岩城滉一さんの鍵

 皆さん、明けましておめでとうございます。2018年です。

 今年も読者の皆様に楽しく読んでいただけるような誌面作りを努力いたします。何卒ご声援をよろしくお願いいたします。

 

 さて、今年はどんなバイクが発表されるのかな~、などなど、期待と希望あふれるコラムを書いてもいいのですが、僕としては去年の失態を振り返ることも大事だと思うのです。

 といいますのも、どうしても懺悔したい、そんな大失敗が去年あったのです。

 

 それはちょうど春先ぐらいの頃。

 いつも通り机で仕事をしていたところ、一本の電話がかかってきた。電話の主は姉妹誌スクーターデイズ(現在は不定期刊行)編集長のタローで、なんでも出先で急に取材の仕事が入ったらしく、カメラとか三脚とかライトスタンドとかを届けてほしいとの電話だった。

そのとき手が空いてたのが僕だったので、急きょ電車で取材させていただく方の自宅へ向かったのだが…。

 その取材先というのは、なんとあの俳優の岩城滉一さんだったのである。

 

 岩城滉一さんといえば、『北の国から』などの多くのドラマに出演し、近年でも『土竜の歌』といった映画に出演している有名俳優。しかもレーサーとしての活動もしているスゴイ人だ。世代がズレいる僕にとって知っているのはそれぐらいだけど、それでも名を言われれば顔が思いつくほどの有名人。

 そんな岩城さんが最近スクーターにハマッているとのことで、急きょ取材が決定したとのこと。

 

 いやぁそんな方の取材に携われるなんて、光栄極まりない。緊張しつつも岩城さんの自宅へ行き、本人とご挨拶。その時の緊張といったらもう…。

 1mぐらいの距離でお話をお聞きしたりして、体から力が抜ける暇がなかったけれど、滅多にない機会を楽しんでいたボク。しかしこのあと失態を冒すのだ。

 タローが岩城さんのヤマハ・マジェスティSを撮影するにあたり、僕はレフ板などのサポートをしていたのだが、そんな中「木村君、ちょっと車両のキー抜いてくんない?」と言われた。車両の置き撮りは、キーが映らないようにするのが基本。言われた通りキーを抜いた僕は、落としたりしてキズ付けたらいかんとポケットに入れた。

 

 ポケットに入れた。

 

 その後岩城さんご自身の撮影なども滞りなく進み、円満に取材は終了。帰社する電車の中でいろいろと大変だった取材内容を、タローと互いに労った。

 “まったく急に呼び出されて俳優の家って…無茶苦茶だよ”と苦笑いしつつも、会社に帰った僕は再び自分の仕事に戻る。そして定時が過ぎ、バタバタして疲れたし今日はもう帰ろう…とコートを羽織り、ポケットに手を突っ込んだその時。

 指の先に金属の感触が。こんな所に何入れたっけ…? その正体に気付くのに、1秒もかからなかった。そして気付いた瞬間にはもう、背筋というか、もう、セキツイを通してそこから伸びる神経すべてに悪寒が走った。

 

 「タローさん…。岩城さんの鍵持って帰っちゃいました」。デスクに戻って一言。そしてできれば間違いであってほしいと願うソレを、ポケットから取り出した。どっからどう見ても鍵だった。

 そんなあり得ないような現実を突きつけられてしまったら、もうお互いに笑うしかない。気が狂いそうだった。とりあえず「死んできます」と言い残し、再び岩城さんの自宅へ。このときの電車の乗り心地は、今までの人生で最悪だった。

 最寄り駅に着いてからの足取りは、それはそれは重かった。”1,800mlぐらいまでだったら出血しても大丈夫なんだっけ…?”とかよく分からないことを考えながら歩いていたと思う。

 嗚呼、昼と夜でこんなにも町の景色って違うもんなの…?

 

 で、自宅に到着。寿命を1年ほど減らす気合いでチャイムを鳴らす。しかし返事はない…。家の灯りは点いているようだけど…?

 ご自宅の前で30分ほど、計6年ほど寿命を縮ませたあたりでタローに電話で相談し、取材を仲介してくれた方のアドバイスでポストに投函することに。再び駅近に戻って、コンビニで鍵を入れる封筒と便箋を買い、店内のカフェスペースで謝罪状を書いた時間は忘れられない。

 

 それ以来特に音沙汰ないので、多分大丈夫なのだろう。年を越して、勝手に時効となった気分になっている。

 

 どんなに気を張っていても、緊張していても、いやむしろ緊張しているときこそ、思ってもみないミスをしてしまうもの。それを思い知った事件でした。

 今年はポケットに気を付けます。

キムロウ

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キムロウ

トラスフレームを見たらとりあえず「バンディット!」とか言っとく、バイクの技術・知識ともにテキトーなテキトー人間。“修行”と聞くと不思議とやる気が出てくるジャンルに属しており、現在編集部にてバイク修行中。暇があると隣駅まで散歩したり、道着を着てバイクに乗ったりして、ほっとくとテキトーな場所で寝たりテキトーに刀を振り回し始める21歳。ネクタイと、JUJUと中島みゆき、あと“黒”が好き。べつに心は黒くない。

コメント 2件

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    by ねこ2018/1/5 18:15

    あはは!声を出して笑ってしまいました。
    あけましておめでとうございます。ねこです。

    分かります!
    やってしまった…!というときの何とも言えない焦燥感。
    燃えるような凍えるようなあの感覚を、私は長らく味わっていないような気がします。
    でも、こんなに面白くネタに出来るなら失敗も悪くないですね♪
    私も今年は失敗するほど、仕事に情熱を傾けるぞ!と思いました。

    今年もご活躍に期待しています!
    インフルエンザにお気をつけて。

  • by キムロウ2018/1/5 19:01

    ありがとうございます、笑っていただければ本望です。
    失敗はしたくないですが、失敗してしまったらしてしまったで
    笑い話に変化させることが、最良のクライシスマネジメントなんですかね…。

    あの焦燥感を長らく味わっていないとは、もったいない…あ、いえいえ、うらやましいことです。
    今年は失敗しないよう、ほどほどな情熱でがんばります!

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