HUSQVARNA MOTORCYCLES NORDEN901

HUSQVARNA MOTORCYCLES NORDEN901(2022年モデル)走行

ハスクバーナ・モーターサイクルズ初のアドベンチャーツアラー、ノーデン901が登場。水冷パラレルツインエンジンを搭載したスタイリッシュなマシンの走りを、オフロードとオンロードで乗って検証した。

文:濱矢文夫/写真:関野 温

個性的で美しいアドベンチャーツアラー

HUSQVARNA MOTORCYCLES NORDEN901のスタイリング

見た目だけで終わらないハスクバーナ独自の走り

とにかくスタイルの斬新さが目をひく。オーソドックスな丸いヘッドライトは同社のヴィットピレンやスヴァルトピレンと共通のデザイン。シュラウドからシートまでの間、上部カウル部分は継ぎ目がなく一体で、面はなだらかなカーブを描き美しい。つや消しのダークグレーが光を柔らかく反射して有機的でさえある。スクリーンを含め、アウトラインはアドベンチャーツアラーらしいが、細部はこれまでにあったバイクのどれにも似ていない。四輪でいえばインパネ部分に高級感があるピアノブラックを使っているバイクなんて、これまで存在しただろうか? 等高線を模したグラフィックが、道なき道を目ざす雰囲気を演出しながら、最先端をいくモードのようだ。

 

最初に乗ったのは特設オフロードコース。いきなり汚すのがもったいない気がしたが、実力を知るためにはそうもいっていられない。同ブランドとして初めてとなるアドベンチャーツアラーは、KTM・890アドベンチャーと基本を共有している。ライドバイワイヤでコントロールする水冷4ストロークDOHC並列2気筒889㏄エンジンは、約105㎰を8000rpmで発生するなど、スペックも含めて890アドベンチャーと同じ。そのエンジンをストレスメンバーにしたクロモリ鋼のトレリスフレームも同様だ。890アドベンチャーには、よりオフロード仕様になった“R”が存在して、通常版890アドベンチャーは前後200㎜サスペンションストロークで、Rは前後240㎜。ノーデン901はフロントが220㎜でリヤが215㎜とその中間。それはシート高も。手軽に2段階の高さを選択可能。低い方で890アドベンチャーは830㎜、Rは880㎜。ノーデン901は854㎜。

 

ここからうかがえるのは、ノーデン901はRほどオフロード性能にこだわらず、デュアルパーパスとして幅広く使いやすいようにしたこと。3台とも同じ前21・後ろ18インチのホイール。一見フロントヘビーのようで、実は前後の重量バランスが絶妙。上りで路面に合わせしなやかにリヤタイヤを追従させ、前後の体重移動をあまり意識しなくてもスロットルワークでトラクションさせながら進んでくれる。純正タイヤはオフロード向けのブロックパターンながら、オンロードも考慮したピレリのスコーピオンラリーSTRだ。

 

レイダウンしているとはいえ、リンクレスなのに、ショックだけで初期は柔らかく、奥で踏んばるプログレッシブな動きを実現しているのには感服する。逆バンク気味で曲がりながら下るシーンでも、前タイヤに荷重がかかりすぎることなく、タイヤが簡単に横へ逃げていきにくい。リヤサスペンションを縮ませながら前後のタイヤグリップを把握してスムーズな走行。Rのようにシートが高すぎないから、身長170㎝の私でも、いざとなったら足を出して支えられる安心感を持ち続けながら走り回れた。

オンとオフのバランスがいい

ストリート・レイン・オフロードとあるライドモードは当然オフロード一択。低中回転域を豊かにした感じで、ストリートよりスロットル開け閉めでの荷重コントロールがしやすくなる。ABSもオフロードを選択。リヤだけABSが効かず、タイトなところでブレーキターンや、下りで滑る/滑らないの絶妙なグリップコントロールができたりするのはダート好きには大切。このへんはさすがオフロードを知り尽くしているブランドだけある。MTC(モーターサイクルトラクションコントロール)は、オフロードでも大きく邪魔をせず効果的に働いてくれた。競技のようにジャンプや大きなギャップを超えるガチなオフロードまではいかないが、山の奥地へずんずん入り込んで行く気にさせる性能だ。

 

その後、走行フィールドを舗装路に移してもオフロードで感じた前後荷重のバランスよさは健在。あまり減速加速のメリハリをつけずにクルージングで、KTMよりしっかり座れるシートに腰を下ろしたまま素直にリーンして倒れ込むようなこともなく、もどかしさもなく自然体で曲がっていけた。

 

ライドモードをストリートにするとビュン!と高回転に向けて加速が盛り上がりながら続く。パワフルすぎず、物足りなくなく、トルクをレブリミット手前までフルに使いきれるおもしろさ。ストリートからレインにモード変更するとロースロットルになったようで、加速のツキはかなり穏やか。飛ばさないでリラックスしながら流して走るなら、レインモードという選択は右手の動きに合わせた反応がほどよく小さくなるからありだ。

 

ワインディングを飛ばしてみてもなかなかの走り。効きもタッチもすばらしいフロントブレーキを強くかけながら、フロントフォークを縮ませてコーナーへ飛び込む。フロントブレーキをリリースしていくと素直に旋回。この加減が気持ちいい。KTM版より燃料タンク容量が1ℓ少なく、外装に合わせて形状も変更し、カウルの影響も含めて重心位置は微妙に変わっているだろう。それもふまえてノーズの向きを変えやすくセッティングしているとみた。コーナリング中に路面にこぶし大の穴が空いているところを通過するのも怖くない。タイヤはオンロードでも見た目以上の扱いやすさとグリップがある。けれど、ハイグリップタイヤじゃないので、旋回速度を上げすぎると心もとなくなる。逆にそこまで攻め込めるということだ。

 

ノーデン901は万能性を高めたデュアルパーパスツーリングモデルとしてとてもいいさじ加減だ。実に日本人と日本の道に合った使い方に適している。ルックスの仕上げも含めて大人の落ち着き感がある。アドベンチャーツアラーのどまん中だ。

次ページ:HUSQVARNA MOTORCYCLES NORDEN901のディテールをチェック!

CONTACT

問い合わせ先
ハスクバーナモーターサイクルズジャパン
電話番号
03-6380-7020
URL
https://www.husqvarna-motorcycles.com/jp/

※記事の内容はNo.240(2022年3月24日)発売当時のものになります

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