NinjaH2試乗、視界が狭まる加速感!

ええ。乗っちまいましたよ、久々の過給器・スーパーチャージャー搭載のモンスターマシン、カワサキ・ニンジャH2! 場所は愛知県のサーキット、スパ西浦モーターパークだ。編集部のある港区からは約300km、まさかの午前4時出発だってコイツに乗れるとあればホイホイ行かせていただきます。とはいえ相手はなんせ税込み270万円のバイクだし、今回はカワサキモータースジャパンさんによるメディア向けの試乗会だったのだけど、試乗用のマシンは1台のみ。つまり、すべての媒体がこの1台で撮影を行なう。…もしここでガシャンとやってしまったら、次の雑誌社はガシャンとなったままで撮影しなきゃいけなくなる。…うむむ。絶対に転けられない、キズ付けられないという、プレッシャーがいつも以上に現場に漂っている。さてさて、そんなほどよい(?)緊張感の中始まりましたニンジャH2試乗。心なしか文章がうわずってますが、そりゃまぁ相手がH2なのだから仕方ないってもんだ。

カワサキ・ニンジャH2はコーナーもしなやかに曲がるし、スパースポーツっぽい硬さが車体になくて意外にジェントルな乗り味。…ただしアクセルを開けなければね(笑)

さて、さっそく走り出してみよう。とはいってもこのサーキットは僕にとって初めての場所。まずはニンジャH2のキャラクターをみようと駐車場と場外の一般道で慣らし運転。スーパーチャージャーがどんだけ乗りにくいのかと及び腰だったが、乗ってみれば意外に…というかとても乗りやすい。低速でのアクセルのツキも悪くないし、変にピックアップがよくてギクシャクすることもない。調子にのって駐車場で、Uターンと8の字旋回してたら、ちょっとぐらっとなって胃袋の奥がキュッとなる。危ない、危ない。でも、それをやろうと思うくらいの扱いやすさがあるってことだ。「ほどほどにしとけよ」と自分を制し、一般公道に出てみる。海沿いのほどよいコーナーが続く田舎道を流した感じは、現在のスーパースポーツマシンというよりは、なんだか1100だったころのZZRシリーズを思い出した。トラスフレームのおかげだろう。車体にスーパースポーツのような変な硬さや塊感がなく、コーナリングで適度な落ち着きがあって十分ツーリングにも使えそうなキャラクターである。

 

…でもね、これはあくまで車体の印象だ。アクセルをあけると、キュイィィイイン…!と戦闘機のようなサウンドがつんざく。来ました来ました、スーパーチャージャー。尻上がりの高揚感をともなう加速感はまぎれもなくスーパーチャージャーによるものだ。ただ、一般道でこのスーパーチャージャーサウンドを楽しむのは、そうとう免許の点数に余裕がある人に限られそうだ(笑)。アクセルを開けるたびに「もっと回してくれ!」とエンジンが強烈に主張してくる。免許の点数が気になる僕は「こりゃまずい」と、7、8km走ってそそくさとサーキットへとんぼ返り。革ツナギを持ってきたが着替えずにコースインすることにした。だってその方がより一般公道に近い試乗体験が得られるじゃない? というのは建て前で、完全武装で変なスイッチが入って、気張ってすってん、スリップダウンッ! なんて状況が怖いのである(笑)。

前傾姿勢は少々きついけど、足つきはベッタリ。それよりチャックの金具が塗装面を傷付けないか不安でしょうがない(笑)

 

ということでサーキットレベルのインプレは正直僕の手に余る。それは他のプロライダーのインプレを他誌で見てもらった方がいいと思うので、ここでは一般ライダー目線でストレートに限った話をさせてもらおう。なんせココには警察官も対向車もいない。気兼ねなくアクセルをぶち開けられるのだから。さてさてやってきましたホームストレート。長さは420mとちょっと短かめだが3速でアクセルフルオープン。戦闘機のようなサウンドは、公道とは桁違いの早さで周波数上げていく。

 

「うぉぉおおお!」と思わず声をあげたくなるような加速感だ。それこそ異次元の加速にアドレナリンが吹き出し、視界がクククッと針のように狭く収束していくのを感じる。思えば僕の初めてのサーキット走行は富士スピードウェイ。調子に乗ってホームストレート260km近く出して減速できずコースアウトしたときもココまで視界は狭くならなかった。…まぁ、ココは420mと短かめのストレートだし、ギヤも3速だから比較にはならないのだが、ワープホールへの突入よろしく視界が狭くなる感覚は、カワサキのZX-12Rか海外仕様のハヤブサで最高速アタックをしたとき以来だ。

 

…とんでもない加速力だ! いったいどれほどスピードが出てるのか?と、ストレートの半分すぎたぐらい、まだ心の余裕があるうちにメーターを見れば意外や意外。180km/hぐらいしか出ていない。180km/hでこの加速感! いったいどういうことだ? 周回を重ねながら考える。落ち着いて考えられるようになってきたのは4週目ぐらいだろうか。なるほどこのスーパーチャージャーは加速フィーリングが異質なのだ。尻上がりの曲線を描きながら増していく加速感といえばいいのか。アクセル開度に対してライダーの頭で予測を上回る加速をマシンがするからアドレナリンがいつもより吹き出すのである。2ストマシンに乗ったことがあるなら、パワーバンドに入ったあの瞬間の加速増大感が延々と滑らかに続くといえばわかりやすいだろうか? しかもスゴいのは「こんなの乗れないよ!」というようなモンスターマシンではなく、僕のような一般ライダーにもその高揚感がしっかり味わえるようにセッティングされているのがすごい。だからこそもっとアクセルを開けたくなるのだ。過給器系のマシンに乗るのは僕はこれが初めてのことだが「これが現代のスーパーチャージャーなのか」と妙に納得した瞬間だった。カワサキ・ニンジャH2、こいつはエキサイティングで、じつにカワサキらしいパッションにあふれたマシンだ。いったい6速でアクセルフルオープンしたらどんな世界が見られることだろう?

脳みそがおいて行かれる…。そんな表現を2スト時代に見かけたが、まさにそんな雰囲気である
やたぐわぁ

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やたぐわぁ

本名/谷田貝 洋暁。「なるようになるさ」と万事、右から左へと受け流し、悠々自適、お気楽な人生を願うも、世の中はそう甘くない。実際は来る者は拒めず、去る者は追えずの消極的野心家。何事にも楽しみを見いだせるのがウリ(長所なのか? コレ)だが、そのわりに慌てていることが多い。自分自身が怒ることに一番嫌悪感を感じ、人生の大半を笑って過ごすことに成功している、迷える本誌編集長の44歳。

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