滋賀でイベントがあり、当初、帰りは名古屋まで東海道本線で戻り、そこから深夜バスを利用する予定を立てていた。ところが近江長岡駅の閑散としたホームに立ったとたん、ふとボクにとっての旅の原点ともいえる、中学生のときに友人と一緒に行った電車旅行の記憶がよみがえってきた。それまで移動の手段でしかなかった電車は、そのとき、過程を楽しむ乗り物へと変わった。車窓の移り変わる風景は、いろいろな情報と感情を与えてくれ、意味もなくワクワクしたものである。乗り換えで降り立ったホームで受けた五感への刺激は、とくに何がというわけでもないのに楽しかった。その記憶にやられ、急きょ、東京まで東海道本線のみで帰ることにした。
時は変われど、車窓を通して目に入ってくる風景はやはり楽しめる。ここ数年忘れていた感覚である。乗り換えでできた時間を利用して、ちょいと缶ビールをひっかけられるのは、オジサンになった+αの楽しみ。端から見れば「10時間近く電車に揺られるなんて、よくやるね」と言われるかもしれないけれど、それはそれで、ゼイタクな時間の使い方だとボクは思った。あらためて、時間に余裕があれば、鈍行列車を利用するのも悪くないなと感じたほどである。
それにしても今回利用した東海道本線の車内は寒かった。とくに浜松から静岡で利用した区間なんか、長ソデを着ていないと震えてしまうほど。節電が叫ばれ、ビルの冷房温度も高めに設定する動きが出ているなかで、ちょっとした“驚き”であった。