ガソリンがなくなった

愛車のジェベル200は燃料タンクが大きくて燃費がいい。そのためロングツーリングでも林道走行でもガス欠の心配が少なく、大変気に入っている。

 

ところがそんなジェベルも一度だけガス欠になったことがある。

 

知っている人も多いと思うけれど北海道にはホクレンSSというガソリンスタンドがあり、ツーリングシーズンになるとライダー向けのフラッグ(旗)の配布を行なっているのだ(給油をするともらえた。現在は有料)。

 

このフラッグをバイクの後ろの荷物に固定してなびかせてやると素晴らしく旅感がアップし、30%くらい愛車がカッコよくなる。さらに道北・道央・道東・道南と4つのエリアごとにフラッグのカラーリングとデザインが違っており、この4色のフラッグを装着することで他のライダーから「あいつは北海道を一周したんだな」と羨望の眼差しで見られる(たぶん)ため、ボクはなんとしてもこの4つをそろえたかった。そしてその状態で帰りのフェリーに乗り込むこと。これを北海道ツーリングの最終目的としていた。

 

最初の3つの収集はかなり順調。アッサリ集めてしまったこともあって「4つめはツーリング最終日に、フェリー乗り場に向かう途中でゲットすればいいか」とワザと最後の1つを先延ばしにしていていた。そして最終日。15時ころに苫小牧のフェリー乗り場に向かおうとしたが、ジェベルのタンクはまだ余裕があったため「もう少し先で給油しよう」と1時間ほど走った。そして見つけたホクレンSS。しかし“本日は終了しました”の看板。え? まだ16時なのに…ウソだろ!?と思いつつジェベルを走らせると、ことごとくガソリンスタンドが閉まっている。ただでさえガソリンスタンドの少ない北海道なのにこの状況はマズいと思い始めた。

 

ジェベルの燃費と残り燃料から計算すると、走れる距離は100km。フェリー乗り場までは120km。20km足りない。

 

結局フラッグはあきらめ、ホクレンSS以外のガソリンスタンドも探したがすでに時間は遅く、すべて閉店してしまっていた。とにかく燃費を稼ぎ出さないといけない。下り坂ではエンジンを切り、超前傾姿勢で空気抵抗を減らしながら115kmくらい走った。するとボクが乗るであろうフェリーの姿が見えた! 「やったぞ」と思った瞬間にエンジンが力尽た。

 

幸いまだ時間はあったので大量の荷物と3本のフラッグを積んだジェベルをひたすら押してフェリー乗り場まで向かうことに。「何日間も重い荷物と人間を載せて走ってくれたバイクなんだから、最後くらいはラクさせてやるか」などと思っていたけれど、フェリー乗り場に着いたころには体から蒸気が見えるくらい汗をかいていた。エンジンの力ってすごいんだなと感心したものだ。

 

結局ガソリンはどうしたかというと、ツーリングの途中で出会ったライダーと偶然フェリー内で再開し「ガス欠しちゃって…」なんて話をしていたところ、それを聞いていた別のライダーのオジサンに「俺ガソリン持ってるよ」と声をかけられ、ガソリンを分けてもらえたのだ。ジェベルに給油した後、何度もお礼を言ってお金を渡そうとしてもオジサンは受け取らず。そして最後に「同じように困っている人がいたら、今度はキミが助けてあげなさい」と言い残して去っていった。

 

先日、年末の大掃除でキャンプ道具の整理をしていたら3本のホクレンフラッグが出てきて、ガソリンがなくなって右往左往した昔話を思い出した。それ以来「いつかはあのオジサンみたいに誰かを助けられるライダーになりたい」と思い、ロングツーリングでは予備ガソリンを持ち歩くようにしている。まだ他人の役に立ったことはないんだけどね。

サブロー

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サブロー

ほめられて伸びるタイプを主張するクセに、ほめられることをやらない36歳。出身地である徳島県の一級河川・吉野川の別名“四国三郎”から、このニックネームに命名された。映画やマンガにすぐ影響される悪癖があり『ベストキッド』を観て空手を始めたり、『バリバリ伝説』を読んでCB400SF(当時は大型二輪免許を持っておらずCB750Fに乗れなかった)を買うなどの単純明快な行動が目立つ。

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