バイク駐車取り締まり、手心が加わるわけではない ― 警察庁交通局の通達は、こう読む!―

一部の報道で、「自動二輪車などに配意した駐車規制の見直しの推進」という一文から、バイクの駐禁キップが切られなくなるというような情報が広まったが、実はそうじゃなかったのだ

警察庁も実感している「バイク駐車場足りない」

行政が出す通達には、その意味を読み解く“作法”がある。またがってスロットルを開ければ、誰でもバイクを操れるわけではないように、背景に何があるかを知らないと、警察庁が意図していることを誤解する可能性がある。

 

「自動二輪車などに係る駐車環境の整備の推進について」という通達は、今年4月に警察庁交通指導課と交通規制課が都道府県警察の本部長あてに出した。バイク取り締まりの留意点を示した内容だ。通達の前文では止める場所がない状況を認める記載がある。

 

《駐車禁止規制の緩和も進められてきた所ではあるが、自動二輪車の保有台数当たりの駐車場台数を見ると、依然として(中略)駐車場が不足している状況にある》

 

留意点は3点あり、その1つに「自動二輪車などに配意した駐車規制の見直しの推進」という内容が盛り込まれている。バイクユーザーの一部からは取り締まりが緩むのではないかという期待も盛り上がった。

 

しかし、世の中には駐車場難民であるバイクユーザーに理解を示す人ばかりではない。警察庁が、バイク取り締まりに手心を加える通達をするのであれば、それはそれで問題だ。では、この通達の意味するところはいったいなんなのか?

 

警察庁がバイク駐車場の整備推進を求める通達を出すのは、これが初めてではない。8年前にも出ている。警察庁交通規制課の大野敬理事官は「その通達の期限が切れるので再度、通達を出して推進を求めた」という。実は、ここが一番のポイントだ。

 

車体は四輪車より小さい、を考えて

「自動二輪車などの駐車場は増えているが、登録台数当たりの収容台数はまだ少なく、大都市では不足している。このまま終わっていいかというと(整備の推進を)続けるべきだろうと考えた」と、大野氏は言う。

 

2010年の通達でポイントだったバイク駐車場推進の方針も今回は変更した。

 

「平成22年の通達では、自動二輪車の駐車場を新しく作ることを念頭に考えていた。ただ、四輪車の駐車場に十分な台数がある現在、既存の駐車場に二輪車料金を設定して受け入れを進めるほうが、現実的に整備を進めやすい」

 

駐車場は四輪車が使うもので、バイクは専用駐車場以外には止められない。根強い先入観を、警察庁が先行して通達で変えていこうとしているというワケだ。県警本部から都道府県へ働きかけも行なうようにという革新的な考え方なのだ。

 

さらに、駐車禁止の規制を見直すことで、駐車場不足に対応すべしという指示も打ち出した。

 

《二輪車の車体は四輪車と比べて小さいことを踏まえつつ、駐車禁止規制の対象から自動二輪車などを除外する見直しが可能かどうかを検討すること》

 

この意味についても、こう話す。

 

「通達の趣旨は、二輪車が小さく、収容台数も不足していること。例えば、車道の外側線の外側に十分なスペースがある場合、四輪車は止められなくても、二輪車が止められるスペースがある場合。二輪車の大きさが違うので、二輪車全体を除外できるかはわからないが、場所ごとに応じた見直しはできるのではないか」

 

駐車禁止区間に「二輪車を除く」という条件が付く道路も、今よりは多くなるはずだ。警察庁は通達を出すだけでなく、1年後をめどに取り組み結果を報告するように求めている。取り締まりだけが平等という理不尽な現状は、少しづつだが変わりつつある。

 

歩道と車道の両方を使って自転車とバイクを止められるように作った路上駐車場。バイク駐車スペースは十分な余裕があるのに、なぜか原付に限る。駐車場なのに、そもそも排気量で区別する必要があるのだろうか(名古屋市中区)

 

高層ビルにはトラックが荷捌きができる駐車スペースもある。警察庁の通達は、こうしたゆとりがある駐車場に二輪車を入れるよう働きかけるというものだ。ライダーに駐車モラルが必要なら、こうした二輪車お断りの駐車場にも、二輪車を受け入れる企業責任が追及されるべきだ。(新宿区西新宿)
中島みなみ

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中島みなみ

63年、愛知県出身。記者。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。世の中に起きる割り切れない出来事と、世の中を動かそうとする主張を伺い記事に反映させていきたいと思っています。

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