HONDA BENLY e:series (2020)

2022年1月11日

BENLY e BENLY e: Ⅰ BENLY e: Ⅰプロ BENLY e: Ⅱ BENLY e: Ⅱプロ BENLY e:シリーズ EV HONDA スクーター電動スクーター

アンダー400 No.82掲載車両（2020年5月7日発売）

ホンダは“カーボンフリー社会の実現をリードする”という方針を掲げ、そのために電動二輪車の普及が重要な要素のひとつと考え企業活動を続けている。その結果が2018年に登場したPCXエレクトリック。そして第二弾となるベンリィ：eシリーズのデリバリー開始に先駆け、プレス向け試乗会が開催された。

文：吉田朋／写真：武田大祐

EVの発展に期待が寄せられる、EVスクーターの供給がスタートした

BENLY e:seriesのディテール

近距離を走るのならば十分活用できる性能だ

2019年10月に開催された東京モーターショーで、市販予定モデルとして初公開されたベンリィe：シリーズの展開と価格は12月に発表されていた。2020年4月から発売予定とし、すでに発売が始まっているホンダEVスクーター・PCXエレクトリックと同様、一般ライダーに向けてではなく、法人に発売するという内容。それに先駆けて日本郵政に配備されたが、本格的な発売を前にプレス向けて試乗会が開催されたので、その乗り味などについて紹介しよう。

本誌がメインに乗ったのは原付一種クラスにあたり、積載量など使い勝手を向上させたベンリィe：Ⅰプロだ。ガソリン車と違って約11㎏のリチウムイオンバッテリーを2個搭載しているため、従来のベンリィシリーズよりも車重は重くなっている。ところが取りまわしてみると、想像以上に軽快に取りまわせた。バッテリーの着脱には重さを感じたものの、成人男性であれば苦労するほどのものではないだろう。

またがってセルボタンを押す。当然ガソリンエンジン車と違って排気音はせず、それと同時に振動も感じられないことに気付く。メーターに“READY”のランプが点かなければ“走っていいの？”と戸惑ってしまうほど。気をとり直してアクセルを開ける。原付一種というと、排気量の面もあって出だしがモタつく印象がつきまとうが、それを感じさせずにスルスルと加速していく。街中の宅配業務で多用する30㎞／hまではガソリンエンジン車よりもはやく到達する印象だ。試乗場所は教習所内なので、法定速度を意識せずにアクセルを開けると、50㎞／hまでスムーズに出すことができた。

ブレーキは前後ドラム式だが、街乗りで多用する速度域でなら制動力は十分といったところ。前後連動ブレーキも採用しているので、不意なブレーキ操作でもバランスをくずしにくいのも○だ。教習所内でのS字も車重を感じさせずヒラヒラと走れるので、宅配業務で活躍できるだろうと感じた。なお原付二種クラスにあたるⅡにも乗ったが、やはり原付一種よりも加速がよく、キビキビと走ることができた。

なおナンバーがついているので、会場となった教習所外にも出てみた。自転車の多い地域でかつ道が狭く、それほどスピードが出ないうえ無音なので、前を走る自転車がまったく後ろに注意を払わないので、ガソリンエンジン車以上に注意を払う必要があった。不意に後方確認もせずに、道路を横断する可能性が高いから。

また、後続距離＆充電の面から一般ユーザーが日常使いするのは難しい部分もある。しかし短距離を走る宅配業務であれば、環境性能が高く、性能面も十分といっていいレベルだ。趣味性の乗り物としては、題が多いのも事実だが、今後もホンダは継続してEVの研究を続けていくことだろう。リチウムイオンバッテリーの小型化や低価格化、充電時間が短縮され、航続距離が伸びれば、一般的なバイクにも搭載される日がくるだろう。