KAWASAKI VERSYS-X 250TOURER

カワサキ VERSYS-X 250 TOURER 走行

アンダー400 No.80掲載車両(2020年1月6日発売)

文:谷田貝洋暁/写真:関野 温

ツーリングバイクとしてひとつの頂点を目指す!

カワサキ VERSYS-X 250 TOURER 7:3イメージ

専用チューニングがほどこされているとはいえ、ロードスポーツモデルのニンジャ250と同じ系列にある水冷のパラレルツインエンジンを搭載し、アシストスリッパークラッチもそのまま装備。そんなよく回るエンジン(なんとレッドゾーンは1万2,000回転!)に、高剛性なフレームをセット。それでいて足まわりは19インチ化され、ストロークはフロント130㎜、リヤ148㎜と長めに確保されている。そのため、ちょっと見た目の印象が腰高なスタイリング。アドベンチャーツアラーが市民権を得てきた現在にあっても、ちょっと一風変わったスタンスにあるのがヴェルシスX250ツアラーだ。2017年の登場当時は“プラスチック製の専用パニアケース付き”と“なし”が選べたが、現在はパニアケース付きのツアラーのみが販売されている。

キャラが多様なU4ADVヴェルシスはその最右翼!

おもしろいのは、大型とU4界では同じアドベンチャーツアラーという一括りのジャンルでも、ちょっと違った進化形態を見せているところ。重い大型アドベンチャーツアラーは、どうしてもBMWのGSシリーズを頂点とする“世界一周マシン”という呪縛にとらわれているような気がしてならない。近年はハイパワー化が進むエンジンを電子制御でなんとかあやし“重たいながらにオフロード性能を高める”という矛盾を、各種技術をもって高次元でバランスさせている…。そんな雰囲気だ。

 

それに対し、U4アドベンチャーツアラーはそんな“世界一周”の呪縛にとらわれることなく、実に多様なキャラクターがそろっている。400Xのようなロードバイクに近い重量級モデルもあれば、CRF250ラリーのようなオフ車に近いキャラクターもいる。またBMWは後傾エンジンという突飛な機構を採用すれば、スズキのVストローム250は目立ったことを行なわず、その車体の素性のよさで勝負し、実際に安定した票を稼いでいる。自由な発想というか、好き勝手というか“こんなモデルがあってもいいんじゃない?”という、いい意味で力の抜けたモデルが多い印象だ。

 

そして今回紹介するヴェルシスX250ツアラー。こいつもかなり不思議ヤツである。正直、こいつが登場したとき、姿形だけではどんな乗り味なのかまったく想像できなかった。兄貴分で直4エンジンを搭載したヴェルシス1000もそうだが、“かなりナナメ上を行ったなぁ。さすがは男カワサキだぜ!”なんて思ったもんだ。

 

走ってみても、最初はそのキャラクターにとまどった。“なんでアドベンチャーツアラーなのに、このエンジンはこんなにスポーティでよく回るんだろう?”なんて悩んだ記憶もある。しかしワインディングに差しかかったときに“どうせここまで回るエンジンなんだからいっそ試してやれ!?”と半ばヤケクソ気味でハングオン! だが、これですべての謎が解けたのだ。

 

なんとこのヴェルシス、ヒザスリできうるような高いロードスポーツ性能が与えられているのである。コーナーの直前でフロントブレーキでサスを縮ませ、クリッピングポイントにねらいいを定めながら腰を落とす。出口が見えたらすかさずアクセルをオン…。もはやロードスポーツバイクの操作である。いや、公道で走った印象はそれ以上だと感じた。安全が確保されるサーキットとは違い、公道ではコーナーの先で何が起こるかわからない。そんななかでマージンを取りながら走るものだ。ヴェルシスのアップライトなポジションは前方が大きく見渡せて、路面変化への反応がすこぶるしやすく、ものすごく思い切った走りができる。条件とライダーによっては“ニンジャ250よりも速く走らせられるんじゃないだろうか?”と思うほど。少なくとも僕はそうだ。

 

アドベンチャーツアラーというと、高速巡航性能と道を選ばない悪路走破性だけに目がいきがちだが、高速巡航性能とワインディング性能に特化したっていいじゃないか! ヴェルシスにそう教えられたってワケなのだ。実際、別の機会にこのヴェルシスシリーズの立ち上げに関わった方にお話を聞く機会を得たが、ヴェルシスX250に感じた高いロードスポーツ性能があながち間違いではないことを知った。というのも、ヴェルシスという車名の由来は“ヴェルテックス=頂点・最高点”という言葉と、機構という意味の“システム”をかけ合わせた造語。しかも、そのねらいである“頂点のシステム”とは、ロードスポーツ系の元気なエンジンとアップライトなポジションの組み合わせこそ、ツーリングバイクにおいて頂点である。そんな意味を込めたというのだ。

 

アドベンチャーツアラーのツーリング性能は欲しいけど、やっぱりワインディングに入ったら“消化試合ではなく、きちんと路面のグリップを感じながらスポーティに駆け抜けたいんだ!”と考えるライダーにはこのヴェルシスX250こそピッタリというわけだ。ただ、ここまでロードスポーツ性能が高いと、ダートなどの悪路走破性はどうなのか? その問いには“腕しだい”と答えておこう。

 

正直に話すなら、ロードスポーツモデルよりははるかにダートを走りやすいし、大抵の路面なら誰でも通過はできるだろう。ただし、ダートそのものを楽しめるかと問われれば“走れないことはない”という曖昧な答えがもっとも適切な言葉のような気がする。まぁ、ダートで小砂利を蹴散らしながら、高回転エンジンをぶん回すのは非常に楽しいことだし、エキサイティングなのだが、そんなことをしたいライダーはそういないハズだからね。

 

VERSYS-X 250 TOURERのディテール

GOOD POINT
カワサキ VERSYS-X 250 TOURER クラッチ
最近のアシストスリッパークラッチ装備車の利点として、クラッチ操作がものすごく軽くできるということが挙げられる。クラッチレバーを握りすぎ、疲れて手首が痛いまま続けるツーリングは絶対に楽しくない! 体に負担を極力かかららないということは、旅の相棒としてとても大切なことなのだ

 

VERSYS-X 250 TOURERのソフト面をチェック

足つき性
カワサキ VERSYS-X 250 TOURER 足つき
シート高は815㎜と、ロードモデルとしては高め。しかしアドベンチャーツアラーとしては低めという印象だ。実際にまたがってみると、車体がしっかり絞られているので足がおろしやすく、カカトがほんの少しだけ浮く程度だ
乗車姿勢
カワサキ VERSYS-X 250 TOURER 乗車姿勢
身長172㎝/体重75㎏
ハンドルバーはやや広めだが、背筋が伸びるアップライトなポジションは長時間走っても疲れないだろう。スタンディングしても邪魔にならない高さのスクリーンも、ウインドプロテクションと操作性のバランスがちょうどいい感じだ
取りまわし
カワサキ VERSYS-X 250 TOURER 取りまわし
ヴェルシスX250は車体重量が183㎏あるため、オフロードバイクのように軽々と、とはいかない。だが、細身の19インチタイヤのおかげだろう。タイヤの太いロードスポーツモデルよりは断然車体が軽く感じ、押し引きしやすい
Uターン
カワサキ VERSYS-X 250 TOURER Uターン
ハンドル切れ角は左右40度確保されており、ちょっとやそっと小回りをきかせようと思ったところで使い切ることがない。19インチタイヤは大きいが、ハンドル幅もあって力を入れやすいので、小刻みに切り返すUターンもしやすい

 

VERSYS-X 250 TOURERでタンデムランチェック

カワサキ VERSYS-X 250 TOURER タンデム走行
ライダー:谷田貝

車体が軽く、重心も高めなので、めちゃくちゃタンデムがしやすいというわけではないが、タンデムするのに不足はない。日帰りくらいならそのままでも楽しく走れそうだが、長距離ならちょっとリヤショックのプリロード調整をして初期荷重を増やしたいところ

タンデマー:濱矢

まずはパニアケースがあるので、乗り降りがしにくいのが気になる。そしてやや足元が窮屈。座面は250㏄としては面積がある方なので、写真のように男二人でも適切な距離をたもて快適だ。サイドに長めのグラブバーがあるから、体も安定させられる

ベテランオールラウンダー濱矢が斬る!

よくできたツーリングマシン

カワサキ VERSYS-X 250 TOURER 走行

ヴェルシスX250ツアラーはツーリングモデルとしての割り切り方がいい。アドベンチャーというとデュアルパーパス性能となるが、アップライトなポジションでフラット林道くらいはこなせるが、そこをあまり追求せず、多くの人がメインで使う舗装路での走りに軸足を置いた感じ。スポーツライディングでも適切なブレーキの効きと素直なハンドリングで操る楽しさがある。元気よく走ろうと思うと高回転域まで入れないといけないが、流すようなクルージングでは滑るように走り、不足もない。スクリーンが風をいなすので高速移動での快適性も十分。ツーリングマシンとしてよくできている。

数々のバイクを乗ってきたTOMOが斬る!

気軽に旅へと出たくなる!

カワサキ VERSYS-X 250 TOURER 走行

大柄で見た目は250㏄とは思えないほど。それがまたがってみると、ライディングポジションはゆとりがあるのに、軽くてコンパクトに感じるから不思議。エンジンのフィーリングがやさしく、街中でもワインディングでも気軽にそつなく走れる手軽さが魅力。そしてスクリーンの風防効果が高く、フロントタイヤは19インチなので悪路でも振られにくい高い走破性がいい。高速道路の巡航や長時間走行も楽ちん。サイドケースがちょっと安っぽく感じるのが気になるところ。しかしバイクに乗る“わざわざ感”がないので、このヴェルシスX250ツアラーと一緒に目的地を決めずフラッと旅に出るのもよさそうだ。

VERSYS-X 250TOURERのスペック

全長×全幅×全高
2,170×940×1,390(㎜)
軸間距離
1,450㎜
シート高
815㎜
車両重量
183㎏
エンジン型式・排気量
水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒・248㎤
最高出力
24kW(33㎰)/11,500rpm
最大トルク
21N・m(2.1kgf・m)/10,000rpm
燃料タンク容量
17ℓ
タイヤサイズ
F=100/90-19・R=130/80-17
価格
70万4,000~72万500円(税込)

VERSYS-X 250TOURER 製品ページ

CONTACT

問い合わせ先
カワサキモータース ジャパンお客様相談室
電話番号
0120-400819
URL
https://www.kawasaki-motors.com/mc/

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