民生品って乗りやすいのだ

僕の地元(正確にはとなりの市だけど)には、自衛隊駐屯地の習志野空挺団がある。そこで毎年、8月の第一週の土日に夏祭りが行なわれる。はるか遠い昔に親に連れて行ってもらった記憶があるが、久し振りに行ってみることにした。

このお祭りは、自衛隊の駐屯地を開放して行なわれ、普段はお目にかかれない内部施設を見学できたりするのだが、ヘリや訓練器具を間近に見られるだけでなんだかうれしい。と、会場でいきなり眼に飛び込んできたのが「試乗会→」の4文字。自衛隊での試乗会? いったいなんのことだ? ホームページなどには詳しい記載があったのだろうけど、ドロナワな僕はそんなものはいっさい見ていない。職業柄、試乗会というと連想するのはバイクやクルマであるが、自分で運転するのか、それとも乗せてもらうのかもわからない。まぁ、場所柄前者は絶対にないと思うが、KLXの自衛隊仕様があったりするかも…、いやいや空挺団だからね。空を…。なんて想像に尾ヒレどころか胸ビレや背ビレが付いてしまい、この猛暑のなか、念のため生ビールをお預けにしている自分がバカらしい(笑)。

さてさて試乗会場。あったのは軽装甲機動車と高機動車。とくにミリタリーマニアでもないのだが、なんだか気分が高揚してまう。だって戦車みたいな風貌のクルマだよ? 子供だろうがオッサンだろうが男子たるものここで鼻息を荒くしなくてどうする? まずは、どこらへんが“軽”なのかまったくよくわからないが、すべてが防弾ガラスと鉄板で覆われた軽装甲機動車からトライ。とにかく金属バットぐらいじゃどこを殴っても壊れないような作りで、隊員の会話から“ラヴ”の略称で呼ばれていることがわかる。ヘルメットを支給され、諸注意を受けたら試乗開始。あ、当たり前だけど乗るのは助手席や後部座席だ。いやぁ、軽装甲機動車の内部はエアコンがあってよかったが申し訳程度の効き具合。それとレバーなどの突起物や角がいたるところにあって乗り降りの際にヒザや肩をぶつけるのだが、これがことごとく痛い(笑)。しかもかなり運転しにくそうである。普段僕らが運転する乗用車というのは、恐ろしいほどまで乗り手にやさしく作られているのだと実感したしだい。

自衛隊仕様のKLXもこんなカンジで乗りにくいのだろうか? この後に乗ったでっかいジープ風の高機動車の荷台も決して乗り心地がいいとはいえない印象で、基本的に隊員は荷物扱いなんだと合点がいった。よく高速道路などで、荷台に自衛隊員を乗せたトラックを見かけるけど、あれは見かけ以上にツライことなのだろう。添乗の隊員さんに聞いてみれば走行中は会話もできないほどロードノイズや幌のバタツキ音がうるさいという。あんまり気にしたことなかったけど、やっぱり民生品って安全とか快適性がかなり高いレベルで保持されているんだなぁ…。この猛暑のなか、鉄板直張りの軽装甲機動車に乗る自衛隊員さんたちは元気だろうか? 「二酸化炭素排出量削減のため、空調装置は切るように!」なんて恐ろしいことを言われていないだろうか?

やたぐわぁ

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やたぐわぁ

本名/谷田貝 洋暁。「なるようになるさ」と万事、右から左へと受け流し、悠々自適、お気楽な人生を願うも、世の中はそう甘くない。実際は来る者は拒めず、去る者は追えずの消極的野心家。何事にも楽しみを見いだせるのがウリ(長所なのか? コレ)だが、そのわりに慌てていることが多い。自分自身が怒ることに一番嫌悪感を感じ、人生の大半を笑って過ごすことに成功している、迷える本誌編集長の44歳。

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