SUZUKI GSX-R1000R ABS

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8年ぶりにモデルチェンジしたGSX-R1000

実に8年ぶりのフルモデルチェンジ、6代目となるGSX-R1000シリーズの登場である。しかもGSX-Rの国内発売は実に19年ぶり。海外ではスタンダードにあたるGSX-R1000も発売されているが、国内仕様として発売されるのは“R”がもうひとつ付いた上級仕様だけである。

 

両者の違いは、“R”の方には前後のサスペンションにショーワ製バランスフリータイプを採用し、上下両方向で作動するオートシフターなどが装備されること。ちなみに国内仕様としての欧州仕様からの変更点は、ETC車載器が標準装備されていることと、180㎞/hのスピードリミッターが装着されているだけ。つまり欧州仕様と同じ、怒濤の197㎰(1万3200回転)、11・9kgf-m(1万800回転)という恐ろしいスペックはそのまま味わえるのだ。

 

最高出力197㎰。ホンダのCBR1000RRが192㎰で、カワサキのニンジャZX-10RRとヤマハのYZF-R1が200㎰。数値が高すぎて実感がわかないが、なにやらスゴすぎることだけはわかる。しかも、こんなモンスターマシンに初乗りするのがサーキットになるとは…。

 

そう、今回の試乗ステージは千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイ。先日行なわれたホンダ・CBR1000RRサーキット試乗会(TS183号掲載)と同じ場所。なんせ19年ぶりの国内モデルである。スズキとしても国内プロモーションにも力が入らないワケがない。というわけで場所も同じならノーマルタイヤに加えて、ブリヂストン製レーシングタイヤのバトラックス・レーシング・R10での走行枠を用意するというのも、もちろんライバルをバリバリに意識してのことだろう。

 

すごいのはCBR1000RRはスリックタイヤだけでの試乗だったのに対し、こちらはノーマルタイヤからハイグリップタイヤに現場で履き替えるというこった趣向。当然ハイグリップタイヤの方が印象はよくなるハズだし、各雑誌の誌面展開もノーマルとハイグリップタイヤの比較記事ばかりになるハズだが、それだけノーマルの状態に自信があるということなのだろう。

 

…なんてエラそうなことを書いたが内心ビクビク。両方試して「いや、あの、スゲーよかった!」という浮わついた感想しか言えなかったらどうしよう?

 

ブロードパワーシステムははたして体感できるのか?

さて先に試すのは当然ノーマル状態。つまり、ブリヂストン・バトラックスレーシングストリート・RS10で走り出す。空気圧はコールド状態でフロントが210kPa/リヤが240kPaの空気圧とのアナウンスがあった。

 

真っ先に知りたいことは、SR-VVTをはじめとするブロードパワーシステムというMotoGP由来の技術について。10年間、GPライダーたちはSR-VVTの存在に気付かなかったらしいから、僕が気付くワケはないのだが、やっぱり自分で確かめてみたいというのがライダーの性。当然、選ぶモードは一番アグレッシブなAモードをチョイスだ。

 

どうだったかって? いやはや、1万回転以上で起こるというカムタイミングの切り替わりも、パワーの出方の変化もまったくもってわかりません(言っちゃった!)。ただ唯一体感できたのは、きちんと低速トルクもあれば、高回転域もパワーのある扱いやすいエンジンだということ。出力特性もおかしなトルクの変動や落ち込みもない。よって僕のような一般ライダーが少々アクセルワークやブレーキで失敗してもリカバリーしやすいのがいい。

 

トラクションコントロールに関しては走るほどに信用できる。まずは10段階のうちの5でスタート。直線で介入具合を確かめたのち、早々に3まで介入度を落とす。徐々にコーナーでもアクセルを開けていくと、確かに「ヌッ」と横方向に後輪がよれる感触はあるのだが、キチンとコントロールされているのがわかるのでそれほどイヤじゃない。むしろ安心してアクセルを開けていけるのだ。トラコンを2まで落とそうかと思ったところで最初のセッションが終了した。

 

マシンを下りてみて気付くのは、なんだか肩と腕に力が入っていたということ。まぁ、トラコン付きのモデルは多かれ少なかれ挙動を探りながら走る。慣れるまでに力が入るのは当たり前なのだが、それにしてもどこか不安なところがあるようで、走っているとついリキむ。ただこれは自分自身に「ノーマルタイヤだぞっ!」と言い聞かせ続けたことも大きいだろう。

 

GSX-R1000Rはやっぱりパワフルな印象だ
ノーマルタイヤのままでもソコソコ攻められるし、それなりにバイクも寝る…のだが腕まわりについ力が入る。そんなグリップの違いをキッチリ感じ取れる車体なのだ

 

お次はモーショントラックブレーキシステムに注目!

続いて2セッション目。トラクションコントロールは1にまで下げることに成功した。3→2→1と介入度を下げていっても極端にバイクの挙動が変わることはなく安心してアクセルを開けていける。そこで注目したのは、モーショントラックブレーキシステム。この装置はIMU(慣性計測センサー)を用いてハードブレーキングによる挙動変化を適切にコントロールする(らしい)のだが、どこまで信用できるのか? 体感できるのか? それにチャレンジ。

 

ホームストレートでがんばって4速180㎞/hでリミッターが効くまで加速。そこから1コーナーの入口に向けて100㎞/h減速するつもりでガッツリとフロントブレーキをにぎってみる。いやぁ、一瞬リヤがリフトしようと浮き上がる(ような)感覚はあるのだが、それ以降の挙動が非常にスムーズ。フロントのタイヤの接地感もなくならないからコーナーへの進入もラクなのだ。また低速コーナーではハングオンしたままフロントブレーキをかけてみたが、こちらの挙動もいたって穏やか。とくに僕のようなサーキットに慣れないライダーの場合は「やべぇ、進入スピードが速すぎた!」なんてことがあってもブレーキをしっかりにぎり込む度胸さえあればマシンは安定したまましっかりと減速していくのだ。さらに電子制御を信用できれば、もっと先の世界が垣間見れそうだが、僕の心はちょっとそこまで強くない(笑)。

 

ヤタガイ ヒロアキさんの投稿 2017年8月10日木曜日

 

197㎰のパワーをしっかり受け止める車体

最後のセッションはいよいよハイグリップタイヤ、ブリヂストン・バトラックス・レーシング・R10でコースイン。空気圧は、タイヤウォーマーでしっかり温めた状態でフロントが240kPa/リヤが200kPaとのこと。

 

トラクションコントロールの設定は一瞬迷うもハナから最弱の1でスタートしたが、それで正解。先導付きの1周目から格段の接地感、安心感に驚かされる。1、2セッションでこわばっていた腕の力がスッと抜けたのがわかる。力が抜ければ体もよく動かせるし、なによりコーナー出口でアクセルが開けやすくなった。場所によってはフロントの接地感が希薄になり、「トンッ」なんて軽い衝撃があるから恐らくフロントが浮いているのだろう。しかし、それだけトラクションをかけてもフレームがよれ始めることもなければ、マクレるような不安もない。これがエンジン搭載位置を変更し、スイングアームを長くした効用なのだろう。そんな状態でも不安なくアクセルを開け続けられることにビックリだ。いやぁ、バイクのおかげでいつの間にやらスゴい世界に足を踏み入れてしまっている気がする。スゴいぞGSX-R!

 

GSX-R1000Rでサーキット走行&インプレッション。場所は袖ヶ浦フォレストレースウェイ

 

GSX-R1000R ABSのディテール紹介!

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電話番号
0120-402-253
URL
https://www1.suzuki.co.jp/motor/

※記事の内容はNo.185(2017年8月24日)発売当時のものになります

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