姿にあこがれ、ブラウン管越しによく投げるフォームをマネしたっけ。

 

ボクが初めて工藤を知ったのはもう20年も前になる。兄の影響で野球を始め、小学3年生のときに地元の少年野球チームに入団した。自分たちが出場する少年大会の開会式が西武球場で行われたのだが、そのときに記念として購入したのが、工藤の写真&サイン入り下敷きだった。バックスタンドから撮られたであろうその写真は工藤のピッチングフォームを正面からとらえ、歯を食いしばったきびしい表情のすぐ横には今まさにボールが手から放たれようとする左腕があまりのスピードのため残像となっているという構図は今でもはっきり覚えている。右利きのボクがどうしてサウスポーの工藤に惹かれたのか今考えても不思議だけど、やっぱりそのフォームが魅力的だったんだろうな。

 

“当時”のライオンズは手が付けられないくらい強く、加えて地元が埼玉県ということもあって物心ついたときにはすでにチームのファンだった。3番秋山、4番清原、5番デストラーデがバッターボックスに立てば、ホームランを打ってくれるんじゃないかといつもドキドキしながら画面にかじりついていたし、工藤、渡辺久信(現ライオンズ監督)など盤石な投手陣を抱え7年間に6度も日本一になったまさにドリームチーム。西武が優勝し、最寄りのスーパーである西友が優勝セールをしてシーズンを終えるというのが恒例だったのも懐かしい。

 

ちょっと話が逸れてしまったけど、工藤はその後も移籍したホークス、ジャイアンツと、3つの球団でリーグ優勝&日本一を経験し“優勝請負人”と呼ばれ、最年長プレイヤーとして次々と記録を更新し“鉄腕”となった。ここ数年は成績が振るわず戦力外通告を受けることもあったけど、それでもいろいろな球団のトライアウトを受け現役であることにこだわった。そのチャレンジし続ける姿やスピリットにまたも感動したのだった。

 

48歳。プロ生活、実に29年。よくよく考えればボクが生まれる前からプロの第一線にいたということだ。これは日本プロ野球界の現役最年長記録らしく、それを、言い方は悪いけどもっとも消耗の激しいポジションであるピッチャーで達成してしまったのだからすごいとしか言いようがない。感情を隠さない少年のような溌らつとした表情、汗をぬぐうしぐさ、あのカッコいい姿をもうマウンド上で見ることができないと思うとすごくさびしいけど、心から拍手を贈りたい。本当に、お疲れ様でした。

KJ

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KJ

考えるよりも行動する方が好きな、いわゆる体育会系脳ミソの持ち主。先輩スタッフの破天荒ぶりを脅威と感じながらも、下克上を虎視眈々と狙っている。最近は、仕事と称していろんなバイクに乗っては、「このバイクいいっすね」を口癖に、次の購入ターゲットを思案中。〆切り前はあたふたしていることが多く、布団で眠ることを至上の歓びとしながら、今日もパソコンの前で夢の世界へ旅立つ。

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